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PR映像の最適尺は「購買リスク」に比例する|短尺と長尺の正しい使い分け

更新日:5 日前

1. PR映像の尺は「購買リスク」に比例する


かつて、PR映像における尺の基準は10分以上が当たり前でした。企業VPドキュメンタリーがその代表例です。これらの映像は、企業の歴史、製品の技術的詳細、事業の社会貢献性といった複雑で深遠な情報を、時間をかけて伝えることを目的としていました。


しかし、SNSプラットフォームの普及と「動画マーケティング」の定着、そして視聴者の集中力低下に伴い、「短尺至上主義」が業界を席巻しました。現在は30秒、さらには15秒といった短い映像で、いかに視聴者の注意を引くかが最優先の課題となっています。


私は、数年前に博報堂のウェブサイトで「1分以上の長尺動画を“魅せ切る”! エキスパート集団『Minutes Movie™』がミドルファネルの課題を解決」という記事を目にして仰天した記憶があります。

「1分が長尺!?」

私の常識では、たとえ動画マーケティングのためのPR映像であっても、「長尺」とは最低でも5分以上という感覚でした。


博報堂が定義する「ミドルファネル」とは、すでにブランドや製品に一定の関心を持っている層を指します。そうした層に向けた動画であっても、60秒という尺を最後まで見てもらうことが、専門的なスキルを要するほどの困難なタスクとなっていることに暗澹たる気持ちを抱くのは私だけでしょうか。

PR映像がかつて持っていた「物語を丁寧に紡ぐ」「情報を論理的に構成する」といった機能が、いかにして失われつつあるかを示しています。1分という尺でさえ、視聴者を飽きさせずに引きつけるためには、高度な情報設計と演出戦略が不可欠だと言うのです。


映像の尺を測る男性


2. PR映像の尺の法則


そもそも「動画マーケティング」という手法が、すべてのビジネスに有効なのでしょうか。よく考えてみると、動画マーケティングの核となるコンテンツ、PR映像の尺には、「購買リスク」に比例するという明確な法則があることに気づきます。



3. 低リスク購買と短尺動画


コンビニでジュースを買う場合を考えてみましょう。私たちは、喉の渇きという単純な欲求に基づき、パッケージのデザインやわずか数秒のSNS広告で即座に判断を下します。このとき、求められる情報は最小限です。


瞬発力とインパクト

「美味しそう」「飲んでみたい」という感覚的な訴求が重要です。


少ない情報量

商品名やキャッチコピー、イメージ映像だけで十分な効果を生みます。


低コストのリスク

失敗しても、失うのはわずかな金額だけです。


このような低リスク購買においては、ショート動画が最も効果的なツールとなります。視聴者の「暇つぶし」や「エンターテイメント」の時間を借りて、瞬時に興味を引きつけ、購買へと促します。



4. 高リスク購買と長尺動画


一方、収益物件の購入や自社ビルの建設、情報システムの導入といった、企業活動として高額な費用と長期的なコミットメントを伴うビジネスは、全く異なる意思決定プロセスをたどります。

これらの高リスク購買において、視聴者はPR映像を単なるエンターテイメントとして消費しません。彼らは、事業の将来を左右する重要な決断を下すために、「判断材料」を求めています。そのためには、以下の要素を網羅した詳細な情報が不可欠です。


信頼性の構築

企業の歴史、技術力、過去の実績、専門家の証言などを通じて、信頼性と権威を確立する必要があります。


課題解決の提示

単なる機能紹介ではなく、視聴者が抱える具体的な問題をどのように解決できるのかを論理的に説明し、説得力を持たせます。


詳細な情報提供

サービス内容、技術的スペック、費用対効果といった、決断に不可欠な具体的な情報を丁寧に伝える必要があります。


共感と安心感

実際にサービスを導入した顧客の声や、そこで働く人々の情熱を伝えることで、視聴者は安心感を覚え、感情的なつながりを感じます。


これらの情報をわずか数秒や数十秒の動画で網羅することは不可能です。高額な対価を支払う視聴者の「検討深度」に応えるためには、10分を超えるような長尺動画が必要となります。長尺は、単に情報量を増やすためだけでなく、視聴者にじっくりと検討し、納得してもらうための「時間」を提供するために存在するのです。



5. PR映像の尺は「二極化」が正解


PR映像の尺は短ければ良いのではなく、「二極化」が正解です。これは「掴む映像は短く」「落とす映像は長く」という戦略です。


「超短尺化」の極

TikTokやYouTubeショートに代表される、数秒から数十秒の超短尺動画です。これは主に、認知度向上や衝動的な購買を促すための広告手法として発展しました。


「長尺化」の極

YouTubeや企業サイト、対面の説明会などでは、10分、20分を超えるドキュメンタリー形式の映像が増えています。これは、視聴者がすでに商品やサービスに一定の関心を持っていることを前提に、深い知識や信頼性を提供し、高額な購買やビジネス上の意思決定を支援することを目的としています。


PR映像がすべての視聴者に同じ情報を伝えるのではなく、目的やターゲットの検討深度に合わせて、最適な尺と表現を使い分ける時代です。PR映像は、一律に短くするのではなく、目的に応じて適切な尺を使い分けることで、キャッチングとクロージングの両面に役立てることができます。



6. 長尺映像クリエイター消滅の危機


PR動画の役割は、単にブランドを宣伝することだけではありません。購買リスクの大きさに応じて、「興味喚起」と「意思決定支援」のどちらに比重を置くべきかを判断する必要があります。

短尺動画は前者、長尺動画は後者の役割を担います。しかし、短尺動画の台頭により、長尺を制作できるクリエイターが減少する危機に瀕しています。


「短尺至上主義」の浸透による長尺制作者の消滅

「視聴者の集中力は短い」という考え方が業界全体に浸透し、多くのクライアントが「3分以内で」という要望を持つようになりました。結果、起承転結を丁寧に描き、視聴者の思考や感情に深く訴えかける長尺の構成を専門とするクリエイターの活躍の場と育成機会が減少しています。


クリエイターのスキルセットの変化

現代の映像クリエイターは、短い時間でインパクトを与える表現や、SNSのアルゴリズムを理解した企画・構成能力が求められる傾向にあります。一方、長尺映像に必要な、企業の理念や技術、ストーリーを論理的かつ感情的に伝えるための「情報設計」能力を磨く機会が限られています。


コストと制作期間の問題

長尺のPR映像は、多くの時間とコストがかかります。コスト削減やスピーディーな納品を求めるクライアントが増え、長尺制作の経験が少ないクリエイターが増えています。これは、若いクリエイターが長尺の案件を敬遠したり、経験不足から十分なクオリティを提供できなかったりする一因となっています。


映像制作の「ジャーナリズム性」の希薄化

長尺のPR映像の本質はジャーナリズムに近いものです。しかし、多くのクリエイターが「バズる」ことや「エンゲージメント」を最優先にするようになった結果、対象を深く掘り下げ、本質的な価値を見つけ出すというジャーナリズム的な姿勢が希薄になっています。


これらの要因が重なり、長尺のPR映像を制作できる専門家が少なくなっています。しかし、企業が本当に伝えたい深いメッセージや、ブランドの信頼性を構築するためには、長尺のPR映像が持つ力は依然として非常に重要です。



7. 長尺企業PR映像を制作する私たち株式会社SynApps


長尺映像を制作できるクリエイターが減りつつある現代において、私たち株式会社SynAppsは、その希少な専門性を持つ映像制作会社として活動しています。

私たちは単に映像を制作するだけでなく、クライアントが抱える課題を深く理解することから始めます。短尺動画では伝えきれない、企業の歴史、技術力、そしてそこで働く人々の情熱といった、物語の本質を掘り起こすことを得意としています。このアプローチは、私たちが最も大切にしている「ジャーナリズム」的な姿勢そのものです。


私たちが手がける映像は、単なるプロモーションではありません。丁寧な取材と緻密な情報設計に基づき、視聴者が時間をかけてでも見たくなるような、説得力のある長尺映像を制作します。私たちのゴールは、企業の信頼性を高め、視聴者に深い共感を呼び起こす「ドキュメンタリー」を創り出すことです。


高額な取引を伴うビジネスPR、ブランドの哲学を伝える採用ブランディング、技術の粋を解説する製品紹介など、視聴者の「検討深度」に応える映像が必要な場面で、私たちは真価を発揮します。名古屋という地で、企業の本質的な価値を伝える私たちの仕事は、まさに現代の「長尺映像クリエイター」の存在意義を証明していると自負しています。


【執筆者】

名古屋を中心とする地域の企業や団体の、BtoBビジネス分野の映像制作を専門に、プロデューサー/シナリオライター歴35年、ディレクター/エディター歴20年の株式会社SynAppsの代表が、映像制作を外注しようと考えている、様々なビジネスフィールドの企業担当者への情報提供として書いています。

株式会社SynApps 会社概要はこちら → [当社について] [当社の特徴]


【当社代表長尺PR映像制作例】

トヨタ自動車生産関係職採用動画「就職なんてしたくない!?」 31分

四日市海運グループ 採用動画「ONE TEAM 今を支え未来を創る」 13分41秒

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