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カット割りの応用と実践 - より豊かな表現のために

更新日:4 日前

すでに説明したカット割りの基本を踏まえた上で、より実践的で高度な表現方法について見ていきましょう。ここでは、具体的なシーンの種類に応じたカット割りの方法と、より複雑な表現技法について説明します。


【このページの目次】


【このシリーズの他のテーマ】



  1. アクションシーンのカット割り


アクションシーンは、特に緻密なカット割りが要求される場面です。例えば格闘シーンでは、以下のような要素を組み合わせます:

  • 全体の状況を把握できる広いショット

  • 打撃や技の瞬間を捉えたクローズアップ

  • 反応や衝撃を見せる表情のショット

  • 周囲の観客や環境の反応を示すカット

これらを適切なタイミングで切り替えることで、アクションの迫力と状況の理解しやすさを両立させます。特に重要なのは、動きの方向性を一貫させることです。例えば、右から左への攻撃は、次のカットでも同じ方向性を保つことで、視聴者は混乱することなく動きを理解できます。


絵コンテ1 アクションシーンのカット割り


  1. 感情的なシーンの演出


登場人物の感情の機微を伝えるシーンでは、以下のような手法が効果的です:

  • 表情のクローズアップと全身のショットの使い分け

  • 感情の変化に合わせたカットの長さの調整

  • 象徴的な風景や物体のショットの挿入

  • 他の登場人物の反応ショット

特に重要なのは、感情の「積み重ね」を表現することです。例えば、ある出来事に対する登場人物の反応を、最初は広いショットで控えめに見せ、徐々にクローズアップに移行することで、感情の高まりを表現することができます。


絵コンテ2 感情的なシーンの演出


  1. 場所の移動と時間経過


物語の中で場所や時間が変化する際のカット割りには、特別な配慮が必要です。例えば:

  • 移動を示す際は、出発点と到着点を明確に示す

  • 時間経過を表現する際は、自然現象や時計などの視覚的手がかりを用いる

  • 場所の変化を示す際は、視聴者が混乱しないよう、新しい場所の特徴を明確に示す

例えば、キャラクターが電車で移動するシーンでは、駅のホームから電車に乗り込むショット、車窓からの風景のショット、目的地の駅に到着するショットという順序で示すことで、自然な流れを作ることができます。


絵コンテ3 場所の移動と時間経過


  1. 群衆シーンの演出


多くの人々が登場するシーンでは、以下のような点に注意してカット割りを行います:

  • 全体の雰囲気を伝える広いショット

  • 特定の個人や小グループに注目したショット

  • 群衆の中の重要な動きや反応を捉えたショット

  • 空間の広がりを感じさせる俯瞰ショット

これらを組み合わせることで、混乱を招くことなく、複雑な状況を効果的に伝えることができます。


絵コンテ4 群衆シーンの演出


  1. 対比と並置


異なる要素を対比させることで、より深い意味を伝えることができます:

  • 富裕層と貧困層の生活を交互に見せる

  • 過去と現在の映像を並置する

  • 異なる場所で同時に起きている出来事を交互に見せる

このような対比的なカット割りは、直接的な説明以上に強い印象を与えることができます。


絵コンテ5 対比と並置


  1. リズムと間(ま)の重要性


カット割りには、音楽のような独自のリズムが存在します:

  • 緊張感を高めるための徐々に短くなるカット

  • 落ち着きを表現する長めのカット

  • 意図的な「間」の挿入

  • 音楽や効果音とのシンクロ

これらのリズムは、場面の雰囲気や感情を大きく左右します。例えば、重要な決断の前の「間」を表現するために、登場人物の表情を長めに見せることで、その瞬間の重要性を強調することができます。


絵コンテ6 リズムと間(ま)の重要性


  1. 繰り返しとバリエーション


同じような場面を異なる角度や構図で見せることで、新たな意味を生み出すことができます:

  • 同じ行動を違う視点から見せる

  • 類似のシーンで異なるカット割りを用いる

  • 重要な瞬間を複数の角度から見せる

これにより、視聴者は場面をより深く理解し、新たな発見をすることができます。



絵コンテ7 繰り返しとバリエーション


  1. カット割は規則ではなく選択肢


このように、カット割りには無限のバリエーションと可能性が存在します。これらの技法を理解し、適切に組み合わせることで、より豊かな映像表現が可能になります。ただし、重要なのは、これらの技法は決して「規則」ではなく「選択肢」だということです。それぞれの場面に最も適した表現方法を選択し、物語の本質を最も効果的に伝えることが、カット割りの究極の目的なのです。


【執筆者】

本記事は名古屋を中心とする地域の企業や団体の、BtoBビジネス分野の映像制作を専門に、プロデューサー/シナリオライター歴35年、ディレクター/エディター歴20年のキャリアをもつ株式会社SynAppsの代表が、映像制作を外注しようと考えている企業担当者に参考になるよう、参考情報を提供し、合わせて業界の後進のために、映像制作をビジネスとして営む上での知識や考え方、知っておくべきビジネス常識を綴る「名古屋映像制作研究室」の記事です。

株式会社SynApps 会社概要はこちら → [当社について] [当社の特徴]



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【カット割とはなにか】

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