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採用動画は原点回帰を

更新日:9月3日

「リクルート映像」という会社の先見性


かつてリクルート映像という社名のプロダクションがありました。あのリクルート社の関連企業でした。企業の採用活動に映像の力が使えることに、かの江副 浩正氏は数十年も前に気づいていたことになります。

ところで、ひとむかし前のリクルート用映像といえば「会社案内ビデオ」と大きく被る内容で、企業の事業概要や規模を「目で見える」ようにすることが主目的でした。



WEBの登場でリクルート映像はさま変わり「採用動画」に


現在はそうしたテキストや静止画で表現可能な企業概要情報は、WEBサイトの採用情報から得られるから、映像コンテンツからは外して考える会社が増えています。

現在映像コンテンツでの表現が有効、有意であると考えられているのは主に以下の要素です。


  1. 職場環境

  2. 人間環境

  3. リーダーのイメージづくり

  4. リーダーのアピール

  5. やりがい説明



デジタルネイティブ世代の視聴習慣への対応

現在の求職者、特にZ世代は短時間のコンテンツに慣れており、表面的な情報で判断する傾向が強くなっています。TikTokやYouTube Shortsなどの短尺動画プラットフォームの影響で、深く考える前に直感的に「理解した気」になってしまうことが多く、冗長で退屈な企業紹介動画は即座にスキップの対象となります。このような視聴習慣は、採用動画制作において新たな課題を生み出しています。



採用動画は「社風」を中心に


現在の採用動画は、入社数年目の、新卒リクルーターにとってジェネレーションが近い世代社員のインタビュー(仕事内容、やりがい、職場の雰囲気に関するコメント)や、職長や経営者のインタビュー(指導方針、経営方針、ビジョンなどに関するコメント)を軸に、実際の職場の様子を挟み込むというのが、いまいちばん多い構成手法です。


「安心感」重視の背景

この傾向の背景には、ブラック企業問題やワークライフバランスへの関心の高まりがあります。求職者は「この会社で働いて大丈夫か」という不安を抱えており、社員の生の声や表情から職場の雰囲気を読み取ろうとしています。



簡単につくれるから「こればっかりに」になってきた


インタビュー構成の映像の制作は映像制作者にとっては「入門篇」と言え、「のようなもの」であれば、誰でも少し勉強すれば撮影も編集もできるものです。こうした状況はここ数年継続しているため、WEB上にはどこの会社にもよく似た切り口、よく似たトーンの映像が満載になってきました。しかしインタビュー型採用動画も、プロがちゃんと創作した映像との差は、歴然とあって、それは比較して視聴すれば明らかです。埋もれてしまっているものさえあります。


差別化の困難と競合他社との類似性

結果として、多くの企業の採用動画が金太郎飴状態になっており、求職者にとって企業の個性や魅力を判断する材料として機能していないという皮肉な状況が生まれています。「どの会社も同じようなことを言っている」という印象を与えてしまい、かえって企業ブランディングを損なう可能性も指摘されています。



採用難の時代の採用動画は原点回帰を


改めて核にして欲しい要素があります

それはその企業の事業の社会的な意義や将来性(いわゆる「パーパス」)について、わかりやすく解説した映像です。今流にインフォグラフィック手法を軸にしたプレゼンテーション的な構成がいいと思います。


Z世代が求める「意味のある仕事」

現在の若手求職者層は、単に安定した雇用や良好な人間関係を求めるだけでなく、自分の仕事が社会にどのような価値をもたらすのかを重視する傾向があります。SDGsへの関心の高まりや、社会課題解決への参画意識の向上がこの背景にあります。



案外忘れられている「事業の核心」

社風や人間関係ばかりに目を向けていて、その会社の存在意義、その仕事の社会的な意義というのは、案外説明されていないことが多いものです。その会社で働く人にとっては「そんなのアタリマエ」すぎて、説明したことが無い・・・というのが現状かもしれません。


業界専門用語という壁

特にBtoB企業においては、自社の事業内容を一般消費者レベルでわかりやすく説明することに慣れていない傾向があります。技術的専門性が高い企業ほど、その技術が最終的にどのような社会価値を生み出しているかを可視化することの重要性を見落としがちです。


ミッション・ビジョンの形骸化

多くの企業が立派なミッション・ビジョンステートメントを掲げていますが、それが日常業務とどう結びついているかを具体的に示せていません。採用動画は、理念と実務の橋渡しをする絶好の機会であるにも関わらず、その機能を十分に活用できていない企業が多いのが現状です。


映像制作を通して自社事業を再認識

映像の制作プロセスは、改めて自身が関わっている仕事の核心になにがあるのか・・・気が付かせてくれます。私たちBtoB映像の企画者は、クライアントのビジネスモデルがどういうもので、どういう意義があるものなのかを鋭く探り、絵にしていきます。

これこそが僕らの仕事なのだ、と言っても過言ではありません。


「外部の目」の価値

映像制作者という第三者の視点が入ることで、企業は自分たちでは当たり前すぎて気づかなかった事業の価値や独自性を発見できます。この過程は単なる映像制作を超えて、企業のセルフブランディングそのものを見直す機会となります。


ストーリーテリングの重要性

現代の採用動画で最も重要なのは、企業の事業を一つの「物語」として構成することです。その物語の主人公は企業ではなく、社会であり、その社会の課題解決において企業がどのような役割を担っているかを明確に示すことが求められています。



今後の採用動画に求められる要素


1. データビジュアライゼーションの活用

企業の社会的インパクトを数字で可視化し、それをわかりやすいグラフィックで表現することで、説得力のある訴求が可能になります。


2. インタラクティブ要素の導入

視聴者が能動的に情報を選択できる仕組みを取り入れることで、より深い理解と関心を促すことができます。


3. 多様性の真の表現

表面的な多様性のアピールではなく、異なる背景を持つ社員がそれぞれの強みを活かしてどのように事業に貢献しているかを具体的に示すことが重要です。


4. 失敗と成長の物語

完璧な企業像を演出するのではなく、課題に直面し、それを乗り越えてきた実体験を共有することで、よりリアルで共感を呼ぶコンテンツを作ることができます。



結論:採用動画の新たな方向性


採用動画は単なる企業紹介ツールから、企業と求職者の価値観のマッチングを促進するメディアへと進化する必要があります。そのためには、表面的な魅力的要素よりも、企業の本質的な価値と社会的使命を深く掘り下げ、それを映像の力で魅力的に伝えることが不可欠です。

真に効果的な採用動画は、企業にとっても制作過程を通じた自己発見の機会となり、求職者にとっては自分のキャリアビジョンと企業の方向性を照らし合わせる貴重な判断材料となるはずです。

採用難の時代の採用動画は原点回帰を
採用難の時代だからこそ映像のチカラを生かす

 

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【執筆者】

本記事はこれまでにJR東海、トヨタ自動車、矢作建設工業など、名古屋を中心とした地域の幅広い業界の採用動画を制作してきた、映像制作会社 株式会社SynApps代表が執筆しました。

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