動画・映像制作用語
【トラック】
track
「トラック」とは、映像や音響技術においては、時間軸をもったレイヤーの概念と、ムービーカメラを移動させることを指します。
1. 専用記録レーンとしてのトラック
陸上トラック競技の「レーン」のように、時間軸に沿ってそれぞれのレーンに、さまざまな素材を配置・管理するような概念です。この概念は、時間軸をもった複数のコンテンツを同期させる(タイミングくを合わせる)ために使われる技術で、古くは音楽制作に使用されたマルチトラックレコーダーに遡ります。
映像素材(カメラ、テロップ等)や音声素材(セリフ、BGM等)を、それぞれ専用の「レーン」に並べたのち、重ねたり、タイミングを調整したり、様々なエフェクトを施したのち、ひとつのコンテンツとして書き出します。
2. カメラワークとしてのトラック
カメラを物理的に移動させることです
トラックイン(Track In)/ドリーイン(Dolly In)
カメラを被写体に向かって前進させる動き。
トラックアウト(Track Out)/ドリーアウト(Dolly Out)
カメラを被写体から後退させる動き。
トラッキングショット
移動しながら被写体を追いかけるように撮影するショット。レールやドリーを使う場合もあります。
【関連用語】
1. モーショントラッキング
映像内の特定の物体や人物の動きを自動または手動で解析し、その軌跡をデータとして記録する技術。記録されたデータを利用して、CGオブジェクトを現実世界の映像に追従させたり、エフェクトを特定の動きに合わせて適用したりすることが可能になる。映画、ゲーム、広告など幅広い分野で活用され、現実と仮想をシームレスに融合させるための重要な技術。近年ではAIを活用した高精度なトラッキングも進化している。
2. MTR(マルチトラックレコーダー)
複数の音声トラックを同時に録音・再生できる機器またはソフトウェア。各楽器やボーカルを別々のトラックに録音することで、ミックスダウン時に音量、音質、定位などを細かく調整できる。音楽制作の核となる機材であり、プロフェッショナルな現場だけでなく、アマチュアの音楽制作環境にも広く普及している。デジタルMTRはソフトウェアベースのDAW(デジタルオーディオワークステーション)として進化している。
3. MA(マルチオーディオ)VTR
映像に複数の音声を同期させて記録・再生できるVTRシステム、またはその作業を行う工程。MA作業では、セリフ、効果音、BGMなどを映像に合わせて細かく調整し、最終的な音響を作り上げる。放送業界や映像制作会社において、完成した映像作品に最適な音響を与えるための重要なポストプロダクション作業の一つ。近年ではファイルベースのMAシステムが主流となっている。
4. レイヤー
映像編集やグラフィックデザインにおいて、複数の画像を透明なシートのように重ねて表示する概念。各レイヤーに個別の素材を配置し、表示順序や透明度、合成方法などを調整することで、複雑なビジュアル表現が可能になる。Photoshopなどの画像編集ソフトや、After Effectsなどの映像編集ソフトで広く用いられる基本的な概念。
5. 同期(シンクロ)
映像と音声、あるいは複数の映像や音声素材の時間的なずれがない状態のこと。撮影時や編集時に、映像と音声が正確に一致していることが重要であり、リップシンクのずれなどは視聴者に不快感を与える。タイムコードや同期信号を用いて、素材同士の正確な同期を図るための様々な技術や手法が存在する。