モーションパララックス
Motion Parallaxは、視点(観察者)と対象物との間に相対的な動き(移動)があるときに発生する視差のことです。日本語では主に運動視差(うんどうしさ)と訳され、私たちが周囲の奥行きや距離を認識する上で非常に重要な単眼性の奥行き知覚要因の一つです。
片目(単眼)だけでも働く奥行きの手がかりであり、動いているときの風景や、カメラが移動しながら撮影した映像などで発生します。
仕組み
奥行きの異なる物体は、視点(カメラや私たち自身)が動いたときに、異なる速度で動いているように見えます。
近くの物体: 視点が移動すると、速く、大きく動いているように見えます。
遠くの物体: 視点が移動しても、ゆっくり、小さく動いているように見えます。
例えば、電車に乗っているときに窓の外を見ると、手前の電柱はビューっと後方に流れ去りますが、遠くの山はゆっくりとしか動かない(あるいはほとんど動かない)ように見えます。この速度の違いを脳が処理することで、「電柱は近くにある」「山は遠くにある」と、平面的な映像や単眼でも奥行きを認識できます。
映像制作会社としての視点
Motion parallaxとBlurを画像で説明しようとすると同じ絵になる問題
なぜ同じ絵になってしまうのか
写真や動画の1フレームは、「時間の流れを切り取った結果」でしかありません。
motion parallax は本来、視点が移動する“時間の中の現象”です。
奥のものはゆっくり動き、手前のものは速く動く。
これは連続したフレームの関係性で初めて意味を持ちます。
ところが、その連続運動を1枚の画像として切り出した瞬間、視差による動きも、単なる「流れた像」「ズレた像」として定着します。
一方、Blur もまた、時間方向の情報が1枚に畳み込まれた結果です。
つまり両者とも、「時間情報を失ったあとの姿」が静止画なので、見た目が同じになってしまうわけです。
本質的な違いは「フレーム間」にしか存在しない
Motion parallax と Blur の違いは、1フレームの中ではなく、フレームとフレームの“関係性”にあります。
Motion parallax は、連続フレームを見たときに手前の被写体は大きく位置が変わり、奥の被写体はあまり動かないという相対運動の差として認識されます。
Blur は、各フレームの中で被写体の輪郭がにじんでいるかどうかというフレーム内の現象です。静止画で説明しようとすること自体が、本来は文法違反に近いわけです。
じゃあ、どう説明するのが正しいか
Motion parallax を説明するなら、静止画1枚ではなく、最低でも2フレーム以上の連続、できれば動画やGIFで見せる必要があります。
例えば、ドリー移動の連続カットを並べて、手前の柱の移動量と奥のビルの移動量を見比べる。この「移動量の差」こそが Motion parallax です。
一方で Blur は、1フレームだけを切り出しても説明できます。輪郭が流れているかどうか、それ自体が現象だからです。

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
大学時代のラジオ番組の構成演出に始まり、映像ディレクター・プロデューサーとして40年以上の業界経験を積む。現在はその知見を基に、法人向けの戦略的映像制作・コンサルティングに従事しています。
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関連用語など
活用される分野
モーション・パララックスは、単に生物学的な知覚だけでなく、様々なデジタルメディアで意図的に利用され、奥行きや臨場感を演出しています。
1. 映像・ゲーム分野
ビデオゲーム
カメラ(視点)が動くときに、遠景の背景レイヤーを前景のレイヤーよりもゆっくり動かすことで、2Dの画面上にリアルな奥行き感を演出します。特に横スクロールアクションゲームなどで定番の技法です。
アニメーション
カメラワークに運動視差の原理を取り入れることで、映像に立体的な広がりを与えます。
2. Webデザイン分野(パララックス・スクロール)
パララックス・スクロール
Webサイトで、ユーザーがスクロールする動作に合わせて、前景にある要素は速く、背景にある要素はゆっくりと異なる速度で動くように設定するデザイン手法です。これにより、Webサイトの2次元の画面上にダイナミックな奥行きやストーリー性を演出することができます。
