動画・映像制作用語
【オプチカルフロー】
opticalflow
「オプチカルフロー」とは、編集ソフトにおいてフレームとフレームの間のピクセルの移動方向や速度を推定し、その情報に基づいて存在しない中間フレームを生成することで、滑らかなスローモーションや、異なるフレームレートの映像の自然な統合を行う機能です。
オプティカルフロー(Optical Flow)という名前は、その技術が連続する画像(動画)のフレーム間で、物体の見かけの動き(流れ)を解析することに由来しています。
通常の単純なスローモーションは、単に再生速度を遅くするだけなので、フレームとフレームの間が引き伸ばされ、カクカクとした動きになってしまいます。しかし、オプティカルフローなどの技術は、そのフレームとフレームの間に「中間フレーム」をソフトウェアが予測して生成します。
撮影時にすでにそのショットの編集方針が決まっている時は、フレームレートを上げて撮影しておくことはよく行いますが、意図せずにスローモーションを掛けることになった場合に有効です。
オプティカル(Optical)
「視覚の」「光学的に」という意味合いを持ちます。連続する画像は視覚情報であり、各ピクセルの明るさ(光の情報)の変化を捉えることから来ています。
フロー(Flow)
これは「流れ」という意味です。ソフトウェアは、時間経過に伴う各ピクセルの動きをベクトル(方向と速さを持つ矢印)として捉え、あたかも画面全体でピクセルの「流れ」が生じているかのように解析します。
どのようにして中間フレームを生成するのか?
1. 動きの解析 (モーショントラッキング)
ソフトウェアは、前後のフレームのピクセルの動きを解析し、どの物体がどの方向にどれくらいの速度で動いているかを推定します。
2. 中間フレームの補完 (オプティカルフロー)
解析された動きのベクトル情報に基づいて、元のフレームとフレームの間に自然に見える新しいフレームを生成します。
注意点
完璧ではない
複雑な動きや急激な変化がある映像では、生成された中間フレームに不自然な歪み(ワーピング)が生じることがあります。特に、前景と背景の分離が難しい場合や、細かいテクスチャが多い場合に起こりやすくなります。
処理に時間がかかる
中間フレームの生成には高度な計算処理が必要となるため、レンダリングに時間がかかる場合があります。
ソフトウェアによる違い
オプティカルフローのアルゴリズムはソフトウェアによって異なり、その精度や得意とする映像の種類にも差があります。
主要なノンリニア編集ソフトでの機能名
Adobe Premiere Pro
「タイムリマップ」機能内の「オプティカルフロー」オプション
DaVinci Resolve
「SpeedWarp」機能
Final Cut Pro
「オプティカルフロー」リタイミング
これらの機能は、スローモーションだけでなく、フレームレートの異なる素材を滑らかに統合する際にも活用できます。

【関連用語】
1. スローモーション
通常よりも遅い速度で映像を再生する表現手法です。動きを強調したり、肉眼では捉えにくい瞬間を詳細に見せたりする効果があります。単純に再生速度を下げますと、フレームが間引かれ、カクつきが生じることがあります。より滑らかなスローモーションを実現するためには、高いフレームレートで撮影するか、ソフトウェアによる補間技術が用いられます。
2. フレームレート
1秒間に表示される静止画の枚数を示す単位で、fpsと表記されます。数値が高いほど、動きが滑らかに見えます。一般的な動画は30fpsや60fpsで撮影されることが多いです。スローモーション処理を行う際、元のフレームレートが低いと、滑らかさを保つために工夫が必要です。
3. タイムリマップ
映像クリップの再生速度を時間軸上で動的に変化させる編集機能です。クリップ全体を一律に遅くしたり速くしたりするだけでなく、時間経過によって速度を細かく調整できます。スローモーションや早送り、一時停止などの効果を組み合わせて、映像に緩急をつけることができます。
4. モーショントラッキング
映像内の特定の物体や領域の動きを時間的に追跡する技術です。追跡した情報は、エフェクトを特定の物体に追従させたり、映像合成の際の基準点として利用したりします。手動または自動で追跡点を設定し、動きの軌跡を記録します。
5. レンダリング
編集作業が完了したプロジェクトを、最終的な視聴可能な動画ファイルとして出力する処理です。解像度、フレームレート、コーデック、ビットレートなどの設定を行い、目的に合った形式で書き出します。処理時間はプロジェクトの複雑さやPCの性能に依存します。