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企業VPの定番構成“レポーター取材型”─ 短納期で効果を出すための使いどころ

更新日:10月22日

企業ビデオ(VP)の世界では、登場当初から定番とされてきた構成があります。それが、レポーターが会社や工場を訪問し、社員や経営者に話を聞く“取材型構成”です。


「私は今、◯◯株式会社の△△工場に来ています──」という導入で始まるあのスタイル。一時期はテレビ番組のような雰囲気を狙ったVPの多くがこの形式を採用していました。



なぜ、いまも一定の支持があるのか


この手法は、クライアントにも制作側にも“安心感”があるという点で根強い人気があります。


  • 完成映像のイメージを事前に共有しやすい

  • 「この話題を入れてほしい」「この場所を紹介してほしい」と明確に指示できる

  • レポーター(タレント)起用による安心感や華やかさがある


特に、VP制作の経験が少ない企業にとっては、撮影・演出の全体像を掴みやすいという利点があります。一方の制作側も、テレビ取材の文法に近いため、説明しやすく・進行しやすい構成といえます。


女性レポータが訪問
女性レポータが訪問するPRビデオ

シナリオが簡単に作れる理由


この構成が重宝されてきた最大の理由は、シナリオ設計がシンプルであることです。

「ここでレポーターが社長に話を聞く」「ここでレポーターが開発担当者に質問する」

と書くだけで流れが成立します。会話の中で自然に情報が引き出されるため、説明調にならず、“人の言葉で伝わる”映像になります。

演出が必要最小限で済むため、経験の浅いディレクターや限られたスケジュールでも構成を組み立てやすいのです。



編集が速い理由


レポーター取材型の映像では、編集段階での判断が非常に明快です。多くの場面でレポーターが登場しており、発話の流れでOK/NGが明確だからです。

不要部分を削除し、シナリオどおりに並べるだけで一本の流れができるため、通常の編集に比べて数分の一の時間オフライン編集を終えられます。

短納期案件では、これは大きな武器になります。



ただし、同録リスクは避けられない


この構成の最大の弱点は、同録(同時録音)による修正不可です。撮影現場で話した内容は、原則として後から修正できません。

試写段階で「この発言は削除してください」となった場合、該当箇所を丸ごとカットするしかなく、構成上の重要部分が失われることもあります。

したがって、撮影前の段階で


  • 質問項目のすり合わせ

  • 想定回答の確認

  • 「撮影後の修正はできない」という了承の取得が欠かせません。


この工程を怠ると、編集でどうにもならない“構成欠落”が発生します。



いま、この手法をどう使うか


現在のBtoB映像制作では、この「レポーター取材型」を積極的に提案する会社は多くありません。理由は、クライアントの承認プロセスが段階的になり、後からの修正要望がほぼ必ず発生するからです。「ここ直せますか?」「言い回しを変えられますか?」に対して“できません”と答える必要がある構成だからです。


しかし一方で、短納期・低コストで一定の品質を担保したい案件では、今なお有効です。また、テレビ番組風の雰囲気がかえって“懐かしくて新しい”と感じられるケースもあります。

特に展示会動画や採用向けVPなど、限られた尺で印象を残したい映像では再評価の声も聞かれます。



制作現場の実例


筆者はこの構成で、初回打合せから納品まで1週間という短納期案件を担当したことがあります。レポーターの進行に沿って撮影を組み、編集はシナリオどおりに接続するだけ。事前の準備さえ万全であれば、驚くほどスムーズに納品まで進められるのがこの手法の真骨頂です。



まとめ:古典は、使いどころを見極めれば“武器”になる


レポーター取材型構成は、確かに古典的な手法です。しかし、そのシンプルさと効率性は、情報の整理と納期短縮が求められる現代制作においても十分通用します。

重要なのは「この構成で伝えるべきメッセージは何か」「修正不能でも成り立つ内容か」を明確にすること。そこを見極めれば、この古典的手法は今でも強力な選択肢になり得ます。


📍筆者の視点:レポーター構成は“古い”のではなく、“再現性が高い”構成です。必要最小限の準備で確実に結果を出す──それがこのスタイルの本質です。


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【執筆者プロフィール】

株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。(2025年10月現在)

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