モンタージュの基礎知識 | 映画やテレビで使われる映像編集の技法
- Tomizo Jinno

- 2024年11月21日
- 読了時間: 6分
更新日:1月6日
モンタージュって何?
映画やテレビを見ていると、場面と場面がつながって物語が進んでいきます。このように映像と映像をつなぎ合わせて、新しい意味や感情を生み出す手法を「モンタージュ」と呼びます。例えば、お腹を空かせた人の顔を映した後に、おいしそうな料理を映すと、見ている人は「その人は食べたくて仕方ないんだな」と感じます。これがモンタージュの基本的な考え方です。
2026年1月5日 追記

1.1 モンタージュにはどんな効果的がある?
私たちが映画を見るとき、実は脳が自動的に場面と場面をつなぎ合わせて意味を作り出しています。例えば、次のような場面展開を想像してみてください:
・ホームで時計を見ながら立つ女性の後ろ姿
・走り去っていく電車の映像
・見つめる女性

この3つの映像を順番に見せられると、「電車に乗り遅れた」ないしは「誰かを見送り来たが間に合わなかった」という物語が自然と頭の中で作られます。このように、モンタージュは私たちの想像力を使って物語を伝える効果があります。
1.2 日常的に見かけるモンタージュの例
テレビドラマでよく見る手法
・2人の会話シーン
お互いの顔を交互に映すことで、会話の自然な流れを作り出します。これも一種のモンタージュです。話している人と聞いている人の表情を見せることで、会話の雰囲気がよく伝わります。

・料理番組での編集
材料を切る場面から、調理の場面、出来上がりまでを効果的につなぎ合わせることで、料理の過程がわかりやすく伝わります。実際にはもっと時間がかかる工程も、見やすい長さに編集されています。

1.3 わかりやすい具体例
スポーツ中継での活用
・得点シーンの再生
選手の動き、ボールの軌道、ゴールの瞬間、歓喜する観客の表情といった様々な角度からの映像をつなぎ合わせることで、その瞬間の興奮や感動を効果的に伝えています。
ミュージックビデオでの表現
・歌詞の内容に合わせて映像を切り替える
・リズムに合わせて場面を変える
・物語性のある展開を作る
これらの手法により、音楽の世界観や感情を 感覚的に表現しています。
モンタージュは単に映像をつなぎ合わせる技術ではなく、見る人の気持ちや理解を考えながら、効果的に物語や感情を伝えるための映像の文法です。スマートフォンで気軽に動画が撮れる今の時代、この基本的な考え方を知っておくと、より印象的な映像を作ることができます。
映画やテレビを見るときも、どのように場面がつながっているか、なぜその順番で映像が見せられているのかを意識してみると、新しい発見があるかもしれません。
モンタージュが深める映像の世界
2.1 モンタージュは技法ではなく思考様式です
説明的な編集では、映像は因果関係に従って構成されます。すなわち、「AであるからBである」という論理が前提となります。
一方、モンタージュは必ずしも因果を説明しません。類似、対比、矛盾、飛躍といった関係を並置することで、観る者の思考の中に意味が立ち上がることを期待します。
したがってモンタージュとは、意味を直接提示する方法ではなく、意味が発生する条件を整える編集思考であると言えます。
2.2 原則としてのカット編集
モンタージュを行う場合、トランジションは用いないほうが効果的です。
ディゾルブやフェード、ワイプといったトランジションは、カット同士の関係を滑らかに説明し、時間や空間の連続性を保証する装置です。しかしモンタージュが目指すのは、連続性の保証ではなく、関係性の衝突や断絶です。そのため、カットとカットを直接接続する編集、すなわちカット編集こそが基本形となります。この冷静で簡潔な接続が、観る者の思考を最も刺激します。
2.3 カットは意味の断片である
モンタージュを扱う際、カットは素材ではありません。
それぞれが、特定の感情、状況、価値観を含んだ意味の断片です。単体では中立的に見えるカットであっても、別のカットと並置された瞬間に、その意味は変化し、時に増幅されます。この変化は編集者が説明するものではなく、観る者の認知によって自然に起こる現象です。モンタージュとは、この認知の働きを前提に設計された編集であると言えます。
2.4 観る者の思考を信頼するということ
しばしば、映像は「分かりやすさ」を求められます。
しかし、分かりやすさと説明過多は同義ではありません。モンタージュが成立する映像では、観る者は「考えさせられている」という自覚を持ちません。違和感や引っかかりを手がかりに、自ら意味を補完しているに過ぎないのです。この状態を成立させるためには、観る者の理解力と思考力を制作者が信頼していることが不可欠です。
2.5 説明を控えるという選択
モンタージュが破綻する多くの理由は、制作者自身の不安にあります。
意味が伝わらないのではないか、誤解されるのではないかという懸念から、テロップやナレーションによる補足を加えてしまうと、モンタージュはその力を失います。モンタージュにおいては、説明をしないことが最も高度な選択である場合があるという点を、意識的に理解しておく必要があります。
2.6 撮影段階から始まるモンタージュ
モンタージュは編集室のみで成立するものではありません。
どの要素を断片化するのか、どの要素を意図的に欠落させるのか、どの関係性を後で衝突させる可能性があるのか。これらは、撮影の時点ですでに構想されている必要があります。そのため、モンタージュを扱う制作者は、撮影者であり、編集者であり、演出者でもあります。役割の切り替えではなく、視点の重なりが重要となります。
2.6 意味を一つに固定しない覚悟
モンタージュは、解釈の幅を内包する表現手法です。
その結果、観る者によって受け取り方が異なる可能性を常に含みます。しかし、この不確定性こそが、映像に奥行きと持続的な思考を与えます。モンタージュとは、映像を分かりやすくする代わりに、映像を深くするための選択であると言えるでしょう。
モンタージュとは、意味を操作する編集技術ではなく、意味が生まれてしまう構造を設計する映像思考です。自身の編集が「説明」に傾いていないかを自問する視点を持つだけでも、映像表現の質は確実に変化します。
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【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。(2026年1月現在)
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