動画・映像制作用語
【ワイプ】
wipe
ワイプとは、映像編集やテレビ放送において、A画面に対してB画面がカーテンを開けるように現れるトランジションや、A画面に重なっているクロップ(不要な部分をトリミング)したB画面のことです。
ワイプ出しは原則的に、A画面もB画面も画面位置自体は動かず、画面を切り取る輪郭線が連続的に動きます。A画面がB画面を押し出すのは「プッシュ」、B画面が引き戸のようによう現れる場合は「ムーブイン」です。
また、バラエティ番組によくある、司会者やゲストの顔を片隅に丸く映すのは「丸ワイプ」です。
つまり「ワイプ」とは、A画面に対して、クロップ(画面を任意の図形に切り取る)範囲が連続的に変化するB画面を重ねること・・というような意味になります。
A画面の中に縮小したB画面がまるまる重なっている場合は「ピクチャーインピクチャー」です。
また、ワイプ出しされるB画面の輪郭がグラデーション状の場合は、オーバーラップないしはディゾルブと言った方がいいかも知れません。
リニア(アナログ)編集では、画面の位置を任意に移動したり、拡大縮小することが難しかったため、ワイプは、いかにも「テレビっぽい」効果でしたので重宝されましたが、現在ではこれを多用すると、少々時代がかった演出になります。
【関連用語】
1. ディゾルブ(Dissolve)
2つの映像を徐々に切り替えていく視覚効果です。ワイプと同様にトランジション効果の一つとして広く使用されています。前のショットがフェードアウトしながら、次のショットがフェードインする形で映像が重なり合います。時間の経過や場面転換、心理的な変化を表現する際によく用いられます。ディゾルブの長さは通常0.5秒から2秒程度で、効果の強さや速度を調整することで、異なる印象を与えることができます。特に夢のシーンへの移行や回想シーンの開始、感情的な場面転換などで効果的です。また、複数のディゾルブを組み合わせることで、モンタージュシーケンスなどの特殊な演出も可能です。
2. スティンガー(Stinger)
グラフィックアニメーションを使用して場面転換を行うトランジション効果です。ワイプよりも動的で印象的な切り替えを実現できます。例えば、画面全体を覆うようなグラフィック要素が流れ込み、その後に新しいシーンが現れるような演出が可能です。特にスポーツ中継やバラエティ番組のコーナー切り替えなどで多用されます。番組のブランディングや視覚的アイデンティティを強化する効果もあり、独自のスティンガーデザインを持つ番組も多くあります。アニメーションの動きや速度、サウンドエフェクトとの組み合わせにより、様々な演出効果を生み出すことができます。
3. プッシュ(Push)
一方の映像が他方の映像を押し出すように切り替わるトランジション効果です。ワイプと似ていますが、より機械的で直接的な印象を与えます。方向は上下左右や斜めなど自由に設定でき、速度調整も可能です。ニュース番組での項目切り替えやスポーツ中継でのリプレイ表示など、明確な場面転換を示す際によく使用されます。また、複数の映像を同時に表示する場合のレイアウト変更にも適しています。エッジのぼかしや色付けなどの効果を加えることで、よりスタイリッシュな演出も可能です。
4. クロマキー(Chroma Key)
特定の色(通常は青または緑)を透過させて別の映像と合成する技術です。ワイプとは異なり、形状を自由に設定できる特徴があります。天気予報の背景合成や、バーチャルスタジオでの撮影など、幅広い用途で使用されています。最新のクロマキー技術では、髪の毛や半透明の物体など、細かいディテールも自然に合成することができます。照明条件やカメラ設定、背景スクリーンの品質など、様々な要素が合成品質に影響を与えるため、適切なセッティングが重要です。
5. ピクチャーインピクチャー(Picture in Picture)
画面内に小窓を設けて別の映像を表示する技術です。ワイプの応用として、主映像を維持しながら補足映像を表示する際に使用されます。スポーツ中継での選手のクローズアップ、ニュース番組での中継映像表示、バラエティ番組でのリアクションショットなど、様々な場面で活用されています。小窓のサイズ、位置、枠デザインなどをダイナミックに変更することで、視聴者の注目を効果的にコントロールすることができます。また、複数の小窓を表示することで、同時に複数の情報を伝えることも可能です。