ベクター
「ベクター」とは、映像技術においては一般的に「ベクターグラフィックス」のことで、点と点をつなぐ線や曲線、そしてそれらを囲む面によって表現される画像データ形式を指します。映像編集素材として使用する際には、拡大しても画像が粗くならないので、インフォグラフィックのピクトや会社のロゴマークなどのデータとして適しています。
ラスターグラフィックス(ビットマップ画像)がピクセルの集合で画像を表現するのに対し、ベクターグラフィックスは点、線、曲線などの幾何学的な情報で図形を表現します。ベクターとは、日本では「ベクトル」と発音されることが多く、数学や物理学の分野において平面上や空間上における力量や速度を表わす際に使われています。
ベクター画像の構成要素
ベクター画像は、主に以下の要素で構成されています。
アンカーポイント(点)
線や曲線の始点、終点、または方向を決定する点です。
パス(線)
アンカーポイント間を結ぶ線や曲線です。パスには、線の太さや種類(実線、破線など)といった属性情報が含まれます。
シェイプ(面)
パスで囲まれた領域です。シェイプには、塗りつぶしの色やグラデーションといった属性情報が含まれます。
解像度に依存しない
拡大・縮小しても画質が劣化しません。これは、図形が数学的な情報で表現されているため、どのようなサイズで表示しても再計算が可能であるためです。
データサイズが小さい
複雑な図形でも、比較的少ない情報量で表現できます。
編集が容易
図形を構成する要素を個別に編集できるため、線、色などを簡単に変更できます。例えば、線の太さを変えたり、色を調整したり、図形の形を修正したりするのが容易です。透明度やグラデーションも高品質に表現できますので、ロゴ、アイコン、イラスト、図面、フォントなど、拡大・縮小が必要なデザインや、編集を頻繁に行う可能性のあるデザインに最適です。
代表的なファイル形式としては、SVG、AI、EPSなどがあります。
【関連記事】

【関連情報】
1. 動きベクトル
映像内の物体の動きを表現するベクターのことで、あるフレームから次のフレームへの物体の移動量を表します。動きベクトルは、動画圧縮技術(MPEGなど)において、効率的なデータ圧縮を実現するために用いられます。動きベクトルを用いることで、フレーム間の差分情報のみを記録すればよく、データ量を大幅に削減できます。また、動きベクトルは、映像解析や映像編集など、様々な分野で活用されています。例えば、映像内の物体の動きを追跡したり、映像のブレを補正したりする際に、動きベクトルが利用されます。
2. シェイプ
形状や輪郭のことを指します。画像映像技術においては、図形や物体の形状を表現するために用いられます。
3. シェイプレイヤー
Adobe After Effectsなどの映像編集ソフトウェアでは、シェイプレイヤーという機能があります。シェイプレイヤーは、ベクターグラフィックスの機能を用いて、自由な形状の図形を作成・編集できる機能です。
シェイプレイヤーで作成した図形は、ベクターグラフィックスであるため、拡大・縮小しても画質が劣化しません。また、図形の形状や色、アニメーションなどを自由に変更できます。
シェイプレイヤーは、モーショングラフィックスやアニメーションなど、様々な映像表現に活用されています。
4. 3Dシェイプ
3次元空間における物体の形状を表現するもので、ポリゴン、スプライン、NURBSなど、様々な表現方法があります。
3Dシェイプは、ゲーム、映画、アニメーションなど、様々な分野で活用されています。
5. シェイプモデリング
3Dシェイプを作成する技術を、シェイプモデリングと呼びます。3Dシェイプモデリングには、ポリゴンモデリング、スカルプトモデリング、プロシージャルモデリングなど、様々な手法があります。
