動画・映像制作用語
【プロパガンダ】
propaganda
「プロパガンダ」とは、特定の目的を達成するために、情報を意図的に操作し、人々の感情や行動に影響を与えようとする情報操作です。
プロパガンダ(Propaganda)はラテン語で、日本語に訳すと「宣伝」であることが興味深いです。つまり宣伝、広告はプロパガンダの一種であることを、再認識すべきかも知れません。
プロパガンダの特徴
1. 意図的な提示
プロパガンダは、特定の目的、例えば政治的な支持を得ることや、特定の商品を売り込むことなどを達成するために、情報を選択的、意図的に提示します。
2. 感情への訴求
プロパガンダは、論理的な根拠よりも、人々の感情、例えば恐怖、希望、憎悪などに訴えかけることで、人々の心を動かそうとします。
3. 偏向性
プロパガンダは、事実を歪曲したり、一部の情報だけを強調したりすることで、特定の方向に世論を誘導しようとします。
4. 大衆操作
プロパガンダは、マスメディアなどを利用し、大衆に対して大規模に情報を発信することで、広範囲に影響を与えようとします。
プロパガンダ映画
映画は視覚と聴覚に訴えかけるメディアであり、プロパガンダの道具として歴史的に広く利用されてきました。その特徴は、
1. 感情への訴えかけ
プロパガンダ映画は、観客の感情に強く訴えかける映像や音楽、ストーリー構成を用います。恐怖、憎悪、愛国心などの感情を喚起し、観客の思考を特定の方向に誘導します。
2. 単純化されたメッセージ
複雑な問題を単純化し、善悪二元論やステレオタイプを用いて、特定の思想を分かりやすく伝えます。これにより、観客は深く考えることなく、提示されたメッセージを受け入れやすくなります。
3. 情報の操作
プロパガンダ映画は、特定の情報を強調したり、反対意見を排除したりすることで、事実を歪曲します。また、映像の編集や演出によって、観客に特定の印象を与えることができます。
4. 繰り返しと反復
同じメッセージを繰り返し伝えることで、観客の潜在意識に働きかけ、思想を浸透させます。
プロパガンダ映画の歴史
1. 初期の映画
初期の映画は、国家や政治体制のプロパガンダに利用されました。例えば、ロシア革命後のソビエト連邦では、革命の正当性を主張する映画が制作されました。
2. 第二次世界大戦
第二次世界大戦中、ナチス・ドイツは、レニ・リーフェンシュタール監督の「意志の勝利」などのプロパガンダ映画を制作し、ナチスの思想を広め、国民の戦意を高揚させました。
アメリカも、「我々はなぜ戦うのか」シリーズなどのプロパガンダ映画を制作し、戦争への協力を呼びかけました。
3. 冷戦
冷戦時代、アメリカとソビエト連邦は、互いの体制を批判し、自国の優位性を主張するプロパガンダ映画を制作しました。
4. 現代
現代ではインターネットやSNSの普及により、プロパガンダの手法も多様化しています。インターネット上で拡散される動画も、政治的な主張だけでなく、商業的な目的や特定のイデオロギーを広めるために利用されています。
生成AIの民生化によって誰でも容易にフェイク動画を作成、公開できることから、誰でも容易にプロパガンダに加担することができる危険性があるため、社会全体で警戒を強める必要性があります。
【関連用語】
1. フェイク動画
フェイク動画とは、実在の人物や出来事の映像を加工・捏造し、あたかも事実であるかのように見せかける動画のことです。特に、AI技術の進化によって、本物と見分けがつかないほど精巧なフェイク動画(ディープフェイク)が作成可能になり、社会問題化しています。フェイク動画は、政治的なデマの拡散、著名人の名誉毀損、詐欺などに悪用される可能性があり、深刻な脅威となっています。
2. 生成AI
テキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを自動的に生成するAI技術のことです。近年、急速に進化しており、様々な分野で活用されています。しかし、生成AIは、フェイクニュースやプロパガンダの作成にも悪用される可能性があります。特に、生成AIによって作成された偽情報は、人間が作成した情報よりも説得力があり、拡散されやすい傾向があります。
3. メディアリテラシー
情報を批判的に読み解き、適切に活用する能力のことです。現代社会は、インターネットやSNSなどの普及により、膨大な情報が溢れています。その中には、誤った情報や偏った情報も多く含まれており、メディアリテラシーの重要性はますます高まっています。メディアリテラシーを身につけるためには、情報の真偽を見極める力、情報の背景や意図を理解する力、情報を適切に発信する力などを養う必要があります。
4. パーソナライズ
個人の興味や関心に合わせて情報やサービスを提供する技術のことです。インターネット広告やSNSなどで広く活用されており、便利な一方で、情報が偏る可能性も指摘されています。パーソナライズされた情報ばかりに触れていると、自分の考えと異なる意見に触れる機会が減り、視野が狭まってしまうことがあります。
5. エコーチェンバー
同じ意見を持つ人々が集まる空間のことです。SNSなどで、自分の興味や関心に基づいて情報収集やコミュニケーションを行うことで、エコーチェンバー現象が起こりやすくなります。エコーチェンバーに閉じこもると、自分の意見が絶対的に正しいと思い込み、他の意見を排除する傾向があります。その結果、極端な意見やデマが拡散しやすくなり、社会の分断を招く可能性があります。
6. フィルターバブル
インターネット検索やSNSなどで、個人の興味や関心に合わせて情報が最適化されることで、あたかも泡の中に閉じこもったように、自分の見たい情報しか見えなくなる現象のことです。フィルターバブルによって、私たちは自分の考えと異なる情報に触れる機会を失い、偏った情報に囲まれてしまう可能性があります。