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映像制作を外注するときの4つの発注(問い合わせ)方法

更新日:4月17日


映像制作をプロダクションに外注するとき、最初の問い合わせ方法は1つではありません。どのような情報をどこまで提示して依頼するかによって、返ってくる提案の質、価格の妥当性、そして最終的な映像のクオリティまで大きく変わります。  ここでは、企業の映像制作担当者が選択できる4つの発注アプローチを整理し、それぞれのメリット・リスク、そして「どの部署に・どんな案件に向いているか」を解説します。

 

オリエンテーションしている様子


4つのアプローチ|一覧

 

No.

形態

発注者が提示する内容

競合の有無

発注者の主なメリット

発注者の主なリスク

企画 予算競合

テーマ・目的のみ

競合あり(企画+予算)

斬新な企画が生まれやすい

比較困難・品質リスク大

企画競合

テーマ・目的・媒体・予算・納期

競合あり(企画のみ)

同条件での企画比較が可能

予算設定の知識が必要

予算競合

テーマ・目的・企画手法

競合あり(価格のみ)

価格の透明性が高い

安値競争に陥りやすい

随意契約 指名発注

すべての条件を提示

競合なし(任意受注)

スピーディーに動ける

相場検証ができない

 


企画・予算競合|テーマと目的だけを提示する

 

【問い合わせの形式】

「こういう目的で映像を制作したい」とテーマと目的だけを伝え、企画内容・制作手法・見積もり・スケジュールのすべてをプロダクション側に提案させる方法です。複数社に声をかけてコンペ形式で選定するケースが多くなります。

 

◆ どんな時に選ばれるか

映像のイメージが自社にまったくなく、アイデアをゼロから求めたいとき

予算の相場感がわからず、市場価格を把握したいとき

できるだけ斬新・独創的な企画を集めたいとき

 

◆ メリット・リスク詳細

 

視点

メリット

リスク・デメリット

発注者

制作会社の創造性を最大限に引き出せる可能性がある。予算も市場価格で複数比較できる

各社の提案スケールが統一されず比較が困難。優良プロダクションほど「勝率が低い」と判断して参加しない

制作会社

企画力を存分に発揮できる。予算を自社基準で設定できる

企画・見積もり・絵コンテ作成がすべてタダ働きになるリスク。参加社数が多いほど採択率が下がる

 

⚠️ この形式で起きがちな失敗

予算が非公開なため、制作会社は「大きな企画を出しつつ低予算でも受けます」というアプローチをとりがちです。いざ実施段階になると低予算で実現できる内容にスケールダウンされ、「こんなはずじゃなかった」という結果になるリスクがあります。

 


企画競合|テーマ・目的・媒体・予算・納期を提示する

 

【問い合わせの形式】

映像の使用媒体(WebなのかTV-CMなのか展示会なのか)、予算の上限、納期を事前に提示した上で、企画・制作プランだけを複数社に競わせる方法です。「同じ土俵での企画コンペ」が実現でき、比較がしやすい形式です。

 

◆ どんな時に選ばれるか

予算と納期は固定されているが、企画は制作会社に任せたいとき

同じ条件のもとで複数プロダクションの企画力を比較したいとき

制作会社のクリエイティビティを活かしつつ、コスト管理もしたいとき

 

◆ メリット・リスク詳細

 

視点

メリット

リスク・デメリット

発注者

同一条件で企画内容だけを純粋に比較できる。スケールのずれた提案が来にくい

予算設定が低すぎると質の高い企画が集まらない。適正予算を判断する知識が必要

制作会社

予算・納期が明確なため、現実的かつ質の高い企画を立てやすい

企画立案・絵コンテ作成はタダ働きのリスクが残る。予算が低いと本気になれないジレンマがある

 

💡 プロダクションが最も前向きになる条件

「予算を提示したうえで企画を競わせる」この形式は、制作会社が最も力を発揮しやすい環境です。限られた予算の中で演出・音楽・キャスティング等に最適な配分を設計できるため、予算を伏せた場合より質の高いアウトプットが期待できます。

 


予算競合|テーマ・目的・企画手法まで提示する

 

【問い合わせの形式】

「ドラマ仕立てで」「ドキュメンタリー調で」「アニメーションで」など、制作手法・演出スタイルまで指定した上で見積もりだけを競わせる方法です。企画は発注者側(または代理店)が持っており、「いくらでできるか」を比較します。

 

◆ どんな時に選ばれるか

自社(または代理店)に企画・ディレクションの知識があるとき

方向性は決まっているので、コストの透明性を確保したいとき

広告代理店経由で制作費だけをプロダクションに発注する場合

 

◆ メリット・リスク詳細

 

視点

メリット

リスク・デメリット

発注者

制作内容が固定されているため、見積もり比較が明確・公平にできる。コスト管理がしやすい

自社の企画力・ディレクション力が問われる。企画が不完全だと、安く作れても完成品がイメージと乖離する

制作会社

企画を一から考える手間がなく、見積もり作業に集中できる

価格だけで選ばれるため安値競争に陥りやすい。企画への改善意見を言いにくい立場になる

 

⚠️ 注意:仕様が細かく指定されている場合の裏事情

問い合わせの段階で制作仕様が非常に詳細に指定されている場合、「すでに特定の制作会社が内定していて、見積もり比較のために形式上コンペにしているだけ」というケースが業界内では珍しくありません。善意で参加した制作会社が無駄な労力を費やすことになるため、発注者として誠実な対応が求められます。

 


随意契約・指名発注|すべての条件を提示して1社に依頼する

 

【問い合わせの形式】

使用媒体・予算・納期・企画・手法のすべてを提示した上で、制作会社側は条件が合えば受ける・合わなければ断るという判断が完全に任意です。

 

◆ どんな時に選ばれるか

以前から取引のある信頼できるプロダクションがいるとき

機密性の高い内容で、多数の会社に情報を開示したくないとき

IR映像など、正確さ・確実性を創造性より重視する案件

スピードを最優先にしたいとき

IR映像など、正確さ・確実性を創造性より重視する案件

 

◆ メリット・リスク詳細

 

視点

メリット

リスク・デメリット

発注者

手続きがシンプルでスピーディー。信頼できる相手に安心して任せられる

1社しか見ないため価格の妥当性を検証できない。関係の固定化によりクオリティが緩やかに低下するリスクがある

制作会社

企画も価格交渉も不要で制作に集中できる。受注確度が高い

既存関係から断りにくく、条件が不利でも受け続けるケースが生まれる

 

💡 ④を使う場合の賢いルール

随意契約は効率的ですが、年に1度程度は②や③のアプローチで他社からも提案を取り、市場の相場感とクオリティ水準を確認することをおすすめします。これにより既存パートナーへの適度な緊張感が生まれ、長期的な品質維持にもつながります。

 


部署別・推奨アプローチの目安

部署によって映像の用途・機密性・繰り返し発注の頻度が異なります。以下はあくまで目安ですが、自部署の状況と照らし合わせて参考にしてください。

 

部署

主な映像用途

推奨アプローチ

選択の理由

広告宣伝部

TV-CM・Web広告・展示会映像

②または③

企画の独自性より媒体適性を重視。代理店経由の場合は③が多い

広報部

会社紹介・周年映像・CSR動画

①または②

社外への発信なので企画の質を優先。斬新なアプローチを歓迎しやすい

営業企画部

製品紹介・使い方解説・展示会用

③または④

目的が明確で繰り返し発注も多い。既存パートナーとの④が定着しやすい

IR部

株主総会・IR説明会映像

④または③

機密性が高く信頼関係のある1社に依頼する④が主流。品質より確実性優先

人事部

採用動画・入社式・研修動画

②または④

採用ブランディングに力を入れるなら②で企画を競わせる価値がある

 


プロダクションへの問い合わせ前チェックリスト

どのアプローチを選ぶにせよ、以下の6項目を事前に整理しておくことで、初回打ち合わせの質が劇的に上がり、手戻りを防ぐことができます。

 

確認項目

確認内容

理想の状態

未整理の場合のリスク

目的・ゴール

誰に何を伝えたいか

ターゲット、KPI、活用シーンまで整理できると理想的

不明確なまま進むと企画の方向性がぶれ、完成後に「イメージと違う」が起きやすい

使用媒体

どこで流すか

YouTube・展示会・社内LAN・TV-CM等を明記

媒体によって解像度・尺・縦横比が異なる。後から変更すると追加費用が発生する

納期

いつまでに必要か

確定日付または逆算できる起点となるイベント日

稟議の遅れが納期を圧迫する最大の要因。撮影・編集・確認に最低1〜2ヶ月は必要

予算

いくらまで使えるか

上限金額を伝えることが最も効果的

「予算を言うと足元を見られる」は誤解。金額を示すことで制作会社は最大の価値を提案しようとする

企画の方向性

どんな映像にしたいか

参考映像のURLや「好き/嫌い」の言語化だけでも可

ゼロから考えさせると的外れな提案が返ってきやすい。「こういうのは嫌」も有益な情報

素材の有無

撮影が必要か

既存写真・映像・ロゴデータの有無を確認

「撮影なし」と「フル撮影」では見積もりが大きく変わる。早めの確認が精度を上げる

 

発注者として押さえておきたい3つの鉄則

 

◆ 鉄則1:競合に呼ぶ会社は2〜3社に絞る

5社以上に声をかけると、制作会社側は取り組みへの本気度が下がります。2〜3社が最も質の高い提案を引き出せる適正数です。制作会社に「真剣に向き合う価値のある案件」と感じさせることが、良い提案を引き出す第一歩です。

 

◆ 鉄則2:予算はオープンにする方が「お買い得」

「予算を言うと足元を見られる」という考え方は誤解です。予算を明示すると、プロデューサーはその範囲の中で演出・音楽・キャスティングに最適な配分を設計します。時には撮影費を抑えて浮いた予算を音楽にまわす、という判断もできます。これは予算が見えているからこそ可能なことであり、結果として発注者がより質の高い映像を得ることにつながります。

 

◆ 鉄則3:落選した会社にも選定理由をフィードバックする

コンペに参加しながら落選した制作会社は、無償で企画を提供したことになります。選定理由を丁寧にフィードバックすることは、その労力への最低限の誠意です。また、映像業界は思いのほか狭く、発注者の評判は共有されます。フィードバックを丁寧に行う発注者のもとには、次回も優良なプロダクションが集まってきます。

 


まとめ

 

映像制作の発注で最も重要なのは「何を競わせて、何を固定するか」を意識することです。  すべてを競わせると選定コストが上がり、コストと成果が見合わなくなります。すべてを固定すると競争原理が働かず、品質と価格の妥当性が担保されません。

 企画・プリプロダクション工程には大きな労務コストがかかっているという認識を持ち、制作会社に対して誠実に向き合う発注者であることが、長期的により良い映像を生み出す最大の近道です。

準備された発注者のもとには、制作会社も本気で向き合います。

 


 
 

映像制作を発注する企業担当者のための情報発信です。

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執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー

シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。

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