動画・映像制作用語
【PA】
publicaddress
「PA(ピーエー)」とは、Public Address (パブリック・アドレス) の略称で、音を増幅して広い範囲の聴衆に届けるための音響システム全体のことです。
Public addressの「address」には、情報伝達・コミュニケーションの意味があります。つまり "address" は、「(特定の人々に向けて)話しかける」「演説する」という意味で、Public address (PA) systemは、直訳すると「公衆に向けて話しかけるシステム」となります。
我々がコンサートなどの記録ビデオや、ミュージックビデオ(MV)の制作のために撮影に入ると、それが主催者や演奏者の依頼であれば、このPAのミキサーから「ラインアウト」(ミキシングアウト、プログラムアウト)をもらい、ビデオカメラや独立した録音装置に入力して、カメラ映像と同期して収録するのが一般的です。
ラインがもらえても、必ず別途、独自にマイクを立てて撮影することがプロとしては必須です。この時のマイクの位置は、最適な音響バランスが得られる位置を、綿密に調査して設置すべきです。絶対に観客などに触れられたり、倒されることがないよう注意しましょう。
MVとライブアルバムを同時制作するような場合は、PAのミキシングアウトではなく、マイクや楽器の出力を分配して、そのままマルチトラックで録音して、後日スタジオでミキシングする場合もあります。
PAの主な目的
拡声
小さな音を大きくして、広い会場の後方までクリアに届ける。
音質の調整
音量バランス、音質(EQ)、エフェクトなどを調整し、聴衆にとって聴きやすい音を作る。
音の分配
複数のスピーカーを適切に配置し、会場全体に均一な音を届ける。
モニターミキシング
コンサートのPAでは、観客向けのミキシングとは別に、演奏者(プレーヤー)たちのためのモニターミキシングを別途行っているのが一般的です。これは、演奏者がステージ上で自分たちの音や他のメンバーの音を適切に聞きながら演奏するためで、観客に届けるべき音と、演奏者が演奏しやすいように聞くべき音は、バランスや必要な情報が異なるためです。通常、メインのミックスを担当するミキサーと、モニターミックスを専門に担当するミキサーが居ます。
演奏者は、モニターの音声を、「ころがし」と呼ばれる床に置いたスピーカーやモニターイヤホン、ヘッドセットなどで聴いています。
ステージで演奏したことがある人はわかりますが、このモニターがないと、直接の音と反響音が混ざったり、特定の楽器や自分の声が聞こえなかったりして、まったく演奏になりません。
モニターミックスの目的
演奏の安定性
演奏者は、自分の楽器の音だけでなく、リズムを刻むドラムやベース、ハーモニーを奏でる他の楽器の音などを正確に聞くことで、安定した演奏をすることができます。
ピッチの確認
ボーカルや楽器のピッチ(音程)を正確に把握するために、自分の声や楽器の音を適切なバランスで聞く必要があります。
一体感の醸成
バンド全体の演奏をモニターで共有することで、メンバー間の一体感を高め、より良いパフォーマンスに繋げます。
個々のニーズへの対応
各演奏者は、聞きたい音のバランスや音量が異なる場合があります。そのため、個々の演奏者の要望に応じたモニターミックスを提供することが理想的です。
【関連用語】
1. ミキサー
複数の音声信号(マイク、楽器出力など)を入力し、それぞれの音量、音質、定位(左右のバランス)、エフェクトなどを調整して、一つまたは複数の出力信号にまとめる装置、あるいはその操作をする技術者です。
2. 単一指向性マイク
特定の方向からの音をより強く拾い、それ以外の方向からの音を拾いにくい特性を持つマイクです。特定の方向からの音を拾うため、スピーカーからの回り込みによるハウリング(キーンという不快な音)が発生しにくく、目的の音源(ボーカルや楽器など)にマイクを向けることで、周囲の不要な音を抑えることができます。
3. 無指向性マイク
全ての方向からの音を均等に拾う特性を持つマイクです。全方向の音を拾うため、音源の自然な響きや周囲の空気感を捉えることができます。全方向の音を拾うため、スピーカーからの回り込みによるハウリングが発生しやすく、不要な環境音も拾ってしまう可能性があります。
4. ファントム電源
コンデンサーマイクなどの特定の種類のマイクを動作させるために必要な直流電源を、ミキサーなどの機器からマイクケーブルを通して供給する機能です。
音質が優れているコンデンサーマイクをステージで使用する際に不可欠な機能です。ボーカル、アコースティック楽器、ドラムのオーバーヘッドマイクなど、高音質が求められる音源の収音によく使用されます。ボーカル用マイクとしてよく使われるSHUREのSM58はダイナミックマイクのため、電源は要りません。
5. イコライザー
特定の周波数帯域の音量を調整することで、音のバランスや音色を補正・加工する機器または機能です。ミキサーの各チャンネルや出力セクションに搭載されています。
マイクや楽器の特性、会場の反響などによって生じる不要な周波数成分をカットしたり、特定の周波数帯域を強調したりすることで、音をクリアにしたり、 理想の音色に近づけます。特定の周波数帯域をわずかに下げることで、ハウリングの発生を抑えられることがあります。