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「非公開」が前提のB2B映像制作の真価

更新日:10月14日


はじめに:B2B映像の多くは「非公開」であるという事実


企業が制作する映像コンテンツのうち、実は大半が「一般公開されない非公開コンテンツ」です。社内研修、製品マニュアル、技術共有、営業プレゼン、業界展示会──いずれも限られた人にしか見せない映像です。

一方で、YouTubeやSNSの登場により、B2B領域でも「公開映像」が急増しました。採用動画や企業ブランディング映像などがそれにあたります。

では、非公開映像と公開映像はどのように異なるのか?そして、映像制作会社はその境界線をどのように設計すべきでしょうか。



1. 非公開コンテンツが主流だった時代


かつてのB2B映像制作は、「誰が見るか」が明確な閉じた世界でした。そのため、コンテンツの目的は「正確な情報伝達」であり、映像の演出やデザイン性よりも、正確さ・効率性・信頼性が重視されていました。

情報を間違いなく伝えることこそが価値であり、感情やエンタメ性はこっそり潜ませる――それが従来のB2B映像であり、制作者の矜持でした。


橋梁工事記録映画のタイトル

高度成長期の国家プロジェクトはその工程や成果を映画化することがあった。それらは日本初の技術の記録という意味もあったが、大方は主導した人の功績を誇示するためで、決して公開されるわけではなく、企業の重役や業界関係者、お役人など、限られた人たちが、閉ざされた部屋で上映される映画を見る程度であった。これが日本の企業VPのルーツである。上記の画像は架空。


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2. 公開プラットフォームが変えたB2B映像の価値観


YouTubeやSNSの普及により、映像の前提が「公開」へとシフトしました。企業が自らのブランドを直接発信できるようになり、B2B映像も「見られること」「共感を生むこと」が重要な分野が拡大しました。

この変化により、B2B映像の世界には次のような二極化が生まれています。


  • 公開映像: ブランドPR・採用・企業紹介など

  • 非公開映像: 製品技術・教育・営業支援・安全指導など


同じ「B2B映像」でも、目的も表現もまったく異なるのです。



3. 「公開されること」の本当の意味


「動画が公開されている」というだけで、あたかもそのコンテンツが社会的に成功しているように見えがちです。

しかし、本質はそこではありません。

公開とは単に「拡散される可能性がある」というだけの状態であり、コンテンツの価値は「誰に、どのようなメッセージを、どう伝えるか」で決まるのです。

媒体(YouTubeやSNS)はその一部にすぎません。媒体の力に頼らなくても届く“中身”を作れるかが、制作者の力量になります。



4. 媒体力ゼロからの企画 - 原点は「1対1のコミュニケーション」


本来、B2B映像は「1対1のコミュニケーション」が出発点です。たとえ1万人に見られる動画であっても、それは“一人の視聴者が理解し、納得し、行動する”ために設計されるべきです。

私たちは、どんな媒体であれ次の3点を重視します。


  1. 目的の明確化(誰に何を伝えるか)

  2. メッセージの構造化(理解しやすい順序)

  3. 映像表現の最適化(媒体に依存しない設計)


媒体はあくまで「コンテンツのプロフィールの一つ」に過ぎません。動画の本質は、中身そのものの力にあります。



5. 公開向けと非公開向けで異なるアプローチを


すべての動画が「一般視聴者向け」に作られているわけではありません。むしろ、B2B映像の多くは専門的で、一般の人には理解しにくい内容です。

そこで重要なのが、公開範囲と目的に応じた設計です。


目的

公開映像

非公開映像

対象

一般視聴者・社会

社内・取引先・技術者

表現

わかりやすく・印象的に

詳細・正確・専門的に

成果指標

ブランド認知・共感

理解度・実務効果

代表例

採用動画・企業紹介

マニュアル・技術解説・安全教育


6. 地味なテーマこそ「丁寧な制作」が求められる


B2B映像の中には、バズも派手な演出も存在しません。それでも、地味なテーマを丁寧に伝えることで、企業の信頼は確実に積み上がります。

「派手さよりも正確さを」「速さよりも理解を」それが、B2B映像の真の使命です。



7. まとめ - 非公開映像は「静かな力」を持つ


  • B2B映像の大半は、実は非公開で運用されている

  • 公開は目的ではなく、あくまで手段にすぎない

  • 本質は「限られた視聴者に正しく届く設計」にある

  • 地味なテーマこそ、真摯に、丁寧に伝える努力が必要


映像の世界では、「見られること」よりも「理解されること」が価値です。それを支えるのは、公開・非公開を問わず、コンテンツの中身と思想です。



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【執筆者プロフィール】

株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。

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