人材不足から質的競争へ:愛知県で進化する採用戦略と動画の役割
- Tomizo Jinno

- 6 時間前
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1. 愛知県の採用市場に起きた構造的転換
愛知県の採用市場は、2023年度以降一貫して「売り手市場」が続いていますが、その質は大きく変化しています。かつては「人手を確保すること」が最優先でしたが、現在は「高度なスキルを持つ人材の獲得」「自社に合う人材とのマッチングの精度向上」へと採用戦略の主軸が移っています。
例えば、2023年度の年間平均有効求人倍率(EJOR)は 1.35倍という高い水準を記録しています。また、2025年8月時点では1.26倍にまで低下しています。 正社員有効求人倍率も高止まりしており、構造的な人材不足が依然として続いています。
さらに、EV/DXなど産業構造の転換に伴い、これまで愛知県が強みとしてきた製造業でも、ソフトウェア、電池、データ関連技術などの新領域人材の需要が急拡大しています。この変化が、採用活動の内容・訴求軸・情報発信の方法まで含めた「採用の質的転換」を促しています。

2. 求職者の価値観の変化と新しい採用評価軸
求職者側の意識も大きく変化しています。給与条件に加えて、「働き方の柔軟性」「企業の将来性」「社会貢献性」「人と組織の魅力」といった価値観が重視されるようになっています。
愛知県では、非製造業セクターでの設備投資が活発化しており雇用機会の多様化が進んでいます。例えば、設備投資が18.7%増というデータがあります。 また、県が推進する中小企業のテレワーク導入支援などにより、勤務環境の選択肢も広がっています。
つまり、求職者は「どこで働けるか」よりも「どんな未来をこの会社とつくれるか」「自分の価値をどう活かせるか」を重視するようになっています。この変化は企業の採用広報に、より深い「共感」「納得」「リアリティ」を求める傾向として現れています。
3. 映像制作会社の役割の変化:制作から戦略パートナーへ
このような採用市場の質的変化は、映像制作会社の役割にも大きな影響を与えています。従来の「採用動画を作る会社」から、「採用ブランディングと戦略的採用広報を支援するパートナー」へと役割が進化しています。
3.1 単なる会社紹介から「らしさの可視化」へ
求職者は、企業の知名度や規模だけではなく、「働く人の姿」「職場の空気」「意思決定の速さ」「育成や挑戦の文化」など、文字では伝わりにくい要素を重視しています。映像はこれらの情報を感情と共に伝える最適な手段であり、求職者の意思決定に直接影響する「採用の最終情報」として位置づけられています。
3.2 採用動画は「情報コンテンツ」から「戦略コンテンツ」へ
採用動画の役割は、企業説明ではなく「共感の獲得」「応募を後押しする説得力」「入社後のギャップ低減」へと進化しています。これにより、映像制作会社は企業の採用課題を理解し、伝えるべきメッセージを設計し、企画・演出・構成に反映させる役割を担うようになっています。
3.3 採用動画の活用範囲の拡大
採用動画は、もはや企業説明会や採用サイトだけで使われるものではありません。以下のように、多様な接点で運用されるようになっています。
活用場所 | 活用目的 |
採用サイト・HP | 企業理解・ブランド醸成 |
就職サイト・スカウト媒体 | マッチング精度向上 |
合同企業説明会 | 初期接触の印象形成 |
一次面接前動画視聴 | 応募者の意思確度の向上 |
内定式/入社前研修 | エンゲージメント向上・離脱防止 |
映像は、採用活動の「入口」から「出口」まで関与する戦略的コンテンツへと進化しており、制作会社の支援範囲も企画設計、ブランド戦略、採用広報設計まで拡大しています。
4. 映像制作会社に求められる新しい価値
今後、映像制作会社が採用領域で価値を発揮するためには、次の3つの力が重要になります。
必要な力 | 内容 |
採用市場・人材戦略の理解 | 採用課題・ターゲット人材の理解、企業の強みの言語化 |
情緒と論理の両立 | 感情を動かしつつ、求職者の納得感を生む構成設計 |
運用設計力 | SNS・採用サイト・説明会など複数チャネルでの運用最適化 |
映像制作会社は、採用市場の変化を理解しながら、「何を伝えるか」「誰に届けるか」「どう使うか」まで含めた総合的な提案が求められる時代に入っています。
まとめ
愛知県の採用市場は、単なる人手不足の時代から、「誰と未来をつくるか」を企業と求職者が共に考える時代へと移行しています。この流れの中で、映像制作は単なる広告ではなく、採用戦略の中核となるコミュニケーション手段へ進化しました。映像制作会社は、制作会社から「採用ブランディングの戦略パートナー」へと役割を広げ、企業の魅力を可視化し、未来の採用競争力をともに創る存在になっています。
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【この記事について】
本記事は、名古屋の映像制作会社・株式会社SynAppsが執筆しました。私たちは「名古屋映像制作研究室」を主宰し、さまざまな業界の知見を収集・分析しながら、企業や団体が抱える課題を映像制作の力で支援することを目指しています。BtoB領域における映像には、その産業分野ごとの深い理解が不可欠であり、その知識と経験をもとに制作に取り組んでいます。
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。
【出典】
採用市場・雇用統計関連
rs-aichi.net 『【2024年2月更新】愛知県の最新雇用情勢|有効求人倍率は 1.33倍(前月から- 0.01pt 減少)』
regional.co.jp 『【2025年9月更新】愛知県の最新雇用情勢|有効求人倍率は 1.27倍(対前月 -0.01 pt)』
rs-aichi.net 『【2025年10月更新】愛知県の最新雇用情勢|有効求人倍率は 1.26倍』
産業構造・技術人材・設備投資
asterwork.net 『2025年に愛知県で注目される工場をご紹介! - アスタワーク』
xn--pckua2a7gp15o89zb.com 『先端技術開発 - 愛知県の転職・求人情報 - 求人ボックス』
bizreach.jp 『【IT技術職・愛知県・勤務地問わず】を含む転職・求人情報一覧 - ビズリーチ』
dbj.jp 『2023・2024・2025 年度 東海地域 設備投資計画調査』
賃金・就職内定率・採用戦略
pacola.co.jp 『2024年10月から愛知県の最低賃金が1077円に!50円の引き上げ!』
hrog.co.jp 『2025年3月度 「時給1500円」に近づく自治体ランキング(中部)を発表しました - 株式会社フロッグ』
pacola.co.jp 『愛知県 2024年新卒者の就職内定率75.1%、11年連続で高水準を維持する採用市場動向』
pacola.co.jp 『令和7年8月愛知県の有効求人倍率1.26倍が示す採用戦略の方向性』
政策・制度・働き方
pref.aichi.jp 『「あいちテレワーク推進アクションプラン」を改正しました! - 愛知県』
chubu.meti.go.jp 『選考採用(社会人経験者採用) | 中部経済産業局』




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