音効
映像・舞台作品における音響全般を担当する専門職の名称です。効果音の制作・収録・配置、既成曲や劇中音楽の選曲、音響卓を操作しての音量バランス調整や音響演出を行います。スタジオでのポストプロダクション作業だけでなく、舞台やイベントでは現場での音響機材の設営・リアルタイム操作も担当し、作品全体の音響設計を通じて聴覚的な表現を創り上げる仕事です。
具体的には以下の作業を担当する仕事です。
1. 効果音の制作・演出
生活音(足音、ドア、食器、衣擦れなど)
アクション音(打撃、衝突、転倒など)
自然音(風、雨、波、雷など)
環境音(街の音、森の音、室内の空気感など)
特殊な効果音(SF、アニメ、特撮など)
2. BGM(音楽)の演出
3. 音の収録・制作方法
実音の録音
フォーリー録音(動作に合わせた音作り)
音の加工・編集
ライブラリー音源の活用
オリジナル効果音の制作
4. ポストプロダクション作業
映像との同期作業
音量バランスの調整
効果音と音楽の調和
全体的な音の流れの構築
映像制作会社としての視点
現在の映像制作の現場では、音効の仕事は「MA」との境界線がより曖昧になり、デジタル技術を駆使した高度なサウンドデザインへと変化しています。
具体的には、以下のような変化が起きています。
1. 「音効」から「サウンドデザイナー」への呼称の変化
かつては「選曲」や「効果」と細かく分業されていましたが、現在は一人で音の設計から合成までを統括する「サウンドデザイナー」という役割が主流になりつつあります。単に音を置くだけでなく、作品の世界観を音で構築するクリエイティブな側面がより強調されるようになりました。
2. ノンリニア編集ソフトでの「仮音」の高度化
かつてはオフライン編集(仮編集)の段階では音は最小限でしたが、現在は映像編集者が編集ソフト(Premiere ProやFinal Cut Proなど)上で、かなり完成度に近い効果音やBGMを自ら配置します。そのため、音効のプロには「編集者が作った仮音を、さらに超えるクオリティと音響心理学的なアプローチ」が求められるようになっています。
3. デジタルツールによる音作りの進化
重い機材や大量のCDライブラリを持ち歩くスタイルから、PC一台(DAW:デジタル・オーディオ・ワークステーション)で完結するスタイルへ移行しました。
シンセサイズ: 現実にはない音をゼロから合成する。
プラグインの活用: 音にリバーブ(残響)をかけたり、周波数をいじって「壁越しに聞こえる音」にするなどの加工が瞬時に可能。
AIの活用: ノイズ除去や、環境音の自動生成など、作業効率が飛躍的に向上しています。
4. 没入型音響(イマーシブ・オーディオ)への対応
YouTubeや配信プラットフォームの普及により、ステレオ(2ch)だけでなく、5.1chサラウンドや、ヘッドフォンで立体的に聞こえる「バイノーラル録音」などの需要も増えています。視聴者の耳元でささやくような音や、後ろから近づいてくる足音など、空間そのものをデザインするスキルが不可欠となっています。
現代の音効に求められる役割
視聴者の感情を揺さぶる「演出意図の具現化」と、最新のデジタルデバイスで聴いた際にも心地よく聞こえる「音響工学的な最適化」の両立が求められるプロフェッショナルへと進化しています。
執筆者・神野富三
株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
大学時代のラジオ番組の構成演出に始まり、映像ディレクター・プロデューサーとして、40年以上の業界経験を基に映像業界に関する知見を発信しています。
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関連用語など
1. キュー出し
台本や進行表に基づいて、決められたタイミングで効果音を出す作業です。生放送やスタジオ収録では、ディレクターの指示に従い、瞬時に適切な効果音を選択して送出します。事前に用意された効果音ファイルやサンプラーを使用し、番組の展開に合わせてリアルタイムで効果音を付加していきます。特にバラエティ番組では、出演者の反応や展開に合わせた臨機応変な対応が求められます。
2. フォーリー
足音や物音など、人工的に効果音を作り出す作業です。様々な素材や道具を使って、映像に合わせてリアルタイムで音を作ります。ドラマや映画では、より自然で生々しい音を必要とする場合に重要となります。衣擦れ、足音、ドアの開閉音など、日常的な音から特殊な効果音まで、幅広い音作りの技術が必要とされます。
3. サンプリング
実際の音を録音して効果音素材として保存する作業です。自然音、機械音、環境音など、あらゆる音を収録し、データベース化します。収録した音は編集・加工され、実際の使用に適した形に整えられます。良質な効果音ライブラリを構築・維持することは、音効さんの重要な仕事の一つです。
4. PAD(パッド)
番組の雰囲気作りに使用する背景音やアンビエンス音を指します。施設の環境音、街の喧騒、自然音など、シーンの空気感を作り出すために使用されます。複数の音源を組み合わせることで、より自然で豊かな音響空間を作り出します。場面の転換や展開に合わせて、適切なPADを選択することが重要です。
5. サウンドデザイン
映像の音響効果を設計する作業です。単なる効果音の付加だけでなく、音響効果全体を通じて番組の世界観や演出意図を表現します。効果音の選択、音量バランス、空間表現など、総合的な音響演出を行います。特に映画やドラマでは、視聴者の臨場感を高める重要な要素として位置づけられています。

