動画・映像制作用語
【VP】
vp
「VP(ビデオパッケージ)」とは、インターネットがない時代に、テレビや映画館などで公開する目的を持たないビデオコンテンツのことを言いました。
昭和中期、映画館は娯楽の殿堂、テレビは憧れのスターが輝く特別な世界でした。映画やテレビ番組の制作は、高額な設備と専門技術を要する「特別な領域」であり、一般の人々にとっては手の届かない存在でした。
しかし、1970年代、放送局系のプロダクションに加え、独立系プロダクションが台頭し始めます。一方、映画制作会社は勢いを失い始めました。この時期、放送業界では、小型ハンディタイプの放送用ビデオカメラとポータブルなU-matic VTRを組み合わせた「ENG」という撮影スタイルが確立されます。比較的安価なU-matic編集機器は、従来、巨額の設備投資が必要だった番組制作を独立系プロダクションでも可能にしました。
この技術革新により、フィルム映画制作会社が副業的に手がけていた建設記録映画や行政広報映画は、ビデオ制作へと移行します。同時に、テレビ番組の下請けプロダクションは、新たな収入源として、企業の広報PRを目的とした非放送コンテンツ、すなわち「VP(ビデオパッケージ)制作」に着目しました。こうして、映像制作業界に新たなビジネスモデルが誕生したのです。
それまで雲の上の存在だった、垢抜けた俳優や歌手、あるいは連続ドラマを見ていたテレビジョンから、自分の会社や商品の映像が流れてくるのですから、映像の出来不出来はともかく、それだけで発注者は大満足でした。
納品形態は、業務用(展示会や博物館など)がU-matic、VHS規格が普及するとVHSテープが定着しました。VPジャンルのひとつとして、VHSテープにコンテンツ(鉄道ビデオなどの趣味やハウツーもの)を録画して市販する「セルビデオ」に力を入れたプロダクションもありました。
デジタル化によるDVDの登場、そしてインターネットの普及に伴い、納品形態はDVDからWeb動画ファイルへと変遷し、「VP」という言葉は、昭和世代の業界人が懐かしむ用語となりました。
【関連用語】
1. PV(プロモーションビデオ)
1980-90年代のPVは楽曲のプロモーションビデオのことを指しましたが、現在はプロモーションを目的とした映像作品全般を指します。
2. ENG(Electronic News Gathering)
放送業界で、ニュース取材などで使用される撮影スタイル。小型ビデオカメラとポータブルVTRを組み合わせた機材を使用します。VP制作の技術的な基盤となりました。
3. U-matic
1970年代に普及した業務用ビデオ規格。VP制作において、編集や納品に使用されました。
4. VHS(Video Home System)
家庭用ビデオ規格。VP制作において、民生用向けの納品形態として使用さ
れました。
5. VTR(Video Tape Recorder)
ビデオテープに映像や音声を記録・再生する装置の総称。VP制作において、撮影、編集、納品に不可欠な機器でした。