俯瞰(フカン)
「俯瞰」は、上から見下ろすように撮影する技法です。被写体を俯瞰することで、その全体像を把握しやすく、状況を客観的に捉えたい時に有効です。(詳細は以下)
例えば、都市の風景を撮影する際、高層ビル群を俯瞰することで、その都市の広がりや構造を表現できます。また、群衆の様子を俯瞰することで、その動きの流れや全体的な状況を把握できます。また、被写体との間に上下関係を生み出すこともできます。
スタジオ撮影においても、クレーンやキャットウォークから撮影セットの俯瞰の構図が撮影可能です。現代においてはドローンもその役割を担っています。
目的・効果
1. 全体像の把握
高い位置から撮影することで、被写体の全体像を把握しやすく、その構造や配置を理解することができます。例えば、都市の風景を撮影する際、高層ビル群を俯瞰することで、その都市の広がりや構造を表現できます。
2. 状況の把握
群衆の様子やイベント会場の様子を俯瞰することで、その動きの流れや全体的な状況を把握できます。
3. 客観的な視点
上から見下ろすことで、被写体との間に距離感が生まれ、客観的な視点から状況を捉えることができます。
主観的な意味での精神的俯瞰
「俯瞰」という言葉は、現代において「物事や状況を高いところから客観的に見る」という意味合いで広く使われています。しかし、この行為は、私たちが文字通り空の上に浮き上がって景色を眺めるかのような、現実には不可能な視点を想像することに類似しています。
人間は感情や経験、そして自身の利害といった主観にどうしてもとらわれがちな存在です。だからこそ、「俯瞰する」という試みは、本来主観的である人間の性(さが)に逆らい、可能な限り客観的であろうとする、意識的な努力や意図を表しているとも言えます。
つまり、「俯瞰」は単なる視覚的な行為ではなく、私たち自身の内面にある主観から一度距離を置き、より公平で全体的な認識を得ようとする、能動的かつ精神的なプロセスを指しています。
【関連記事】

【関連情報】
1. 寄り
被写体に近づいて撮影することで、その細部や表情をクローズアップにする技法です。被写体の感情や特徴を際立たせ、視聴者の視線を一点に集中させる効果があります。「寄り」の画を撮るには、被写体に対してカメラ自体が近づく場合と、レンズの倍率で近づく方法があります。
2. 引き
被写体から離れて撮影することで、広大な風景や全体の状況を捉える撮影技法です。被写体との距離感を生み出し、状況全体を把握させたい時に有効です。自然風景の撮影では、広大な大地や雄大な山々を捉えることで、そのスケールの大きさを表現できます。また、群衆の動きやイベント全体の雰囲気を捉える際にも、引きの構図は効果的です。
3. 鳥瞰
空から見下ろすように撮影する技法です。俯瞰よりもさらに高い位置から撮影することで、より広大な範囲を捉え、鳥の目線で被写体を見ることができます。例えば、自然風景の撮影では、大地や河川が織りなすパノラマ風景を表現できます。また、都市の開発状況や災害現場の広範囲な様子を捉える際にも、鳥瞰の構図は有効です。
4. あおり
カメラを上に向けたり下に向けたりして、被写体を斜めから撮影する技法です。被写体に動的な動きを与え、躍動感や不安感を表現できます。例えば、人物のアップショットでカメラを下からあおることで、その人物を威圧的に表現できます。また、建物を下からあおることで、その建物の高さを強調し、壮大な雰囲気を演出できます。
5. たたく
一般的にカメラを下に向けて撮影することを指します。まるでカメラのレンズを上から叩いて下に向けるようなイメージから、この表現が生まれたと考えられます。「少し叩き気味で・・・」というように使い、大きな角度で下に向ける時には使わないような気がします。

