動画・映像制作費の税務・会計ルール
- Tomizo Jinno

- 2024年10月19日
- 読了時間: 5分
更新日:10月25日
会計士さんに聞きました
企業が発注する映像制作費に関して、発注者側の会計処理はどうなるのでしょう。
現在一般的に行われている会計処理では、その金額が10万円以内(中小企業の場合30万円までの特例あり)、あるいはその映像の使用期間が年度内であることが明確であれば、その年の経費(広告宣伝費、研修費、福利厚生費など)として処理します。そして使用期間がその年度を越えて使用される場合は、「会社のPR用映画フィルムは、そのフィルムによるPR効果が期待できる期間中は継続的に使用されるものですから減耗資産ではなく、通常の減価償却資産として耐用年数2年で償却すべきもの」ということになっています。
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カウントされているのはソフトウェアではない
ここで気になるのが、映像が「映画フィルム(スライドを含む。)、磁気テープ及びレコード」という「器具及び備品」に含まれて分類されていると解釈できるところ。つまり長年にわたって鑑賞に耐える映像作品であっても、せいぜい2年で償却されてしまう資産でしか無い。いわんや現実的には、ほとんどの人が映像制作費は経費であり資産だとは思っていないようです。
時代が流れても陳腐化しない映像づくり
モノゴトの遷ろいが早くなり数週間、数ヶ月で情報が陳腐化してしまうのも当り前の時代ですが、私たちは永くその企業の価値や、商品のイメージに貢献し続ける映像づくりをしたいと考えています。
経費としての映像づくり、資産としての映像づくり、どちらも力いっぱいお手伝いさせていただきます。決算を前に経費を使いたい方、大歓迎です(笑)
カタチがない仕事の宿命?
映像という無形のモノ(?)の価値評価は客観的な指標があいまいで、税務に関わるひとの多くは十把一絡げで広告宣伝費(単年度経費)で処理していることが多いようです。その結果、税務署から「2年で償却しろ」とか修正申告を求められる場合があるようです。
先の記事でも書きましたが、僕は「映像作品」は「資産」であると考えたい人間です。ですから、単年度で一括経費として計上される、つまり1年足らずで陳腐化すると考えられるのはちょっと残念な思いがします。
「プログラム」は償却資産
ご存知と思いますが、「ホームページ」というコンテンツは「どんどん更新される」という理由で、単年度で処理していいようですが、そこに組み込まれたコンピュータソフトやデータベースなどは、年をまたいで使用されるため、最長5年での償却になります。
では、そこ(WEB)に掲載する目的で作成した動画(映像)コンテンツはどうなるのか?
企業がその映像を使って営業活動を行なっていれば、その期間(最長5年)に分けて経費処理するというのが、おおかたの税理士のお考えです。
※劇場用映画、販売用DVD、テレビ番組などは収益を得られる期間が長期間に亘るため、別な方法で償却期間が様々に設定されるようです。なお、税務当局の指針は会計士でも判断が分かれるものがあり、また通達等も随時更新されますので、現在の会計ルールはご自身で必ずご確認下さい。

2025年9月15日追記
映像制作費の会計処理──その後の状況
かつて「会社のPR用映画フィルムは2年で償却」とする国税庁の見解が一般的なルールとして定着しました。つまり映像は、どれほど長く価値を持ち得る作品であっても、制度上は短期間で消費される資産にすぎない。そうした扱いが実務の前提となってきました。
しかし近年、この単純な図式は通用しにくくなっています。理由はデジタル化と配信チャネルの多様化です。映像は劇場やテレビ放送に限らず、オンライン配信、SNS、サブスクリプション、VODなど、長期間にわたって活用される場面が急増しました。制作費を単年度で「広告宣伝費」として費用処理するのか、あるいは資産として計上するのか。実務での判断は一層複雑化しています。
また国際的な会計基準も無視できません。IASBやFASBでは、映像コンテンツを無形資産として認める指針が整備されつつあり、日本の会計専門家もこの動向に注目しています。「フィルム」という物理媒体に依存した旧来の分類では、もはや実態を反映できないのではないか──そんな問題意識が広がっています。
一方で実務の現場では、依然として「広告宣伝費として単年度処理」が多く選ばれているのも事実です。理由はシンプルで、税務調査において使用期間や収益性を裏付ける証拠を揃えにくいからです。契約書に明確な使用期間を定め、公開・配信の実績を記録しておかなければ、「2年償却」による修正申告を求められるリスクは常に残ります。
最近の税務裁決や判例を見ても、当局は「形式」より「実態」を重視しています。たとえば長期にわたる利用が計画されていても、実際には短期間で配信停止となれば費用処理が妥当と判断されます。逆に収益を生み続ける配信ビジネスや社内教育で恒常的に使われている映像であれば、資産計上を認める判断も出ています。
こうした動きから見えてくるのは、「映像=2年償却」という固定観念を疑い、ケースごとに使い方と便益を丁寧に検討する必要性です。耐用年数を柔軟に設定すべきだという声も専門家からは多く聞かれますし、ブランド資産としての映像の価値を長期的に認めようという議論も強まっています。
ただし現状では、明確な国内ルールが整備されているとは言いがたく、判断にムラが出るのが実務の悩みどころです。だからこそ、契約や仕様書に使用期間や更新予定を盛り込み、公開・配信の記録を保存することが、税務上のリスクを減らす第一歩となります。
結局のところ、映像制作費の処理は「経費か資産か」という二分法に還元できない時代に入ったといえます。制度は大きく変わっていないものの、デジタル社会に適応するための“解釈と工夫”が求められています。会計処理は単なる数字合わせではなく、企業が映像をどのように活用し、どんな価値を長期的に見出しているのかを映す鏡になりつつあります。
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。(2025年10月現在)




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