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選考プロセスの革新:「Tech」でさばき、「Touch」で口説く採用の方程式【連載 Vol.2】

はじめに


「応募は来るけれど、さばききれずに連絡が遅れてしまう」

「面接官によって評価基準がバラバラで、ミスマッチが減らない」

母集団形成がうまくいき始めると、次に直面するのがこうした「選考プロセス」の課題です。採用活動において、スピードは命です。返信が1日遅れるだけで、優秀な人材は他社に流れてしまいます。一方で、効率化ばかりを優先して事務的な対応になれば、候補者の志望度は下がります。

第2回となる本記事では、最新のツール(Tech)で業務を極限まで効率化し、そこで生まれた時間を泥臭い対話(Touch)に投資する、現代の「選考の勝ちパターン」を考えます。



1. テクノロジーによる「見極め」と「管理」の進化


人間の勘や経験だけに頼る選考は、バイアス(偏見)の温床となりやすく、再現性がありません。科学的なアプローチを取り入れることで、公平かつ効率的な選考基盤を整える必要があります。


① 採用管理システム(ATS):脱エクセル・脱メール


選考情報をエクセルやスプレッドシートで管理するのは、もはや限界です。

HERP、SmartHR、sonar ATS、ジョブカンなどのATS(Applicant Tracking System)導入は、現代採用の「インフラ」と言えます。

ATSの真価は、単なる名簿管理ではありません。「どの経路からの応募者が、どの選考段階で何%離脱したか」という歩留まり分析や、面接日程調整の自動化、そして各面接官の評価ログを一元管理できる点にあります。チーム全体で候補者の状況をリアルタイムに共有し、データに基づいたPDCAを回すことが、採用成功への第一歩です。


Applicant Tracking Systemのイメージ


② 適性検査・能力検査:客観指標の導入


SPI、TAL、Compassなどの適性検査は、面接という短い時間では見抜けない「資質」や「ストレス耐性」を可視化します。

最近注目されているのは、ミキワメのような「自社のハイパフォーマーとの合致度」を判定するツールです。一般的な「優秀さ」ではなく、「自社の社風や既存社員と合うか」を判定基準にすることで、入社後の定着率を高めることができます。



③ オンライン・AI面接:初期スクリーニングの高速化


一次面接の調整コストは膨大です。ここで役立つのがHireVue(ハイアービュー)やharutaka(ハルタカ)などの動画面接・AI面接ツールです。

候補者は好きな時間に録画形式で回答でき、企業側はすきま時間に確認できます。AIが表情や声のトーンを分析して評価をサポートする機能もあり、膨大な応募者を公平かつスピーディーにスクリーニングする際に絶大な威力を発揮します。



2. 人間力が問われる「アトラクト」と「面接官教育」


テクノロジーで効率化できるのは「事務作業」と「情報の整理」までです。最終的に候補者の心を動かし、入社を決意させる(アトラクトする)のは、生身の人間によるコミュニケーションしかありません。


① 面接官トレーニング:面接官は会社の「顔」


「面接官の態度が高圧的だった」「話を聞いてくれなかった」という体験は、SNSであっという間に拡散され、企業ブランドを毀損します。

面接官には、評価スキルだけでなく、候補者の緊張を解くアイスブレイクや、自社の魅力を相手のニーズに合わせて伝えるプレゼンテーション能力が求められます。


構造化面接(あらかじめ質問項目と評価基準を決めておく手法)の導入や、模擬面接(ロールプレイング)などの面接官トレーニングを実施し、誰が面接しても「良い体験だった」と思ってもらえる品質を担保する必要があります。



② 候補者体験(CX)の向上


選考プロセス全体を「候補者体験(Candidate Experience)」としてデザインする視点も重要です。

合否連絡のスピード、不採用通知の文面、面接時のフィードバックなど、あらゆる接点で「リスペクト」を示すこと。例え不採用になったとしても、「この会社を受けてよかった」と思ってもらえるファン作りこそが、中長期的な採用力を底上げします。



3. 戦略的アウトソーシング(RPO)の活用


これら全てを社内の人事だけで完結させるのは困難です。そこで、RPO(Recruitment Process Outsourcing)の活用が進んでいます。

日程調整、スカウトメールの送信、応募者対応などの「ノンコア業務」をプロに外部委託し、社内のリソースは「最終面接」や「候補者との口説き」といった、社員にしかできない「コア業務」に集中させる。この役割分担こそが、採用成功の鍵です。



4. SynApps's Insight:効率化の先にある「対話」の価値


私の視点から、選考プロセスにおける重要な示唆を一つ。

テクノロジー導入の目的を「ラクをするため」と履き違えてはいけません。真の目的は、「候補者一人ひとりと向き合う時間を作るため」です。

AI面接やATSで浮いた時間を使って、候補者のキャリアプランを真剣に聞く。不安に寄り添う。なぜ弊社があなたを必要としているかを熱く語る。

デジタル化が進めば進むほど、最後の決め手となるのは、極めてアナログな「熱意」や「人の温かみ」になります。

「Tech」は冷徹に判断するために使い、「Touch」は情熱的に口説くために使う。この使い分けができている企業こそが、優秀な人材を惹きつけ続けています。選考とは、企業が一方的に選ぶ場ではなく、「互いの未来を擦り合わせる対話の場」なのです。


【次号予告】

良い人材に内定を出しても、入社してくれなければ意味がありません。

次回は「③ 入社意欲の醸成・内定承諾支援」について。内定ブルーを払拭し、強力なライバル企業に競り勝つための「クロージング戦略」と「内定者フォロー」の極意に迫ります。


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【この記事について】

本記事は、名古屋の映像制作会社・株式会社SynAppsが執筆しました。私たちは「名古屋映像制作研究室」を主宰し、各業界の知見を収集・分析しながら、企業が抱える課題を映像制作の力で支援することを目指しています。BtoB領域における映像には、産業ごとの深い理解が不可欠であり、その知識と経験をもとに制作に取り組んでいます。


【執筆者プロフィール】

株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。

株式会社SynApps 会社概要はこちら → [当社について] [当社の特徴] [当社の実績]



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