動画の尺はなぜ3分までと言われるの?
- Tomizo Jinno

- 9月6日
- 読了時間: 5分
更新日:10月25日
「動画はせいぜい3分まで」。
映像制作に関してよく耳にする言葉です。確かに、YouTubeやSNSなどで偶然目にする動画は、数分を超えると離脱率が高くなる傾向があります。けれども、企業が営業ツールやPR映像として動画を活用する際に、本当に「3分まで」でなければならないのでしょうか。
実際には、動画の尺は一律に決められるものではなく、視聴者の動機や利用シーンによって最適解が変わります。ここでは、営業ツールとしての動画活用を念頭に、その考え方を整理してみます。
WEBサイトに掲載する動画
偶然の訪問者と目的を持った訪問者
ウェブサイトの動画視聴者には、2種類のタイプが存在します。ひとつは、YouTubeのおすすめや検索から偶然訪れた人。

もうひとつは、明確な目的を持って情報を探しに来た人です。

前者には短尺でシンプルな動画が効果的ですが、後者は興味を持つ限り長尺でも視聴を続けます。むしろ「もう少し詳しく知りたい」と思う人にとっては、十分な情報を提供してくれる動画の方が価値があります。
☝️長さよりも大切なこと
尺の長短よりも重要なのは、コンテンツの質と関連性です。最後まで視聴してくれた人は、そのテーマに強い関心を持つ見込み顧客であり、離脱を恐れて表面的な情報にとどめるより、しっかりと伝えることが成果につながります。
対面シーンで使用する動画
「対面」といっても、その場面は多様です。
展示会
通りすがりの来場者も多いため、短尺で注目を集める内容が有効。繰り返し再生されても飽きにくい構成が求められます。

発表会やセミナー
参加者は時間を確保して来ているため、比較的長尺でも受け入れられます。詳しい情報提供や、後の質疑応答を見据えた映像が効果的です。

個別訪問
相手の時間的制約を考慮し、要点を端的に伝える必要があります。必要に応じて一部だけを見せられるような柔軟な設計も重要です。

☝️臨機応変が大事
対面での利用はウェブとは異なり、視聴環境や対話との組み合わせを考慮する必要があります。そのため、複数バージョンの動画を準備しておくのも有効です。
「動画は3分まで」という常識を疑う
「長い動画は見てもらえない」と言われる背景には、YouTubeやSNSでの視聴習慣があります。しかし営業ツールやPR映像は、それとはまったく異なる文脈で使われます。
展示会やセミナーに集まる人々は、すでにその分野に関心を持ち、情報を求めています。そうした人々に、短くまとめただけの動画で満足してもらえるでしょうか。むしろ、丁寧に情報を伝えることで、企業や製品への信頼が深まります。
動画の尺を短く抑えることが目的化してしまうと、本来の訴求力を損なう恐れがあります。

ターゲットに「目を留めてもらう 」vs.「情報を届ける」
この二つは、最適な媒体、最適な視聴環境、最適な映像の作り方、これらが全く異なります。YouTubeに15秒のテレビCMのようなコンテンツを掲載して、どれだけキーワードを工夫したところで、ターゲットがそれを視聴する機会はテレビとは桁違いに少なく、うまく視聴したとしても、15秒たった一回の視聴で、どんなメッセージを受け取ることができるでしょう。
この場合YouTubeに広告費を支払って広告として出稿して、再生数を稼ぎ、繰り返し見てもらうしかありません。けれど、視聴者は期待するほどセグメントされているわけではありません。目に見えるほどの効果を得るには、マルチメディア戦略で結局大きな広告予算を掛けるしかありません。
15秒の映像を1,000人の通りすがりの人が視て、その中にたまたま10人のターゲットがいた時に、視聴した15秒のコンテンツによって、10人はどんな行動をとるでしょう?
一方、10分の映像を、そのターゲットと思われる人10人に視せたとして、そのうち3人が最後まで見て実際に購入に至ったとしたら・・・。
このふたつの戦略はどちらが正解でしょうか。
まとめ
営業ツールとしての動画は、「何分が最適か」という単純な議論では片づけられません。
視聴者の動機
伝えるべきメッセージ
利用シーンや環境
視聴後に期待する行動
これらを踏まえて企画することが何より大切です。
もし制作会社が「動画は3分までです」と言い切るなら、それは「私はそれ以上の尺で視聴者を惹きつける自信がありません」という意味かもしれません。
もし、あなたご自身が「3分以上視聴できる動画なんて見たことない」とお思いなら、それらの動画はあなたをターゲットとしていなかったか、実際につまらない動画だったということです。
断言します。ターゲットに刺さる動画は、ちゃんと企画制作すれば、必ず最後まで視てもらえます。動画の尺、長さを恐れる必要はありません。大切なのは、目的と状況に応じて最適なシナリオを書き、画を描くことです。
2025.9.6改稿
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【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。(2025年10月現在)




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