動画・映像制作用語
【モノローグ】
monologue
「モノローグ」とは、映画や演劇、文学作品において、登場人物が自分自身や観客、あるいは作中の特定の人物に向けて、自分の内面にある考え、感情、記憶などを語る場面のことです。
日本語では「独白(どくはく)」とも言われますが、平たく言えば「ひとりごと」です。
モノローグの意図
回想や心理描写の表現
過去の出来事を振り返る回想シーンで、当時の感情や考えをモノローグで語ることで、時間軸を超えた物語の深みを出すことができます。また、言葉にならない複雑な心理描写を、モノローグによって具体的に表現することができます。
観客への親近感や共感
登場人物の内面が直接的に語られることで、観客は登場人物の感情に寄り添いやすくなり、より親近感や共感を抱くことができます。
演出による多様な表現
モノローグは、登場人物がカメラ目線で語りかける、心の声として聞こえる、過去の映像と重ねて語られるなど、演出によって様々な表現方法が用いられます。
ナレーションとの違い
モノローグは、あくまで登場人物自身の言葉として語られるのに対し、ナレーションは物語の語り部が客観的に状況や説明を加えるものです。
モノローグ時によくあるカット割り
クローズアップ(顔のアップ)
話し手の表情や感情を強調し、内面の葛藤や思考を視覚的に表現します
目元や口元のみの極端なクローズアップも効果的に使われます
モンタージュ
モノローグの内容に関連する断片的な映像を次々と重ねていく
過去の回想シーンや想像の映像と現在を組み合わせる手法
ロングテイク
カットを入れずに一度の撮影で長く続けるショット
話し手の感情の変化や心理的な流れを途切れさせずに表現します
POV(Point of View)ショット
話し手の視点から見た映像を挿入し、その人物の主観的体験を示します
視線の先のカット
話し手が見ている対象を映すことで、言葉だけでなく視覚的に関心事を表現
環境ショット(エスタブリッシングショット)
モノローグを語る人物を含む広い環境を映し、状況や雰囲気を伝えます
オーバーショルダー
聞き手の肩越しに話し手を映すショット(対話の相手がいる場合)
シルエットや影の使用
人物を暗いシルエットとして映し、言葉の重みや内省的な雰囲気を強調
抽象的な映像との組み合わせ
象徴的なイメージや抽象的な映像をモノローグに重ねる手法
ショット/リバースショット
独白であっても、話し手と(想像上の)聞き手との間の視点を交互に切り替える

【関連用語】
『タクシードライバー』(1976年)
ロバート・デ・ニーロ演じる孤独なタクシー運転手トラヴィス・ビックルの内面を深く掘り下げるモノローグが全編にわたり、彼の鬱屈とした感情や社会への不満が生々しく伝わってきます。「俺は神の孤独な男…」という言葉はあまりにも有名です。
『ブレードランナー』(1982年)
ラストシーンで、ロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)が語る「雨の中の涙」のモノローグは、SF映画史に残る名シーンとして知られています。短い言葉の中に、生と死、記憶、そして人間存在の儚さが凝縮されています。
『ファイト・クラブ』(1999年)
ブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンの挑発的で哲学的なモノローグは、映画全体のテーマを象徴しており、観客を深く考えさせます。
『アメリカン・ビューティー』(1999年)
ケビン・スペイシー演じるレスター・バーナムの皮肉とユーモアに満ちたモノローグは、中年男性の葛藤や欲望を赤裸々に描き出し、物語を牽引します。
『マルコヴィッチの穴』(1999年)
ジョン・マルコヴィッチの頭の中に入るという奇抜な設定の中で、彼の体験や感情がモノローグによって語られ、独特の世界観を作り上げています。
『her/世界でひとつの彼女』(2013年)
ホアキン・フェニックス演じる主人公セオドアが、AIのサマンサとの関係を通して抱く感情や葛藤が、繊細なモノローグによって表現されます。