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SDGs映像制作は企業戦略の要に | 現状を打開する映像戦略

更新日:7月29日

はじめに


2015年9月、国連総会において「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が採択されてから約9年が経過し、2030年の目標達成期限まで残すところ6年となりました。SDGsは17の目標と169のターゲットから構成され、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す国際的な共通目標として、世界各国で様々な取り組みが展開されています。

日本においても、政府を中心として企業、自治体、市民社会組織、個人に至るまで、あらゆるレベルでSDGs達成に向けた努力が続けられています。しかし、現在の進捗状況を俯瞰すると、目標達成に向けては依然として多くの課題が残されているのが現実です。本稿では、日本社会におけるSDGsの現況を詳細に分析し、直面する課題を明確にした上で、今後の展望と必要な取り組みについて包括的に考察します。


sdgs

1  日本のSDGs達成度の現況


1.1 国際的な位置づけと推移


国連と連携する国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が発表する最新の「Sustainable Development Report 2025」によると、日本の達成度ランキングは167カ国中19位(達成スコア80.7)となり、前年の18位から1ランク下がる結果となりました。この結果は、日本のSDGs推進の現状を表す重要な指標として注目されています。

日本のSDGs達成度の推移を見ると、2016年の調査開始当初は比較的上位に位置していましたが、近年は横ばいもしくは微減の傾向が続いています。2023年における日本のSDGs達成度は79.4%で、21位でした。達成度ランキングが発表されるようになった2016年以来初の20位台への転落となり、過去最低の結果を記録したこともあり、改善への取り組みが急務となっています。

興味深いのは、上位国の顔ぶれです。トップは前年に続きフィンランド(スコア87.0)で5年連続の快挙となり、2位はスウェーデン(スコア85.7)、3位はデンマーク(スコア85.3)と、北欧諸国が上位を独占している状況が続いています。これらの国々は、社会保障制度の充実、ジェンダー平等の推進、環境保護政策の先進性などにおいて世界をリードしており、日本が学ぶべき点が多いと考えられます。



1.2 目標別達成状況の詳細分析


日本のSDGs17目標の達成状況を詳しく見ると、深刻な課題が浮き彫りになります。「達成済み」は目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」だけという状況であり、他の16目標については何らかの課題が残されています。

最も深刻な「深刻な課題がある」と判定された目標は、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、12「つくる責任、つかう責任」、13「気候変動に具体的な対策を」、14「海の豊かさを守ろう」、15「陸の豊かさも守ろう」の5つとなっています。17の目標のうち、前年から一つ増えた6つの項目が「最低評価」を受けていますという状況は、むしろ悪化の傾向を示しているとも言えるでしょう。

一方で、「重要な課題がある」とされた目標には、2「飢餓をゼロに」や7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」など6つの目標が含まれており、これらの分野でも一層の取り組み強化が必要な状況です。



1.3 世界全体の進捗状況との比較


日本の課題を理解するためには、世界全体の進捗状況との比較も重要です。国連が2024年6月28日に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)報告」の最新レポート2024版では、「SDGsの169のターゲットのうち、順調に進んでいるのは、わずか17%。3分の1以上は進捗が停滞、または後退している」という厳しい現状が示されています。

「残すところ6年となった今、現在の進捗状況は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成する見込みには遠く及ばない。大規模な投資と行動の拡大がなければ、よりレジリエントで繁栄した世界の青写真であるSDGsの達成は、予断を許さない状態に留まるだろう」という国連の警告は、日本だけでなく世界全体が直面している課題の深刻さを物語っています。

この文脈で見ると、日本の19位という順位は決して悪くはありませんが、先進国としての責任と能力を考慮すれば、より高い目標を設定し、積極的な取り組みを展開する必要があることは明らかです。


2  深刻な課題を抱える分野の詳細分析


2.1 ジェンダー平等(目標5)の課題


日本が最も深刻な課題を抱える分野の一つがジェンダー平等です。ジェンダー平等の目標5では国会議員の女性比率の低さや男女賃金格差が問題視されており、これらは長年にわたって日本社会が抱え続けている構造的な問題です。

政治分野における女性の参画は特に深刻で、衆参両院議員の中での女性比率は依然として国際的に見て極めて低い水準にとどまっています。この状況は、政策決定過程における多様性の確保と、社会全体の意見の適切な反映という観点から重大な問題となっています。

経済分野においても、男女間の賃金格差は依然として大きく、管理職における女性の比率も欧米諸国と比較して著しく低い状況が続いています。これらの課題は、女性の能力の十分な活用を阻害し、経済全体の生産性向上の妨げとなっているだけでなく、社会の公正性という観点からも大きな問題です。



2.2 候変動対策(目標13)の遅れ


気候変動対策の目標13では化石燃料の燃焼による二酸化炭素排出量の多さが指摘されており、日本の環境政策の限界が浮き彫りになっています。日本は2050年のカーボンニュートラル実現を宣言していますが、現在の取り組みペースでは目標達成が困難な状況です。

特に、石炭火力発電への依存度の高さは国際社会からも厳しい批判を受けており、エネルギー政策の根本的な見直しが急務となっています。再生可能エネルギーの導入促進、省エネルギー技術の普及、産業構造の転換など、包括的なアプローチが必要な状況です。

また、温室効果ガス削減だけでなく、気候変動への適応策についても十分な対策が取られているとは言い難く、極端気象の増加に対する社会インフラの脆弱性が懸念されています。



2.3 持続可能な消費と生産(目標12)の課題


生産と消費に関する目標12ではプラスチックごみの輸出量の多さが問題となっており、日本の廃棄物処理政策の限界が露呈しています。従来、日本は大量のプラスチック廃棄物を海外に輸出することで国内の処理問題を解決してきましたが、これは根本的な解決策とは言えません。

循環経済への転換、製品ライフサイクル全体での環境負荷削減、消費者行動の変革など、生産と消費のパターンを根本的に見直す必要があります。特に、大量生産・大量消費・大量廃棄の経済モデルからの脱却は、持続可能な社会の実現に向けて不可欠な取り組みです。



2.4 海洋・陸上生態系の保護(目標14・15)


海洋環境保護の目標14ではトロール漁などの漁法が海の生態系に悪影響を及ぼすという指摘があり、日本の水産業のあり方が問われています。持続可能な漁業への転換、海洋保護区の設定、海洋汚染の防止など、海洋環境の保全に向けた総合的な取り組みが必要です。

陸上の生態系保護についても、森林の持続可能な管理、生物多様性の保全、土地の持続可能な利用など、多方面にわたる課題があります。これらの問題は、日本の自然環境の豊かさを将来世代に継承するという観点からも極めて重要です。


3  政府の取り組みと制度的枠組み


3.1 SDGs推進本部の設置と活動


日本政府は2016年5月、内閣総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」を設置し、政府一体となってSDGs達成に向けた取り組みを進めています。令和6年12月25日には持続可能な開発目標(SDGs)推進本部(第15回会合)が開催されるなど、定期的に政府の取り組み状況の確認と今後の方針の検討が行われています。

SDGs推進本部では、「SDGs実施指針」の策定・改定、年次報告書の作成、各省庁の取り組みの調整などを行っており、政府全体の司令塔としての役割を果たしています。また、SDGs達成に向けた政府の取組一覧(2024年度)を公表するなど、透明性の確保にも努めています。



3.2 ジャパンSDGsアワードの実施


2017年からSDGs推進本部が主催となり、ジャパンSDGsアワードが設立されました。これは、SDGs達成に向けて優れた取り組みを行っている企業や団体を表彰する制度です。このアワードは、社会全体でのSDGs推進の機運醸成と、優秀事例の普及を目的として設立されました。

2020年7月時点で、アワードは3度実施され、毎年200件から300件の応募の中から10数団体が表彰を受けており、日本社会におけるSDGsへの関心の高さを示しています。このような表彰制度は、企業や団体のSDGsへの取り組みを促進し、社会全体での認識向上に重要な役割を果たしています。



3.3 各省庁の主導的役割


経済産業省をはじめとする各省庁は、それぞれの所管分野においてSDGs推進に取り組んでいます。経済産業省では、企業のSDGs経営の推進、技術革新による社会課題解決、国際協力などを通じて目標達成に貢献しています。

国連ハイレベル政治フォーラムにおいて穂坂外務大臣政務官がステートメントを発出するなど、外務省は国際的な協力と日本の取り組みの発信において中心的な役割を担っています。このように、各省庁がそれぞれの専門性を活かしながら、政府全体としてSDGs推進に取り組む体制が構築されています。



3.4 地方自治体との連携


政府は、SDGs推進において地方自治体との連携も重視しています。「SDGs未来都市」の選定や「自治体SDGsモデル事業」の推進など、地域レベルでのSDGs推進を支援する制度を整備しています。これらの取り組みにより、全国各地でSDGsに基づく地域づくりが進められています。

地方自治体は、住民に最も近い行政機関として、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」社会の実現において重要な役割を果たしています。地域の特性を活かした独自の取り組みが全国で展開されており、これらの経験の共有と横展開が今後の課題となっています。


4  企業・経済界の取り組み状況


4.1 企業のSDGs取り組み状況


日本企業のSDGsへの取り組み状況について、29.7%の企業が現在、SDGsの意味等を理解し、取り組んでいることが明らかになった。取り組みたい企業と合計すると『SDGsに積極的』な企業は調査開始以降で最高水準の54.5%という調査結果が示されています。この数字は、日本企業におけるSDGsへの関心と取り組み意欲の高まりを表していると言えるでしょう。

しかし、取り組みの内容を詳細に見ると、多くの企業がSDGsを企業価値向上やマーケティングの手段として活用している側面が強く、実質的な社会課題解決への貢献度については疑問視する声もあります。真のSDGs達成に向けては、企業が本業を通じてどのような社会的価値を創造しているかが重要な評価基準となります。



4.2 大企業の先進的取り組み事例


江崎グリコの食品ロス削減キャンペーンや、SUNTORYのサントリー天然水ではじめるサステナライフキャンペーンなど、大企業による具体的な取り組みが注目されています。これらの取り組みは、企業の事業活動と社会課題解決を結びつけた好例として評価されています。

江崎グリコの食品ロス削減キャンペーンは、目標12「つくる責任、つかう責任」に直接的に貢献する取り組みとして、消費者の意識変革と具体的な行動変容を促しています。一方、サントリーの取り組みは、目標6「安全な水とトイレを世界中に」や目標14「海の豊かさを守ろう」に関連する包括的なサステナビリティ戦略として展開されています。



4.3 中小企業の取り組み課題


大企業と比較して、中小企業のSDGs取り組みには様々な制約があります。人的リソースの不足、専門知識の不足、資金的制約などにより、体系的なSDGs推進が困難な状況にある企業も多く存在します。

しかし、中小企業こそが地域に密着した事業活動を通じて、目標8「働きがいも経済成長も」や目標11「住み続けられるまちづくりを」などの目標達成に重要な役割を果たす可能性があります。中小企業のSDGs推進を支援する制度の充実と、実践的なガイドラインの提供が今後の重要な課題となっています。



4.4 ESG投資の拡大とその影響


近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の拡大により、企業のSDGsへの取り組みが投資判断の重要な要素となっています。この傾向は、企業にとってSDGsへの取り組みが単なる社会貢献活動ではなく、事業戦略上の必須要件となっていることを意味しています。

特に、機関投資家による長期的な視点での投資判断において、企業のサステナビリティ戦略は重要な評価基準となっており、これが企業の行動変容を促進する重要な要因となっています。一方で、「グリーンウォッシュ」と呼ばれる表面的な取り組みに対する批判も高まっており、真の価値創造が求められています。


5  市民社会・NGO・NPOの役割


5.1 市民社会組織の多様な取り組み


日本の市民社会組織は、SDGs推進において極めて重要な役割を果たしています。NGOやNPOは、政府や企業が対応困難な社会課題に対して、住民に最も近い立場から具体的な解決策を提供しています。特に、目標1「貧困をなくそう」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標4「質の高い教育をみんなに」などの分野では、市民社会組織の活動が不可欠です。

これらの組織は、政府政策の実施における重要なパートナーとしての役割も果たしており、政策立案過程への参画や、政策実施の現場での協力を通じて、より効果的なSDGs推進に貢献しています。また、国際協力の分野では、日本のNGOが開発途上国でのSDGs達成支援において重要な役割を担っています。



5.2 市民の意識向上と行動変容


SDGsの達成には、市民一人ひとりの意識向上と行動変容が不可欠です。消費行動の変化、ライフスタイルの見直し、社会参画の促進など、市民レベルでの取り組みがSDGs達成の基盤となります。

近年、環境問題への関心の高まりとともに、持続可能な消費への意識も向上していますが、まだ十分なレベルに達しているとは言えません。市民の意識向上と具体的な行動変容を促進するための教育プログラムや啓発活動の充実が重要な課題となっています。



5.3 社会イノベーションの創出


市民社会組織は、従来の枠組みにとらわれない革新的なアプローチで社会課題解決に取り組んでおり、社会イノベーションの重要な担い手となっています。テクノロジーの活用、異なるセクター間の連携、新しいビジネスモデルの開発など、多様な手法で社会変革を推進しています。

これらの取り組みは、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」社会の実現に向けて、具体的で実効性のある解決策を提供しており、政府や企業の取り組みを補完する重要な役割を果たしています。


6  教育分野におけるSDGs推進


6.1 学校教育での取り組み


SDGs達成には、次世代を担う若者への教育が極めて重要です。文部科学省は、学習指導要領の改訂を通じて、持続可能な社会の創り手を育成する教育(ESD:Education for Sustainable Development)を推進しています。

小学校から高等学校まで、各段階に応じてSDGsの理念を学習カリキュラムに組み込み、児童・生徒が地球規模の課題を自分事として捉え、解決に向けて行動する力を育成しています。また、総合的な学習の時間や特別活動を通じて、実践的な学習機会も提供されています。



6.2 高等教育機関の貢献


大学をはじめとする高等教育機関は、SDGsに関する研究・教育の中核的役割を担っています。多くの大学がSDGsを軸とした教育プログラムを展開し、学際的なアプローチで社会課題解決に取り組む人材の育成に努めています。

また、大学は研究機関としての機能を活かし、SDGs達成に向けた科学技術的な解決策の開発や、政策提言のための基礎研究を行っています。産学連携によるイノベーション創出や、地域社会との協働による課題解決プロジェクトなど、多様な形で社会貢献を行っています。



6.3 生涯学習とリカレント教育


SDGsの推進には、社会人を対象とした継続的な学習機会の提供も重要です。急速に変化する社会情勢の中で、新しい知識やスキルを習得し、持続可能な社会の構築に貢献できる人材を育成する必要があります。

企業研修、公開講座、オンライン学習プラットフォームなど、多様な形態での学習機会が提供されており、働きながら学ぶリカレント教育の充実が図られています。これらの取り組みは、社会全体のSDGsリテラシー向上に寄与しています。


7  地域レベルでのSDGs推進


7.1 SDGs未来都市の取り組み


政府は2018年から「SDGs未来都市」の選定を開始し、自治体レベルでのSDGs推進を支援しています。選定された都市は、地域の特性を活かした独自のSDGs推進戦略を策定し、住民参加型の取り組みを展開しています。

これらの都市では、環境保護、社会包摂、経済発展の三側面を統合的に推進し、地域課題の解決と持続可能な発展の両立を図っています。成功事例の横展開や、都市間の連携・協力も進められており、全国レベルでのSDGs推進の基盤となっています。



7.2 地域コミュニティの参画


SDGsの理念である「誰一人取り残さない」社会の実現には、地域コミュニティレベルでの取り組みが不可欠です。町内会、自治会、商店街組織、ボランティア団体など、様々な地域組織がSDGs推進に参画しています。

地域レベルでの取り組みの特徴は、住民のニーズに直接対応した具体的で実践的な活動が展開されることです。高齢者支援、子育て支援、防災対策、環境保護など、日常生活に密着した課題解決を通じて、SDGsの目標達成に貢献しています。



7.3 地方創生との連携


SDGsと地方創生は、持続可能な地域づくりを目指すという点で共通する理念を持っています。多くの地方自治体が、地方創生の戦略にSDGsの視点を組み込み、地域の魅力向上と課題解決を同時に推進しています。

人口減少、高齢化、産業の空洞化など、多くの地方が直面する課題の解決にSDGsのアプローチを活用することで、より効果的で持続可能な地域づくりが期待されています。また、地域資源の活用や、関係人口の創出など、新しい地域活性化の手法も模索されています。


8  国際協力とグローバルパートナーシップ


8.1 ODAを通じた国際貢献


日本は政府開発援助(ODA)を通じて、開発途上国のSDGs達成支援に積極的に取り組んでいます。従来の経済協力に加えて、社会課題解決や環境保護にも重点を置いた包括的な支援を展開しています。

特に、日本の技術力や経験を活かした協力が注目されており、インフラ開発、環境技術の移転、人材育成支援などの分野で重要な貢献を行っています。これらの取り組みは、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の実現に直接的に寄与しています。



8.2 多国間協力の推進


国連をはじめとする国際機関との協力、G7・G20などの国際会議での政策調整、地域協力機構を通じた連携など、多層的な国際協力を展開しています。これらの取り組みを通じて、グローバルなSDGs推進における日本の責任を果たしています。

また、気候変動、海洋汚染、感染症対策など、国境を越えた課題に対しては、国際的な協力なしには解決が不可能であり、日本の国際的なリーダーシップが期待されています。



8.3 民間セクターの国際展開


日本企業の海外事業展開を通じたSDGs貢献も重要な要素です。現地での雇用創出、技術移転、社会インフラの整備など、企業活動を通じた開発途上国の社会経済発展への貢献が期待されています。

また、国際的なサプライチェーンにおける人権配慮、環境保護、労働者の権利保護など、責任ある企業行動の推進も重要な課題となっています。これらの取り組みは、グローバルなSDGs達成に向けた日本の重要な貢献となります。


9  現在直面する主要課題の分析


9.1 構造的課題の根深さ


日本のSDGs推進において最も深刻な問題は、多くの課題が構造的で根深いものであることです。ジェンダー不平等、気候変動への対応遅れ、持続可能でない消費パターンなどは、単発の政策や取り組みでは解決困難な構造的課題です。

これらの課題の解決には、社会システム全体の変革、価値観の転換、制度の根本的見直しなど、長期的かつ包括的なアプローチが不可欠です。例えば、ジェンダー不平等は単に法律や制度を変えるだけでなく、社会に根付く性別役割分担意識や無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を変えていく必要があります。



9.2 表面的な取り組み(グリーンウォッシュ)の蔓延


企業の取り組みが活発化する一方で、実質的な変革を伴わない「グリーンウォッシュ」(上辺だけの環境配慮)が懸念されています。これは、SDGsを単なる広報戦略やマーケティングツールとして利用する傾向であり、真の社会課題解決にはつながりません。

企業がSDGsに真摯に取り組むためには、事業活動の根本を見直し、サプライチェーン全体での環境・社会への影響を評価・改善していく必要があります。投資家や消費者の厳しい目が、企業の真剣な取り組みを促す重要な要素となります。



9.3 官民連携の課題とサイロ化


政府、企業、市民社会など、多様なステークホルダー間の連携は進んでいるものの、依然として「サイロ化」(組織間の縦割り)の課題が残っています。各組織が独立して活動する傾向が強く、情報や資源の共有が不十分なため、相乗効果を生み出しにくい状況です。

SDGsの複雑な目標を達成するには、異なるセクターが連携し、それぞれの専門知識とリソースを持ち寄ることが不可欠です。より効果的な官民連携のプラットフォームを構築し、持続的な対話と協働を促進する仕組みづくりが求められています。


10  SDGsが進まない本当の理由と、今後のあり方


10.1 SDGsが進まない本当の理由


SDGsの達成が世界的に停滞している背景には、共通の課題が存在します。それは、「誰一人取り残さない」という理念とは裏腹に、SDGsが経済的・政治的利益に左右されやすいという現実です。



10.1.1 目先の利益優先


多くの企業や国家にとって、SDGsへの本格的な取り組みは短期的なコスト増大や競争力低下のリスクと捉えられがちです。気候変動対策やジェンダー平等に向けた投資は、すぐに収益に結びつくとは限らず、目先の経済成長が優先される傾向にあります。



10.1.2 不十分なインセンティブ


SDGsに取り組むことによる明確で強力なインセンティブ(優遇措置、市場からの評価など)が不足しているため、自主的な取り組みの加速には限界があります。特に、環境規制の緩い国や、SDGsへの関心が低い市場では、取り組みが後回しにされやすい状況です。



10.1.3 意識と行動のギャップ


SDGsへの認知度は高まっていますが、「自分事」として捉え、具体的な行動に移すところまでには至っていない人が依然として多いのが現状です。個人レベルでの行動変容の重要性が十分に認識されておらず、社会全体での変革の機運が生まれにくい状況です。



10.1.4 グローバルな課題の複雑性


気候変動や貧困、紛争といったグローバルな課題は、特定の国や組織だけでは解決できないほど複雑に絡み合っています。国際的な協調が不可欠であるにもかかわらず、各国の国益や政治的対立がSDGs達成に向けた連携を阻害しています。



10.2 今後のあり方:停滞を打破するために


現状を打破し、SDGsの達成期限である2030年に向けて進捗を加速させるには、以下の3つの視点が不可欠です。


10.2.1  「SDGsの経済化」から「SDGsを社会のOSにする」へ


SDGsを経済活動の「付加価値」や「マーケティングツール」として捉えるのではなく、企業活動や社会システムの根幹をなすOS(オペレーティングシステム)と位置づける必要があります。SDGsの理念を、事業戦略、組織文化、個人の価値観に深く組み込むことで、持続可能な社会への転換を可能にします。



10.2.2 インセンティブの再設計と規制の強化


SDGs達成に貢献する企業や個人を積極的に評価・支援する「ポジティブ・インセンティブ」を強化する一方、環境や社会に悪影響を与える活動に対しては、炭素税の導入や厳格な規制強化といった「ネガティブ・インセンティブ」を適用する仕組みが必要です。これにより、市場の力で持続可能な行動を促します。



10.2.3 「小さな行動」の連鎖を可視化する


個人の小さな行動が大きな変化を生むことを示すことで、意識と行動のギャップを埋めることができます。SDGsに取り組む人々のストーリーや、具体的な行動がもたらす社会的なインパクトを映像コンテンツなどを通じて可視化し、共感と行動の連鎖を生み出すことが重要です。


11  新しい時代の映像制作の役割


11.1  「目先の利益優先」への問いかけ:短期的価値と長期的価値の再考



コンテンツの方向性

一見すると経済的合理性に反するようなSDGsの取り組みが、長期的に見ていかに企業や社会全体の持続可能性を高めるのかを、具体的な事例を通して多角的に提示します。


具体的なアイデア「未来への投資」シリーズ


  • エピソード1:再生可能エネルギーへの転換による初期投資の負担と、長期的なエネルギーコスト削減、環境負荷低減、新たな雇用創出のストーリーを描く。

  • エピソード2:サプライチェーンにおける人権尊重の取り組みが、一時的なコスト増につながる一方で、ブランドイメージ向上、リスク低減、従業員のエンゲージメント向上に貢献する事例を紹介する。

  • エピソード3:自然資本への投資(森林保全、水資源保護など)が、短期的には収益に繋がりにくいものの、長期的な事業継続の基盤となり、新たなビジネスチャンスを生む可能性を示す。


視聴者への問いかけ

「私たちの選択は、目先の利益だけを追求するものですか?それとも、次世代にとってより良い未来への投資ですか?」



11.2 「不十分なインセンティブ」への問いかけ:内発的動機と共感の醸成


コンテンツの方向性

金銭的なインセンティブだけでなく、SDGsに取り組むことによる個人の充足感、社会とのつながり、未来への希望といった内発的な動機に焦点を当て、共感を呼び起こします。


具体的なアイデア:「小さな選択、大きな未来」ドキュメンタリー


  • 日々の生活の中で、サステナブルな選択(地産地消、省エネ、フェアトレード製品の利用など)を実践している人々のライフスタイルや価値観を紹介する。彼らの行動が、どのように地球や社会に貢献しているかを具体的に描き出す。

  • SDGs達成に取り組むNPO/NGOの活動に密着し、その活動を支える人々の情熱や使命感、そして活動を通して得られる喜びや達成感に焦点を当てる。


視聴者への問いかけ

「私たちの行動の源泉は、常に外部からの評価や報酬ですか?内なる喜びや、より良い社会への貢献こそが、真のモチベーションではないでしょうか?」



11.3 「意識と行動のギャップ」への問いかけ:具体的な行動への橋渡し


コンテンツの方向性

SDGsの重要性を理解していても、具体的に何をすれば良いかわからないという層に向けて、身近なレベルで実践できるアクションを提案し、行動への一歩を踏み出すきっかけを提供します。


具体的なアイデア:「#できることからはじめよう」チャレンジ動画


  • 各SDGs目標に紐づいた具体的なアクション(例:食品ロス削減レシピ、プラスチックフリー生活のヒント、地域の清掃活動への参加呼びかけなど)を短尺動画で紹介し、視聴者自身が気軽にチャレンジできるような雰囲気を作る。

  • 視聴者からのチャレンジ投稿を促し、成功事例を共有することで、参加意識を高め、行動の輪を広げる。


インタラクティブコンテンツ:

  • 視聴者の選択によってストーリーが分岐するインタラクティブ動画を制作し、自身の行動がSDGsの目標達成にどのように影響するのかをシミュレーション体験できるようにする。


視聴者への問いかけ

「理想の未来を描くだけでなく、その実現のために今日からできることは何でしょうか?小さな一歩が、大きな変化を生み出すはずです。」



11.4 「グローバルな課題の複雑性」への問いかけ:つながりと共創の意識


コンテンツの方向性

地球規模の課題は一国や一企業の努力だけでは解決できないことを示し、多様な主体との連携や協働の重要性を訴えます。


具体的なアイデア:「Global Connectors」シリーズ


  • 異なる国や地域で、それぞれの課題解決に取り組む人々をオンラインで繋ぎ、意見交換や共同プロジェクトの立ち上げを支援する様子を追うドキュメンタリー。

  • 国際的な企業間連携や、政府・NGO・研究機関などの多様なステークホルダーによる共創事例を紹介し、それぞれの強みを活かした問題解決の可能性を示す。


VR/AR体験コンテンツ

  • 気候変動による影響をVRで体験したり、フェアトレード製品の生産者の生活をARで垣間見たりすることで、グローバルな課題をより身近に感じさせ、他者への共感や連帯感を育む。


視聴者への問いかけ

「私たちが直面する課題は、決して孤立したものではありません。世界中の人々と手を取り合い、共に未来を創造していくために、何ができるでしょうか?」



これらのアイデアは、単に情報を提供するだけでなく、視聴者自身の内面や行動に深く働きかけ、SDGs達成に向けた主体的な参加を促すことを目指しています。これらのコンセプトを魅力的な映像コンテンツとして実現することで、より多くの人々の意識変革と行動変容を促進し、「SDGsが進まない本当の理由」で指摘された課題の克服に貢献できると確信しています。



11.5 まとめと展望


SDGs達成期限の2030年が迫る中、日本社会におけるSDGsの進捗は、一部の成果が見られるものの、全体としては停滞気味であり、多くの課題が残されています。特に、ジェンダー平等や気候変動対策といった構造的な問題は、短期間での解決が困難な状況です。

しかし、これらの課題を乗り越えるための鍵は、SDGsを「経済活動の制約」ではなく、「未来を創るための羅針盤」として捉え直すことにあります。政府、企業、市民社会、そして私たち一人ひとりが、SDGsを社会のOSとして内面化し、それぞれの立場で具体的な行動を積み重ねていく必要があります。

残された6年間で目標達成を果たすためには、目先の利益を越えた長期的な視点に立ち、真の変革を求める勇気が求められます。SDGsを推進する取り組みを、表面的なものから根本的な変革へと深化させることが、持続可能な日本の未来を築くための唯一の道と言えるでしょう。


SDGsを「自分事」として捉え、行動変容を促すようなコンテンツを企画・制作することは、これからの時代に不可欠な役割となるでしょう。

私たち株式会社SynAppsは、単に映像を制作するだけでなく、SDGsの概念を深く理解し、企画段階からお客様と伴走するプロフェッショナルです。

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