映像制作会社に発注くださるお客様に、映像編集の仕組みと、このプロセスで何が行われるかを理解いただくことは、編集・試写・修正編集をできるだけ短期間に終えるために、とても有意義だと思いますので、説明します。
ノンリニア編集
この言葉を聞いたことがあると思います。いまほとんどの編集作業はこのノンリニア編集によって行われています。この対義語はリニア編集なのですが、具体的には「テープ編集」のことです。テープ編集はいまはほとんど行われていません。アナログ時代のすべての期間と、デジタル時代に入ってしばらくの間がテープ編集の時代でした。
ノンリニアは「非直線」と訳せますが、これがどうして映像編集と関係あるのか、よくわからないと思います。ノンリニア編集は、リニア(テープ)編集のように時間軸に沿って順番に編集する必要がないことから、「ノンリニア(非線形)」という名前が付けられました。
ノンリニア編集の一般的な手順
素材の取り込み
撮影された素材、写真データ、作画したデータ、音声素材などをSDカードなどのメディアから編集に利用するパソコンのHDD、SSDにコピーします。この段階では高画質を維持するために、できるだけ圧縮されていないデータであるべきですが、パソコンの性能によってはレンダリング時間が多くなりますので、適切なデータ形式に変換して保存することもあります。編集時点で変換することもできます。
編集ソフトの起動・プロジェクトの設定
Adobe Premiere Pro、Final Cut Pro、DaVinci Resolveなどが業務用としてよく利用されています。編集ソフト上で新しいプロジェクトを作成し、1.で取り込んだ素材を読み込みます。
高画質で重いデータを編集する場合は、「プロキシ」という軽いデータに置き換えて編集することもあります。
素材の整理・タイムラインへの配置
取り込んだ素材を用途別に複数のフォルダに整理し、必要な部分をピックアップしてタイムラインに並べます。この操作はフォルダ内のデータファイルをカーソル/クリックでピックアップして、タイムラインにドロップするだけでできます。編集したい順序に素材をタイムライン上に配置します。
カット編集
素材の不要な部分をカット(トリミング)し、必要な部分だけを残します。別な動画ファイルも同様にトリミングして、前のカットに並べて置き、「つながり」を調整します。この操作もカーソルとクリック、ショートカットキーなどの簡単なものです。
トランジションの追加
カットとカットの間にトランジション(場面転換効果)を追加します。タイムラインには複数のトラックがあるので、同じ時間の場所にカットを重ねて置き、上のカットの透過率を制御して「オーバーラップ」させることもできます。
エフェクトの追加
テロップの追加
映像にテロップ(文字情報)を追加します。
音声の編集
音声の音量調整、ノイズ除去、BGMや効果音の追加などを行います。
プレビュー・仕上げ
編集した映像を何度もプレビューし、修正点がないか確認します。
書き出し
完成した映像を目的の形式(MP4、MOVなど)で書き出します。
まとめ
3分の映像の編集であっても、細かく編集されるものではタイムラインに何百ものカットが重層的に並びます。また現場音、ナレーション、効果音(SE)、音楽などの音声素材も重層的に置かれています。それらの素材はフレーム単位(多くの場合1/30秒)で調整されて置かれています。その微細な調整が集まって数分のコンテンツとなっています。
そのため、一箇所の微細な修正でも全体に影響を与えることがあります。しかも非常に簡単な操作でファイルや設定が変更できるため、気付かぬうちにファイルが動いたり、設定が変わっていることがあります。
ノンリニア編集はリニア編集に比べて非常に自由度が高い編集技術ですが、同時に非常に神経を使う作業でもあります。

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