トリミング
映像編集においては、タイムライン上に配置されたクリップのイン点(開始点)・アウト点(終了点)を調整して、使用する範囲を変える操作です。
トリムの種類
編集ソフトでは、トリム操作はいくつかの異なるモードに分かれています。
1. リップルトリム(Ripple Trim)
クリップの端を動かすと、後続クリップが自動的に詰まる(または広がる)
変更前: [A----][B----][C----]
変更後: [A--][B----][C----] ← Bが自動的に前に詰まる
2. ロールトリム(Roll Trim)
隣接する2クリップの編集点を前後にスライドさせる。全体の尺は変わらない
変更前: [A----][B----]
変更後: [A------][B--] ← AとBの合計長は不変
3. スリップトリム(Slip Trim)
クリップのタイムライン上の位置と長さは変えず、中身(どのフレームを使うか)だけを変える
4. スライドトリム(Slide Trim)
クリップの中身と長さは変えず、タイムライン上の位置だけを動かす(前後のクリップが伸縮する)

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。
映像制作会社としての視点
映像における「クロップ」と「トリミング」の使い分け
映像編集において、画面内を別のフレームで切り取る機能の、一般的な名称は「クロップ」と言いますが、これをトリミングと表現する場合もあります。
1. 職種やソフトによる「トリミング」の指すもの
「トリミング」と言ったとき、相手が何を想像するかは、その人の主な作業領域によって分かれます。
編集エディター(時間)
タイムライン上で「動画の長さを削る」ことを指します。主要な編集ソフトで、クリップの端をドラッグして短くする操作が「トリミング」と定義されているためです。
ディレクター・カメラマン(空間)
画角の中の不要な要素を削って「構図を整える」ことを指します。写真やデザインの「トリミング(切り抜き)」と同じ感覚で使われます。
2. 「クロップ」と「トリミング」が混在する理由
プロの現場でも、画面の切り取りを「クロップ」と言わず「トリミング」と呼ぶ人は普通にいます。
「クロップ(Crop)」を使う場面
ソフトのエフェクト名として指定する場合。「右側を10%クロップして」といった、数値的な指示を出す時に適しています。
「トリミング(Trimming)」を使う場面
「余計な映り込みを消して」「もっと主役を大きく見せて」といった、構図の仕上がりについて話す時に使われます。
3. 使い分け
「トリミング」という言葉は、以下の2つの意味を併せ持ったまま使われています。
機能名: クリップの前後(時間)を削ること。
慣用句: 画面の周囲(空間)を切り抜くこと。
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関連用語など
1. アスペクト比(Aspect Ratio)
映像の横と縦の比率を表す数値です。代表的なものとして16:9(ワイドスクリーン)や4:3(スタンダード)があります。近年のデジタル放送やオンライン動画では16:9が標準となっていますが、SNS向けの縦型動画(9:16)など、新しいフォーマットも登場しています。トリミング作業では、最終的な出力先のアスペクト比に合わせて映像をカットする必要があり、撮影時から最終的なアスペクト比を考慮した構図設計が重要となります。特に異なるアスペクト比の素材を混在させる場合、画角の調整や余白の処理など、慎重な作業が必要となります。
2. セーフエリア(Safe Area)
テレビ放送において、確実に視聴者に表示される領域を示す基準です。アクションセーフ(映像の端から約7%内側)とタイトルセーフ(約10%内側)の2種類があり、特に文字情報はタイトルセーフ内に収める必要があります。これは、テレビの機種や設定による表示領域の違いを考慮したものです。デジタル放送やオンライン動画では物理的な制約は少なくなっていますが、視認性や演出効果の観点から、依然として重要な基準として参照されています。トリミング時にはこのセーフエリアを意識した調整が必要となります。
3. パン&スキャン(Pan and Scan)
ワイドスクリーン映像(16:9など)を、より狭いアスペクト比(4:3などど)に変換するときに、映像を左右に動かしながらトリミングし、サイドを切り落とし画面全体に映像を映します。映画の放送用変換でよく使用される手法ですが、原作の構図や演出意図が損なわれる可能性があるため、賛否両論があります。近年は16:9が標準となり、以前ほど使用頻度は高くありませんが、アーカイブ映像の再利用やマルチプラットフォーム展開において、依然として重要な技術として残っています。
4. オーバースキャン(Overscan)
映像の端を若干広めに撮影(編集)し、テレビ画面の有効範囲外が切り取られることを想定することを言います。また、編集時の安全マージンとして機能し、手ブレの補正や構図の微調整に対応できます。デジタルカメラの高解像度化により、撮影後のリフレーミングの自由度が高まっていますが、計画的なオーバースキャンは依然として重要な撮影です。特に動きの多いシーンや、複数のアスペクト比での展開を想定する場合に有効です。
5. レターボックス/ピラーボックス(Letterbox/Pillarbox)
異なるアスペクト比の映像を表示する際に、上下(レターボックス)や左右(ピラーボックス)に黒帯を入れる処理方法です。映像の縦横比を維持したまま表示できる利点がありますが、画面の一部が無駄になる欠点もあります。近年では、この黒帯部分を活用して補足情報を表示したり、デザイン要素として活用したりする演出も見られます。視聴環境や目的に応じて、トリミングかボックス処理かを選択することが重要です。
