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映像制作を発注する企業担当者のための用語解説です。
カメラ目線
被写体となっている人が撮影しているカメラのレンズを見ている状態のことです。カメラ(レンズ)に向かってカラダが正面を向いていても、斜めになっていても、視線がカメラに向かっていればカメラ目線となります。
「カメラの目線」ではありません。
1. 視聴者を見ているように見えるカメラ目線
この状況で撮影された映像や写真を見ると、視聴者は被写体の人が自分を見ているような感覚を覚えます。「モナリザの微笑み」が自分に向けられているように感じるのと同じ原理です。
一般的な物語で描かれる映画の登場人物や、テレビドラマの出演者は、原則的にカメラ目線はタブーです。描かれている物語の空間に入り込んでいた視聴者は、登場人物が自分に視線を向けた途端に我に返ることになるからです。
2. 「カメラ目線」の目線の向け方
いっぽう1ショットでカメラに映る選挙演説番組や教育番組では、カメラ目線によって視聴者に語りかけるように見せることで、説得力を持たせます。しかし、こうした「カメラ目線」映像でも、実は目線はレンズではなく、カメラレンズの少し上辺りを見ています。レンズそのものに視線を向けた状態は、視聴者に威圧感を感じさせるからです。
3. プロンプターを使う
喋る原稿が用意されているけれど、カンペを読んでいることを知られたくない場合は、この装置を使えば視線をまっすぐカメラに向けたまま文字を追うことができるため、カメラ目線映像が容易に収録できます。

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。
映像制作会社としての視点
ビジネス映像においては、メッセージを伝える社長や現場を伝えるレポーターであれば、カメラ目線はあたりまえですが、テレビドラマや劇映画などでは事情が違います。
「カメラ目線」は、世界のルールを壊す合図
ふつう、映画やドラマの中の世界は、現実の私たちとは切り離されています。登場人物たちは「カメラ」や「テレビの前の視聴者」の存在を知らないはずです。この「お互いに干渉しない」という暗黙のルールを、専門用語で「第四の壁」と呼びます。
しかし、登場人物がふとこちら(カメラ)を見た瞬間、その壁がパリンと割れてしまいます。これがメタフィクションの入り口です。「これは作り物ですよ」「あなたが見ていることを知っていますよ」という合図になるからです。
視聴者を「仲間」に引き込む
カメラ目線で話しかけてくる演出(例えばドラマの『古畑任三郎』)には、特別な効果があります。
秘密の共有: 他の登場人物には聞こえない内緒話を、自分(視聴者)だけに話してくれているような感覚になります。
共犯者意識: 悪巧みをカメラ目線で報告されると、見ている自分もその計画に加担しているような気分になります。
「ただの物語」ではなくなる瞬間
ふつうの映像は「外から眺めるもの」ですが、カメラ目線が入ると、急に「自分に話しかけてくるもの」に変わります。
「これはフィクション(作り話)だ」とバラしているのに、なぜか現実の自分との距離がぐっと近くなる。この「作り話であることを認めつつ、現実とつなげてしまう」という不思議な体験こそが、メタフィクションの面白さです。
一言でいえば、「カメラを見る=テレビの外にいるあなたを、物語の世界へ無理やり招待する」というスイッチのようなものだと言えるでしょう。
