「構成」が生み出す映像のメッセージ
- Tomizo Jinno

- 2024年7月9日
- 読了時間: 5分
はじめに
現在、動いている映像はすべて「動画」と呼ばれるようになりました。映画もテレビも動画として分類されることに、私たち映像制作業の人間も慣れてしまいました。
同時に私たち映像制作会社から見て、長年培ってきた「映像制作」の手法と、「動画制作」のアプローチには、重要な相違点があることも明確になってきました。映像と動画の制作プロセスや表現手法について、いくつかの違いがあることをご紹介します。

1. 映像制作における「構成」の役割
制作前の設計という考え方
私たち映像制作会社では、制作に入る前に必ず構成を作成し、構成をつくりシナリオを書き起こします。これは、クライアントや制作スタッフと目的やビジョンを共有するための大切なプロセスです。建築に例えるなら、施主に設計図やデザイン案をお見せして承認をいただくことと同じように、映像制作においても事前の設計図が必要だと考えています。
構成がもたらす効果
「構成」には、視聴者に対して効果的に情報を伝え、より深く共感していただくための工夫が込められています。古くから語られる「起承転結」のような構成手法は、ストーリーに起伏を生み、視聴者の感情に働きかけることで、メッセージをより長く記憶に残していただくことを目指しています。
構成づくりの意義
構成という工程を経ることで、よりメッセージの純度が高く、効果的な映像をお届けすることができます。また、クライアントと事前に構成を共有し、ご承認をいただいてから制作に入ることで、認識のずれを防ぎ、安心してプロジェクトを進めることができます。
異なるアプローチの存在
一方で、構成案を事前に作成しないアプローチで制作される「動画」が多く見られます。このような場合、情報を順に並べるシンプルな構成となることが多いようです。また、撮影した素材をそのまま時系列で見せることが「誠実」であるという考え方や、構成工程を省くことでコストを抑えるという選択肢もあります。
2. 映像の長さと視聴体験について
視聴離脱と構成の関係
「動画は短いほうが良い」という考え方は、現代のトレンドとして広く認識されています。構成による起伏がない映像では、視覚的なインパクトや音楽で引っ張るしかなく、似た映像が続くと視聴者が離れてしまうのは自然なことかもしれません。
構成の力
私たちは、視聴離脱の原因は長さそのものではなく、構成の有無にあると考えています。テレビのドキュメンタリー番組が1時間、2時間でも視聴されるのは、優れた構成があるからです。逆に、変化に乏しい内容が続く番組は、短くても視聴者の関心を失ってしまいます。
視聴対象に応じた設計
視聴対象が誰なのかによって、最適なアプローチは変わります。一般の方に広く見ていただくことを目指す映像と、特定の業界や関係者に向けたB2B映像では、求められる内容の深さが異なります。
3. B2B映像における私たちの考え方
セグメントされた視聴者へのアプローチ
B2B映像は、一般大衆向けのエンターテインメントとは異なる目的を持っています。特定の業界や関係者の方々は、表層的な情報ではなく、より深い内容を求めています。視聴動機がはっきりしている方々には、その好奇心の流れに沿って、必要な情報をしっかりとお届けすることが大切だと考えています。
適切な情報量
長さを気にするよりも、視聴者が知りたい情報を丁寧に構成し、伝えることを優先しています。優れた構成があれば、視聴者は最後までご覧いただけると信じています。
4. 音楽と映像の関係性
音楽の役割についての考え方
多くの動画で音楽が効果的に使われています。編集に音楽を加えることで、映像に生命力が宿ることは確かです。ただし、私たち映像制作会社では、音楽を単なる装飾としてではなく、映像の構成や情感に寄り添うものとして考えています。
複数の楽曲を用いる意図
私たちの制作する映像では、映像の展開や情感の変化に合わせて、複数の楽曲を使用することがあります。これは、各シーンの持つ雰囲気やメッセージをより効果的に伝えるための手法です。
例えば、数年前に制作した医療機関のPR映像では、患者様の来日から診察、手術、退院までのストーリーを、時系列に沿いながらもドラマチックに構成し、シーンの転換ごとに音楽を変えることで、情感の起伏を表現しました。
あるいは1曲で通す場合でも、イントロ、サビ、コーダなどを映像編集に同期させて、視聴者の感情を揺らします。
グローバルなトレンドとの向き合い方
現在、世界的に「1つの楽曲を通して使用する」スタイルがスタンダードとなっています。良い楽曲の使用には、やはりそれなりの対価が必要だということもありますが、映像に「構成が無い」ことと無関係ではないと考えられます。
私たちは、こうした新しいトレンドを理解しながらも、映像の情感や構成を重視した音楽の使い方に価値があると考えています。
おわりに
映像制作のアプローチには様々な考え方があり、それぞれに価値があります。私たちは、構成を大切にし、視聴者の心に届く映像づくりを追求しています。
クライアントの目的や視聴対象に応じて、最適な手法をご提案します。表層的な情報伝達だけでなく、深い共感や記憶に残るメッセージをお届けしたいとお考えの際は、ぜひ私たちにご相談ください。
構成から丁寧に作り上げる映像制作で、皆様のビジネスやメッセージをより効果的に伝えるお手伝いをさせていただきます。
お問い合わせ映像制作に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。




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