動画・映像制作用語
【圧縮】
compression
「圧縮」とは、デジタルデータのファイルサイズを小さくする技術です。
映像制作に関連するデジタルデータである、画像、音声、映像などは、そのままでは容量が大きくなりやすく、保存や転送に時間やコストがかかります。
そのため、この圧縮技術を用いることで、これらのデータをより扱いやすいサイズに縮小します。
圧縮された動画素材を編集可能な状態に戻すプロセスを「デコード」、編集後のデータを配信や保存に適した形式に圧縮するプロセスを「エンコード」と呼ぶのが一般的です。
圧縮方式には、可逆圧縮と非可逆圧縮の2種類があり、可逆圧縮は、圧縮されたデータを元の状態に完全に復元できる方式で、主にテキストデータやプログラムファイルなどに用いられます。一方、非可逆圧縮は、人間の目や耳には感知しにくい情報を削減することで、より高い圧縮率を実現する方式です。
画像(JPEG)、音声(MP3)、映像(MPEG)などのマルチメディアデータに広く利用されています。
コンテンツデータを効率的に管理し、リソースの抑制、作業スピードアップ、ネットワーク負荷を軽減するためにも、圧縮技術は不可欠な要素と言えますが、圧縮率を高めるほど、ファイルサイズは小さくなりますが、非可逆圧縮の場合は、画質や音質が劣化する可能性があります。そのため、用途や目的に応じて適切な圧縮方式と圧縮率を選択しなくてはなりません。
映像編集プロセスにおける圧縮・解凍による画質の劣化
映像編集のプロセスでは、圧縮と解凍は不可避な処理であり、画質の劣化は常に考慮すべき重要な問題です。特に非可逆圧縮コーデックを使用する場合、圧縮時に情報が削減されるため、解凍後の映像は元の品質から劣化します。この劣化は、圧縮率が高くなるほど顕著になり、ブロックノイズ、モスキートノイズ、色のバンディング、リンギングなどのアーティファクトとして現れます。
最終的な出力ファイルの品質を最大限に保つためには、編集プロセス全体を通して画質劣化を最小限に抑えるための対策が不可欠です。
【関連用語】
1. ブロックノイズ
高圧縮された映像や画像で顕著になる、画面が小さなブロックに分割されたように見えるノイズです。圧縮の際に情報が粗く間引かれることで、隣接するブロックとの境界が目立ち、不自然な格子状の模様として現れます。特に動きの少ない平坦な部分で視認されやすく、映像の滑らかさを損なう要因となります。
2. モスキートノイズ
映像の輪郭部分や動きの激しい箇所に発生しやすい、蚊が飛んでいるような細かいざらつき感のあるノイズです。ブロックノイズと同様に、非可逆圧縮によって情報が失われる際に生じます。特に圧縮率の高いJPEGなどで見られ、映像の鮮明さを低下させ、視聴者に不快感を与えることがあります。
3. 色のバンディング
本来滑らかに階調が変化するはずの色合いが、階段状の帯のように分離して見える現象です。色の情報量が圧縮によって削減されたり、表示できる色数が限られた環境で発生します。空のグラデーションや影の部分などで目立ちやすく、映像の自然な美しさを損ないます。
4. リンギング
映像のシャープなエッジ(輪郭線)の周囲に、波紋のような縞模様が現れるノイズです。JPEG 2000などの特定の圧縮方式や、画像処理におけるフィルタリングの副作用として発生することがあります。輪郭がぼやけたり、不自然な強調感が出たりする原因となります。
5. アーティファクト
デジタルデータ(映像、音声など)の圧縮、処理、伝送などの過程で生じる、本来存在しない歪みやノイズ、視覚的または聴覚的な異常の総称です。ブロックノイズ、モスキートノイズ、色のバンディング、リンギングなどは、映像における代表的なアーティファクトの例と言えます。