映像制作業界で今、起こっていること
- Tomizo Jinno

- 5月20日
- 読了時間: 3分
更新日:10月9日
スマホ時代の映像制作
21世紀初頭まで、映像を作るには、高価な機材とプロの技術が必要でした。テレビCMや企業のPR動画は、数百万円から数千万円かかることも珍しくありませんでした。
ところが今は、YouTuberや個人クリエイターが、手頃な機材でPR動画をどんどん作っています。誰でも映像を作れる時代になりました。すでに「今更言うな!」と言われることです。
「安すぎる」動画編集の仕事
インターネット上には、動画編集の仕事がたくさん募集されています。しかし、その報酬を見ると驚きます。
1日働いて5,000円〜10,000円
これは、コンビニやファストフード店でアルバイトするより安い金額です。
本当に「誰でもできる仕事」?
こうした仕事の中身を見ると、長回しした撮影素材の要らないところを削除して、テロップを入れるだけというので、この価格で仕方がないかな、とは思います。ソフトの使い方を覚えれば誰でもできます。将来はAIが自動でやってくれるかもしれません。ただし時間だけは掛かるので大変な作業ではあります。
正直に言うと私たちがまる1日編集をしたら、10万円は軽く超えます。もちろん出来上がりは相応に違うはずです。その違いに価値を置かない仕事だからこそ、1日5,000円なのでしょう。
プロの映像制作は技術だけではない
見る人の心を動かすストーリーを考える力
何をどう撮れば伝わるか判断する演出力
限られた時間で最大の効果を生む構成力
これらは、機械には真似できない「人間の創造性」です。
「動画」と「映像」という言葉の使い分け
映像業界の人たちは、意図的に言葉を使い分けることがあります。
「動画」 = YouTubeやSNS用の、比較的シンプルなコンテンツ
「映像」 = 企画・演出・撮影・編集すべてにこだわった作品
この使い分けには、「安易な低価格化に流されたくない」という、プロとしてのプライドが込められているのかもしれません。
これからどうなる?
今は過渡期です。二つの可能性があります:
楽観的シナリオ: 個人クリエイターたちが技術を磨き、短い動画でも深い表現ができるようになる。プロの技術と個人の自由さが融合した、新しい表現が生まれる。
懸念されるシナリオ: 「とにかく安く、速く」という流れが加速し、クリエイティブな仕事の価値がどんどん下がっていく。有能な人材が映像業界に入ってこない。
この話が私たちに投げかけるもの
これは映像業界だけの問題ではありません。
「AI+デジタル時代に、創造的な仕事の価値をどう守るか」
ライター、デザイナー、イラストレーター、音楽家...多くのクリエイターが同じ課題に直面しています。
便利で安いサービスを求める消費者と、創造的な価値を守りたいクリエイターたち。この両者のバランスをどう取るのか。
それが、デジタル+AI社会における大きな問いです。

【関連記事】
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。




コメント