ショート動画
主にスマートフォンでの視聴を想定した、数十秒から数分程度の短い尺で制作された動画コンテンツを指します。
従来の動画コンテンツと比較して、短い時間で情報を伝達することに特化しており、視聴者は隙間時間を利用して手軽に視聴できる点が特徴です。TikTokを筆頭に、X(Twitter)、YouTubeショート、Instagramリール、Facebookリールなど、多くのSNSプラットフォームで採用されており、若年層を中心に世界中で急速に普及しています。
その特徴として、視覚的な訴求力が高く、音楽やエフェクトなどを駆使して、短時間で視聴者の注意を引きつけることができます。
一般的には、スマホでの視聴を前提とした「縦型動画」として認識されていますが、正方形、横型であってもショート動画に該当します。
1. マーケティング効果抜群の拡散力
SNSとの連携により、拡散性が高く、バイラル効果が期待できるため、マーケティングや情報発信の手段として利用されています。収益目当ての投稿者も多数です。
2. 自由度が高いコンテンツ
コンテンツの構成手法は、短時間であるために文脈をもったシナリオはなく、書籍に例えると、小説の「ショートショート」、随筆の「短いエッセイ」、芸能に例えると「一発芸」「ドッキリ」、アートに例えると「グラビア」といったところです。したがって、ショート動画のクリエーターには、テレビCMのように短時間で視聴者の興味を惹き、インパクトを残す創作が求められます。

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。
映像制作会社としての視点
映像のプロ(特に映画やCMなどの伝統的な映像制作に携わってきた層)が縦型動画(ショート動画)を嫌う理由は、単なる「食わず嫌い」ではなく、長年積み上げてきた「映像の文法」が根底から覆されることへの抵抗感があるからです。
1. 「パノラマ」から「のぞき窓」への退化
人間は目が横に2つ並んでいるため、視界は横長(パノラマ)です。映像史は、この人間の視界をいかに再現し、没入させるかの歴史でした。
プロの視点
「横型は『世界』を描けるが、縦型は『個』しか描けない」
嫌う理由
背景や空間の広がり(ルック)を活かした表現ができず、情報が極端に制限されることに「窮屈さ」を感じるためです。
2. 「構図(コンポジション)」の崩壊
伝統的な映像制作では画面内に構図を設け、視線を左右に誘導して物語を伝えます。
プロの視点
「縦型は情報の置き場所が上下しかない」
嫌う理由
画面の大部分が「空」や「地面」になりやすく、バリエーションある構図を作るのが極めて困難です。縦型は「映像」ではなく「情報の断片」に見えてしまうのです。
3. 「時間」の扱いの軽視
プロの映像制作者は、0.1秒単位の間や余韻を調整して作り込みます。
プロの視点
「ショート動画は、余韻を『無駄』として切り捨てる」
嫌う理由
スワイプ一つで次へ飛ばされる環境では、じっくりと感情を積み上げる演出が機能しません。丹精込めて作った「間」を「退屈」と切り捨てられる文化に、虚しさを感じるのです。
4. 「強制的な視線」への反発
横型映像は、視聴者が画面の中を自由に視線移動させる余裕があります。しかし、縦型はスマホ画面いっぱいに被写体が迫り、視線を強制的に一点(主に顔)に固定させます。
プロの視点
「これは鑑賞ではなく、刺激の注入だ」
嫌う理由
映像が「表現」ではなく、アルゴリズムに最適化された「消費される刺激物(ドラッグ)」になっている現状に、クリエイティビティの死を感じるプロが多いのです。
プロが縦型を嫌うのは、彼らが大切にしている「映像の深み」が、スマホの細長い枠に収まりきらないからだと言えます。しかし最近では、この「制約」を逆手に取った新しい表現に挑戦する若手も増えており、「新しい文法の開拓」の芽も生まれてきているようです。
ただし、縦型画面はあくまで従来の横型とは異なるメディアである、との認識は私も譲る気はありません。
