NTSC(エヌティーエスシー)
NTSC(National Television System Committee:全米テレビジョンシステム委員会)とは、かつて北米や日本などで使用されていたアナログカラーテレビ放送方式の規格です。
1. 概要と採用国
NTSCは、アメリカで開発されたアナログカラーテレビ放送の規格です。かつては、アメリカ、日本、カナダ、韓国、台湾などで採用されていました。日本では2011年7月24日のアナログ放送終了に伴い、NTSC方式も終了し、現在ではデジタルテレビ放送に移行した過去の規格となっています。
2. 技術的特徴
NTSCはインターレース方式を採用し、走査線数は525本(有効走査線は約480本)です。フレームレートは29.97fps(フィールドレートは59.94フィールド/秒)で、解像度は約720×480ピクセル相当でした。色信号の伝送にはコンポジットビデオ信号を使用しました。
3. 歴史的背景と課題
1941年に白黒放送の規格として承認された後、1953年にカラー規格が承認されました。この際、音声信号との干渉を避けるためにフレームレートが29.97fpsに変更されています。
NTSCは位相歪みによる色信号の不安定さから「Never Twice the Same Color(決して同じ色にならない)」という皮肉な愛称で呼ばれることもありました。また、インターレース方式や輝度信号と色信号の多重化により、ちらつきやクロスカラーなどの画質劣化が発生しやすいという課題がありました。
4. 他規格との違いと現在の状況
NTSC以外のアナログカラーテレビ放送規格には、主にヨーロッパで使われたPAL(625走査線、25fps)や、フランスなどで使われたSECAM(625走査線、25fps)があり、これらは相互に互換性がありませんでした。
現在、世界的にデジタル放送への移行が完了しており、NTSCなどのアナログ規格の色信号伝送方式は使われていませんが、「480i」などの表記にその名残が残っています。NTSCは、アナログ放送の歴史において、特に白黒放送との後方互換性を実現した点で重要な役割を果たしました。
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【関連情報】
1. インターレース(Interlace)
アナログテレビ放送の時代に考案された技術で、限られた伝送帯域幅の中で効率的に映像情報を送るために、1つのフレームを奇数行と偶数行の2つのフィールドに分割し、交互に表示する技術です
2. プログレッシブ (Progressive)
プログレッシブとは、映像を構成するフレーム(静止画)を分割せずに、すべての行を同時に表示する映像表示方式です。インターレース方式のような「ちらつき」や「櫛状のノイズ」が発生せず、より自然で高精細な映像を表示できます。動きの速い映像でも残像感が少なく、クリアな映像を表示できます。
パソコンやスマートフォンなどのデジタルデバイスとの相性も良く、安定した映像を表示できますが、インターレース方式に比べてデータ量が大きくなります。
3. PAL (Phase Alternating Line)
PALとは、主にヨーロッパやオーストラリアなどで使用されていたアナログカラーテレビ放送方式の規格です。
特徴
インターレース方式を採用しています。
フレームレートは25fps(フィールドレートは50フィールド/秒)です。
走査線数は625本です。
色信号の伝送方式にコンポジットビデオ信号を使用しますが、NTSC方式よりも色信号の安定性に優れています。
4. SECAM (Séquentiel couleur à mémoire)
SECAMとは、主にフランスや東ヨーロッパ、アフリカの旧フランスなどで使用されていたアナログカラーテレビ放送方式の規格です。
特徴
インターレース方式を採用しています。
フレームレートは25fps(フィールドレートは50フィールド/秒)です。
走査線数は625本です。
色信号の伝送方式に周波数変調を使用し、色信号の安定性に優れています。
5. アスペクト比
映像や画像の縦横比を表す数値です。例えば、「16:9」というアスペクト比は、横方向の長さが縦方向の長さの16/9倍であることを意味します。

