動画制作のジェネレーションギャップ
- Tomizo Jinno

- 9月1日
- 読了時間: 3分
更新日:10月14日
1. 音楽一曲で済ませる動画の氾濫
YouTubeを眺めていると、音楽1曲に映像を合わせただけの動画が数多くあります。イントロもエンディングもなく、ただ曲のリズムに合わせて画を切り替えるだけ。そこには起承転結もなく、深い意味も込められていない。映像制作者の立場からすれば「極めてイージーな仕事」に見えるものです。
しかし、こうしたシンプルな動画を好む視聴者が確実に増えているのも事実です。
2. 「意味」を嫌う若い世代
私たちの世代にとって、映像とは意図を伝える手段であり、ストーリーを通じて視聴者にメッセージを届けるのが当然でした。ところが若い世代は「意図を込めるのは嘘くさい」と感じがちです。過剰な演出や説教臭いメッセージを敏感に嫌い、そうした空気を察するとすぐに視聴離脱します。
3. それでも制作者は意図を忍ばせる
だからといって、私たち制作者は「ただ流すだけ」の動画を作るわけにはいきません。表面上は「意図を込めていませんよ」と見せつつ、実はしっかりメッセージを演出する。結果、コメント欄には狙い通りの感想が並びます。ただし、視聴者も見慣れていくうちに制作者の仕掛けを見抜き、映像リテラシーを高めていきます。単なる「音楽一曲のカッコいい動画」では、いずれ通用しなくなるのです。
4. 「ブランドビデオ」の定義のすれ違い
こうした背景の中で、ある案件のやりとりで驚いたことがありました。営業担当者が「ブランディングのための動画を作りたい」と言うのですが、実際に聞くと「商品の使い方紹介」を指していました。私たちの世代が考える「ブランドビデオ」とは、商品のコンセプトや価値を映像デザインで表現し、イメージを高めるものです。ところが若い世代にとっては「取扱説明動画」すらブランドの形成につながるというのです。

5. 嘘くさいブランドより、リアルな姿勢
若い世代は、企業が自己申告で「うちは高級ブランドです」とアピールする映像を不信感で見ています。中身が伴わないのに派手な演出をすれば「怪しい会社」と受け止められるのがオチです。むしろ、愚直にものづくりに取り組む姿勢や、消費者に誠実に向き合う様子をリアルに映す動画こそがブランド力を高める。だからこそ「取扱説明動画」でさえ、真摯な企業姿勢を映す限り「立派なブランドビデオ」になるのです。
6. 映像制作に求められるもの
動画があふれる現代において、視聴者は自分が本当に見たいものしか見ません。だから制作者は、直球のメッセージだけでなく、カーブや変化球、さらには「投げたフリ」まで駆使して関心を引きつけなければならない。そのうえで求められるのは、嘘くささのない「リアルな誠実さ」と、さりげなく意図を込める演出力です。
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。(2025年10月現在)




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