動画・映像制作用語辞典 | 名古屋映像制作研究室
コーデック
「コーデック(Codec)」とは、「Coder(符号化装置・符号化プログラム)」と「Decoder(復号化装置・復号化プログラム)」を組み合わせた造語です。主に、動画や音声、画像などのデジタルデータを効率的に扱えるように、圧縮(エンコード)したり、復元(デコード)したりする技術やそのための装置・ソフトウェアを指します。
Codecという用語は、coder/decoder(コーダー/デコーダー)という2つの単語を組み合わせた「かばん語(portmanteau)」です。
Coder(コーダー)
データを特定の規則に従って符号化(エンコード)するもののことです。例えば、映像や音声データを圧縮したり、アナログ信号をデジタル信号に変換したりする役割を持ちます。
Decoder(デコーダー)
符号化されたデータを元の形式に戻す(デコード)するもののことです。例えば、圧縮された映像や音声データを再生可能な形式に展開したり、デジタル信号をアナログ信号に戻したりする役割を持ちます。
つまり、codecは、符号化(エンコード)と復号(デコード)の両方の機能を持つもの、あるいはそれらの機能を実現するソフトウェアやハードウェアを指す言葉として使われています。
当初は、コンピュータが電話回線(アナログ回線)を使ってデータ通信を行う際に、デジタル信号とアナログ信号を相互に変換する装置を指す電気通信分野の用語として使われていました。その後、デジタルメディア技術の発展に伴い、映像や音声データの圧縮・伸張を行うソフトウェアやアルゴリズムを指すことが一般的になりました。
主な役割
デジタルデータのサイズを小さくする
保存容量の節約
転送時間の短縮
2. データの展開(デコード)
圧縮されたデータを再生可能な形式に戻す
視聴や編集が可能な状態にする
代表的なコーデック
動画コーデック
H.264/AVC
H.265/HEVC
VP9
AV1
音声コーデック
コーデックの選択は、用途(配信、保存、編集など)や必要な品質、ファイルサイズの制限などによって決められます。

【関連用語】
1. オールI
すべてのフレームをキーフレーム(Iフレーム)として記録する方式です。フレーム間圧縮を行わないため、高画質で編集時の負荷も低くなります。ProResやDNxHDなど、編集用の中間コーデックで採用されています。データ量は大きくなりますが、フレーム単位での編集が容易で、高品質な映像制作に適しています。放送局での収録やポストプロダクションでの作業において標準的に使用されるコーデックです。
2. ロングGOP
複数のフレームをグループとして圧縮する方式です。キーフレームとその前後のフレームの差分情報で構成され、高い圧縮率を実現します。XAVC、H.264など、多くの配信用コーデックで採用されています。デコード時の処理負荷は高くなりますが、データ量を抑えられる利点があります。特にストリーミング配信で重要な役割を果たしています。
3. 可逆圧縮
データを劣化させることなく圧縮する方式です。圧縮時の画質劣化がなく、完全な復元が可能です。ProRes RAW、ARRIRAWなど、高品質な収録が必要な場面で使用されます。データ量は大きくなりますが、カラーグレーディングなど、詳細な画質調整が必要な作業で重要です。特に映画やハイエンドな商用映像制作で採用されています。
4. 非可逆圧縮
データを一部失うことで高い圧縮率を実現する方式です。人間の目で認識しにくい情報を間引くことで、効率的なデータ圧縮を行います。H.264、H.265など、多くの配信用コーデックがこの方式を採用しています。圧縮率と画質のバランスを調整できる柔軟性があり、用途に応じた最適化が可能です。
5. ビット深度
色情報の精細さを表す指標です。8bit、10bit、12bitなどがあり、数値が大きいほど豊かな色表現が可能になります。コーデックによってサポートするビット深度が異なり、作品の要求品質に応じて選択します。特にHDRコンテンツ制作では、高いビット深度が必要とされ、適切なコーデックの選択が重要になります。