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映像制作業界における「展示映像」の歴史と今

更新日:11月23日

展示映像制作は、一般的な意味での情報の伝達作業ではなく、訪れる人々に深い学びと感動を与える「体験創造」の中核を担う専門分野です。私たち映像制作者が企業向け映像制作で培ってきたセグメント化されたコミュニケーション設計のスキルは、明確なテーマとターゲットを持つ展示映像制作の基盤として活かされます。

しかし、その真の魅力は、その経験を大きく超えた創作的刺激と、多分野のプロフェッショナルとの深いコラボレーションにあります。



多彩な専門家との協働が生む、創造活動の楽園


展示映像制作の現場では、空間デザイナー、学芸員、インタラクションデザイナー、音響エンジニア、さらには運営技術の専門家といった、異なる分野のスペシャリストたちとの緊密な連携が不可欠です。この協働プロセスこそが、映像制作者の創作の地平を劇的に広げます。


空間デザイナーとの対話

映像が物理空間の中でどのように知覚され、空間全体と響き合うかを深く探求します。


学芸員との協働

学術的な正確性を確保しつつ、専門知識を誰もが分かりやすい表現へと昇華させるバランスを追求します。


インタラクションデザイナーと

映像を一方的な提示から、来場者との対話を生むインタラクティブなメディアへと発展させる挑戦に取り組みます。


異なる専門分野の思考法に触れることで、映像制作者自身の創作アプローチが刷新され、より豊かで多層的な表現力を獲得できるのです。

そして何よりも、完成した作品が実際に多くの来場者に長期間にわたって体験され、その教育的・文化的価値が持続的に社会に提供されるという事実は、映像制作者に深い職業的な満足感とやりがいをもたらす重要な魅力となっています。



🚀 技術革新とともに進化してきた展示映像制作の歴史


日本の展示映像制作業務は、博物館、美術館、科学館、企業ショールームといった文化・教育施設における情報伝達と体験価値創造の中核を担い、常に技術革新とともありました。


黎明期からデジタル成熟期へ


1970年の大阪万国博覧会を本格的な幕開けとして、展示映像は16mmフィルムやマルチスライドシステムを活用した大規模なプロジェクトとして位置づけられました。続く1980年代には、VTR技術の普及により制作コストが低下し、「博物館映像の民主化」が進展します。

特に、1985年のつくば科学博覧会では、ハイビジョン技術やコンピュータグラフィックスの本格導入、インタラクティブシステムの実験が行われ、業界の技術水準を大きく押し上げました。

1990年代後半からのデジタル化初期には、ノンリニア編集システムと3DCGテクノロジーの活用により制作手法が根本的に変化し、複雑な科学的可視化や歴史復元映像の制作が可能になりました。2000年代以降のデジタル成熟期には、Full HDの標準化、IP配信システムの導入に加え、2008年頃から注目されたプロジェクションマッピング技術が、展示空間全体をメディア化し、来場者の没入感を劇的に向上させました。


名古屋を起点とした地域の実績


この技術発展の歴史において、名古屋市とその周辺地域は重要なマイルストーンを築いてきました。1989年の世界デザイン博覧会、そして2005年の愛知万博は、この地域の映像制作技術が飛躍的に発展する契機となり、最新の映像技術が多数の展示に活用されました。弊社のプロデューサーも、これらの大規模プロジェクトで培った常設展示映像制作の実績を豊富に有しております。


 Brother and sister are amazed by a hologram of a Roman sculpture on display at a museum


🎯 展示映像の未来と、今求められる高度な専門性


近年のデジタル技術の急速な進歩により、展示映像は単なる情報提示手段から、来場者との双方向的なコミュニケーションツールへと進化しています。4K/8K、HDR技術、進化するプロジェクションマッピング、そして多様なセンサー技術を活用したインタラクティブシステムは、かつてない没入感とパーソナライズされた体験を提供可能にしています。



長尺の「物語」を紡ぐ高度な技能


空前の動画ブームにある一方で、展示映像制作を志す映像制作者が枯渇しつつあるという危機感があります。その背景には、展示映像制作に特有の高度な技能が求められるためです。

展示映像制作では、ショート動画とは異次元の長尺映像の中で、観客を段階的に理解へと導く長期的なシナリオ構築力が不可欠です。複雑な概念や歴史的文脈を論理的に展開し、観客の理解度に応じて情報を提示する技能が求められます。


さらに、表面的な情報だけでなく、メタファーやアナロジーを用いて抽象概念を具体化し、観客が深い理解に到達できるよう構成する多層的な意味構築が重要となります。学術的正確性を保ちながら、視覚的に分かりやすく伝える、教育的配慮に基づいた映像設計こそが、展示映像制作者に求められる専門性です。


株式会社SynAppsの提供価値


弊社は、長年にわたり培ってきたこれらの専門的技能と、空間・学術・技術のプロフェッショナルとの協働実績に基づき、単なる映像制作に留まらない、深い学習と心に残る感動を両立する展示体験をご提供いたします。


博物館・美術館の常設展示更新企業ミュージアムのブランディング強化科学館の体験型展示など、幅広いクライアント様の課題に対し、技術の進化を活かしつつ、本質的な価値を伝える「物語」を設計いたします。


展示映像、イベント映像をお考えの皆様へ:名古屋で映像制作会社をお探しなら、ぜひ弊社のプロデューサーにご相談ください。貴社のメッセージを、来場者の心に深く刻む体験へと変えるお手伝いをいたします。



【弊社プロデューサー常設展示映像実績】

東邦ガス・ガスエネルギー館展示映像「エネルギー地球大紀行」

Basel World (シチズン時計)

The Optical Fiber Communication Conference and Exhibition(古川電気工業)

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【この記事について】

本記事は、名古屋の映像制作会社・株式会社SynAppsが執筆しました。私たちは「名古屋映像制作研究室」を主宰し、さまざまな業界の知見を収集・分析しながら、企業や団体が抱える課題を映像制作の力で支援することを目指しています。BtoB領域における映像には、その産業分野ごとの深い理解が不可欠であり、その知識と経験をもとに制作に取り組んでいます。


【執筆者プロフィール】

株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。

株式会社SynApps 会社概要はこちら → [当社について]  [当社の特徴]  [当社の実績]


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