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MA(エムエー)

撮影現場での収録音(セリフや環境音)、効果音、音楽(BGM)、ナレーションなど、様々な要素で構成されている映像作品の音声要素を最適なバランスで調整し、一つの完成された音響空間を作り出しすスタジオ作業です。フィルム時代には、この業界の音つけは“ダビング”と呼ばれていました。

MAはMulti Audioの略語なのですが、この概念の起源は池上通信機(かつて放送用映像機器の市場では一世を風靡していた)の2インチVTRがマルチオーディオトラックVTR=MA VTRと呼ばれていたことに遡ります。

このオープンリールのVTRは4チャンネルのオーディオトラックがついていたことから、映像とシンクロできるオーディオ用のマルチトラック・レコーダーが登場する前までは、音楽、ナレーション、効果音をミックスして整音する「音つけ」作業には、この機材が大変便利だったのです。



マルチトラック


映像作品の音声は、現場での収録音(セリフや環境音)、効果音音楽(BGM)ナレーションなど、複数の要素で構成されています。MAでは、これらの要素をそれぞれ別々のトラックとして配置し、独立して編集や調整します。

例えば、セリフは1~2トラック目、環境音は3トラック目、効果音は4~6トラック目、音楽は7~8トラック目というように、複数のトラックを並行して扱います。



映像とタイミングを合わせながら個別に調整して1本化


このマルチトラック方式により、各音声要素を個別に調整しながら、全体のバランスを整えることができます。セリフの音量を上げながら音楽を抑える、特定の効果音だけを際立たせる、ナレーションが入る部分だけ他の音を下げるといった、緻密な音作りが可能になりました。また映像のカットに音楽や効果音のタイミングを合わせる細かな作業も可能です。


MAは単なる音声編集ではなく、複数の音声要素を同時並行で操作し調整し組み合わせることで、映像に豊かな音響表現を加える作業です。


具体的な作業内容

  • 収録音の音質調整や不要なノイズの除去

  • 効果音の追加と音量調整

  • 音楽(BGM)の選定、編集、音量調整

  • ナレーションの収録と編集

  • 相互的、全体的な音量バランスの調整

  • 放送規格に合わせた音声レベルの調整と規格化

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執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。

映像制作会社としての視点


お客様へのMA立ち合いのご案内(例)


「MA」の工程では、ナレーション収録および音声仕上げを行います。

MAとは、映像にナレーション、音楽、効果音などを組み合わせ、最終的な音のバランスを整える工程です。初めて立ち合われるお客様にも安心してご参加いただけるよう、当日の流れとポイントをご案内します。


当日は、ナレーターが防音ブースで収録を行い、調整室ではミキサー(MA技師)が音量や質感を調整します。お客様と弊社スタッフは調整室で映像を確認しながら、読み方やニュアンスについてご要望をお伝えいただけます。専門用語や固有名詞の読み方については、事前に方針をすり合わせておくことで、収録がスムーズに進みます。


ナレーションは映像の流れに合わせて数ブロックに分けて収録し、必要に応じてその場で再収録を行います。すべて録り終えた後、全編を再生して最終確認を行います。この時点で問題がなければ、ナレーターの収録は完了となります。収録後は、ナレーション・音楽・効果音の音量バランスを調整し、聞き取りやすく仕上げます。


MAは「音の最終仕上げ」にあたる重要な工程です。映像の印象は音で大きく変わりますので、気になる点があれば遠慮なくお申し付けください。当日はディレクターあるいはプロデューサーが進行をサポートいたしますので、初めての方でも安心してご参加いただけます。
完成後は最終データをご確認いただき、問題がなければ納品となります。

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MA(エムエー)を解説するイメージ(監修・神野富三)

​関連用語など

1. フォーリー(Foley)


映像に合わせて人工的に音響効果を作り出す技術です。足音、ドアの開閉音、衣擦れの音など、日常的な効果音をスタジオで再現し録音します。フォーリーアーティストは、映像を見ながらリアルタイムで音を作り出し、よりリアルな音響効果を実現します。例えば、雪を歩く音は片栗粉を使用したり、雨音は米を金属板の上で転がしたりするなど、様々な素材や道具を使用して音を創造します。アニメーション作品や劇映画では特に重要な工程となり、作品の臨場感を高める重要な要素となっています。MAの工程で、これらのフォーリー音を他の音響要素と適切にミックスすることで、より豊かなサウンドスケープを作り出します。



2. サラウンドミキシング(Surround Mixing)


5.1chや7.1chなどの多チャンネル音声システムに対応したミキシング作業です。視聴者を音で包み込むような立体的な音響空間を創造します。セリフは主にセンタースピーカーに、音楽や環境音はフロントとサラウンドスピーカーに、効果音は状況に応じて各スピーカーに振り分けられます。特に映画館での上映を想定した作品では、観客の臨場感を高めるために緻密なサラウンドミキシングが行われます。最新のイマーシブオーディオ技術では、より多くのスピーカーを使用した立体的な音響表現も可能になっています。



3. ADR(Automated Dialogue Replacement)


セリフの吹き替えや再録音を行う工程です。撮影現場での収録音が使用できない場合や、より明瞭な音質が必要な場合に実施されます。俳優は映像を見ながら、元の演技に合わせてセリフを再演します。正確なリップシンクと感情表現の再現が求められる、高度な技術を要する作業です。国際版の制作時の吹き替えや、アニメーションの声優収録なども、ADRの一形態として位置づけられます。デジタル技術の進歩により、より精密なタイミング調整や音質の向上が可能になっています。



4. スウィートニング(Sweetening)


音響効果を追加・強調して、より印象的な音作りを行う工程です。例えば、アクションシーンでの打撃音を強調したり、自動車の走行音にエンジン音を追加したりします。視聴者の感情を効果的に揺さぶるため、または特定のシーンの印象を強めるために行われます。音響ライブラリーやシンセサイザーを使用して、現実には存在しない音を創造することも可能です。音響効果の追加は控えめに行い、不自然さを感じさせないよう注意深く調整する必要があります。



5. ステムミキシング(Stem Mixing)


音声素材を種類別にグループ化してミックスする手法です。ダイアログ、音楽、効果音など、カテゴリーごとに独立したステムを作成し、最終的なミキシングの柔軟性を確保します。例えば、国際版制作時にダイアログのみを差し替えたり、テレビ放送用に音量バランスを調整したりする際に便利です。また、ゲーム制作では、プレイヤーの操作に応じて各ステムの音量を動的に変化させることも可能です。デジタルオーディオワークステーションの発展により、より複雑なステム管理が可能になっています。

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