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映像制作を発注する企業担当者のための言葉の解説です。
実装
あるシステム(ハードウェア・ソフトウェア)に、特定の機能を実施する部品(ハードウェア・ソフトウェア)を装備することですが、アニメーション制作においても作画した原画を、作成したPCプログラムによって実際にアニメートすることを「実装する」と言う人もいます。
IT関係者がこの用語を常用することから、現在はさまざまな一般ビジネス社会においても、この「実装」という言葉が使われるようになっています。「実装」と言う場合、その前段に「仮装」というプロセスがあることを想起させるため、仮装プロセスが無い実行プロセスを実装と言うのは、違和感を感じる人がいます。
「実装」は日本のIT業界における独特の用語
IT関連業務において「実装」という日本語は幅広い場面で使われますが、英語では様々な表現が使い分けられています。
1. 抽象度と具体度の違い
抽象的な概念を表現する場合には、「realize」や「achieve」といった言葉が使われることがあります。
具体的なコードを書いたり、システムに組み込む作業を指す場合は、「implement」や「execute」が使われることが多いです。
2. 分野の違い
ソフトウェア開発では「implement」が一般的ですが、ハードウェア開発では「realize」や「embed」が使われることもあります。
データサイエンスの分野では、「deploy」や「integrate」といった言葉が使われることもあります。
3. 具体的な例
ソフトウェアエンジニア
「I implemented a new feature in the application.」 (アプリケーションに新しい機能を実装しました。)
「The implementation of the algorithm was successful.」 (アルゴリズムの実装は成功しました。)
データサイエンティスト
「We deployed the machine learning model to production.」 (機械学習モデルを本番環境にデプロイしました。)
「The integration of the data pipeline was completed.」 (データパイプラインの統合が完了しました。)
ハードウェアエンジニア
「We realized a new processor design.」 (新しいプロセッサ設計を実現しました。)
「The sensor was embedded into the device.」 (センサーをデバイスに組み込みました。)

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。
映像制作会社としての視点
映像業界において「実装」という言葉は、伝統的な撮影現場や演出の文脈ではほとんど使われません。
映像制作における「実装」という言葉の立ち位置
本来、映像の現場で使われる動詞は「撮る」「組む」「当てる」といった身体的な動詞です。しかし、近年のデジタル化に伴い、特定の専門セクションにおいて「実装」という言葉が浸透し始めました。
第一に、VFXやCG制作のポストプロダクションの現場です。
ここでは映像を「作る」だけでなく、プログラムや数式を用いて「構築」します。例えば、群衆を自動生成するアルゴリズムや、実写の光学的特性をシミュレートする機能を合成ソフトに組み込む際、エンジニア気質のスタッフが「この機能をシステムに実装した」と使います。
第二に、ゲームエンジンを用いた次世代のアニメ制作やバーチャルプロダクションです。背景美術を「描く」のではなく、3D空間として「構築」し、ライティングの変化や物理演算のギミックを組み込む工程において、IT業界由来の「実装」という言葉が持ち込まれました。
第三に、インタラクティブ映像や展示映像の分野です。センサー反応によって映像が変化するような「仕組み」を伴う制作では、プログラマーが「インタラクションを実装する」という表現を用います。
伝統的な映像制作において「実装」は馴染みの薄い言葉ですが、「映像をデータやシステムとして制御する」という現代的なエンジニアリングの局面において、選ばれる言葉です。
