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商社の成り立ちと変遷からみたDXとEXを映像にする

更新日:21 時間前

エグゼクティブ・サマリー


日本の「商社」は、その成立以来、モノを仲介する役割だけではなく、時代の要請に応えながら自らのビジネスモデルを絶えず進化させてきた、世界でも極めて特異な存在です。江戸時代末期の開国から、明治期の富国強兵、そして戦後の経済復興を経て、商社は国家的な発展に深く貢献してきました。高度経済成長期にメーカーが力をつけ、「商社不要論」が叫ばれた際にも、商社は情報提供、物流、金融といった付加価値機能を追加することで、この試練を乗り越えています。現代においては、従来のトレーディング業務に加え、事業投資を収益の主軸に据えることで、事業の創造者・運営者へと変貌を遂げているのです。


現在、総合商社が描く戦略の中心には、DX(デジタルトランスフォーメーション)とEX(エネルギートランスフォーメーション)という二つの変革軸が存在します。これらの変革は、単なる業務効率化や環境貢献にとどまらず、新たなビジネスモデルを創出し、不安定な資源価格や地政学的リスクといった主要な課題を克服するための不可欠な経営戦略となっています。


また、商社の存在は東京に本社を置く大手総合商社に限定されません。特に自動車産業が盛んな名古屋(愛知県)には、豊田通商のように特定の顧客との強固な関係を築く企業や、ニッチな分野で高い専門性を誇る数多くの専門商社が存在し、地域経済を支える重要な役割を担っています。


さらに、商社は収益を直接生み出さない映像コンテンツを、IR(投資家向け広報)、採用活動、企業ブランディングといった多様な目的で戦略的に活用しています。これは、従来の「モノとカネ」のビジネスから、ブランドや人材といった無形資産の価値向上に注力する、現代的な企業経営の方向性を示唆しています。本レポートは、商社がその歴史の中でどのように変容し、現代においてどのような戦略を描き、いかなる課題に立ち向かっているのかを包括的に分析します。


目次

  • 1.1. 日本商社の黎明期:富国強兵と貿易の担い手

  • 1.2. 試練と進化:商社不要論の克服

  • 1.3. 総合商社特有のビジネスモデル確立の経緯

  • 2.1. 「事業投資」を軸とした収益モデルの深耕

  • 2.2. DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の進化

  • 2.3. EX(エネルギートランスフォーメーション)と持続可能な成長

  • 2.4. 現代商社の主要課題

  • 3.1. グローバルとローカルを結ぶ「豊田通商」

  • 3.2. 愛知県の専門商社群:自動車産業を支える存在

  • 3.3. 地域密着型ビジネスモデルの特質

  • 4.1. コーポレートブランディングと企業文化の発信

  • 4.2. IR(投資家向け広報)と採用活動における活用

  • 4.3. 顧客コミュニケーションと付加価値提供


商社のイメージ


第1章: 日本型ビジネスモデル「商社」の成立と歴史的変遷


1.1. 日本商社の黎明期:富国強兵と貿易の担い手


日本の商社の起源は、江戸時代末期の1865年に坂本龍馬と勝海舟が組織した「亀山社中」に遡るとされています。同社は、物資の運搬や貿易の仲介を主な事業とし、倒幕運動に必要な軍備を薩摩藩や長州藩に販売していました。この初期の形態は、単なる商業活動を超えて、特定の政治的・社会的な目的を達成するための物流・金融機能を提供していたという点で特筆されます 1


明治時代に入ると、新政府が掲げた「富国強兵」「殖産興業」政策のもとで、商社は日本の近代化を担う重要な存在へと成長しました。主な役割は、欧米列強に追いつくため、外国から先端技術や物資を輸入し、同時に国内で生産された鉱物資源や繊維原料、食品を輸出することで外貨を獲得することでした 1。この時期の商社は、単なる営利企業ではなく、国全体の産業発展を後押しし、国際競争力を強化する公共的な使命を帯びていたのです 1


戦後、GHQ(連合国軍総司令部)による財閥解体が行われ、旧財閥系の大手商社は一時解散を余儀なくされました。しかし、1954年の三菱商事、1959年の三井物産の再誕生を皮切りに、各社は再結集を果たし、日本の経済復興の牽引役として再び台頭しました。1950年代の商社は、戦後の輸出拡大という課題に直面し、生産技術の導入や海外資源の獲得を支援することで、日本の経済復興に大きく貢献しています 1。この過程で、商社は貿易だけでなく、金融、資源、エネルギー、食品など多岐にわたる領域で事業を展開し、日本独自の包括的なビジネスモデルを築き上げたのです 5



1.2. 試練と進化:商社不要論の克服


日本の総合商社は、その歴史の中で幾度となく存続の危機に直面してきました。第一の大きな試練は、高度経済成長期の1960年代に叫ばれた「商社不要論」です 1。急成長を遂げた自動車や家電メーカーなどが、事業規模と資金力を背景に、独自の原材料調達や販売網を構築し始めたため、中間業者としての商社の役割が疑問視されたのです 2


この課題に対し、商社は単なる仲介業務から脱却する戦略をとりました。メーカーが内製化できない高度な物流ネットワークの構築、新たな海外市場の開拓、そして高度な情報提供といった付加価値機能を提供することで、自らの存在意義を再確立しました 1


1990年代には、バブル崩壊による不良資産の償却という経営課題に加え、インターネットの普及により、二度目の「商社不要論」が浮上しました 2。情報が瞬時に世界を駆け巡るようになり、商社の「情報仲介者」としての役割が再び問われたのです。この時代、商社は不採算事業からの撤退や再編といった「選択と集中」を進めると同時に、発展途上国の経済発展を支援する形での「事業投資」に本格的に注力し始めました 1。これは、単なる「仲介機能」の提供者から、自らリスクを負って事業を創出・運営する「事業創造者」へとビジネスモデルをさらに進化させたことを示しています。



1.3. 総合商社特有のビジネスモデル確立の経緯


日本独自のビジネスモデルとして発展した総合商社は、その収益構造を「トレーディング」と「事業投資」の二つの柱にしています 8。従来の収益源であるトレーディング(貿易仲介)で培われる、広範なサプライチェーンにおける市場の洞察力や、グローバルなネットワークは、新たな事業投資の機会を見出す上で極めて重要な役割を果たしています。一方で、事業投資によって得られる安定的な収益源や、投資先の持つ技術・ノウハウは、既存のトレーディング業務の効率を高めるという好循環を生み出しているのです 9


この「車の両輪」モデルは、欧米の投資ファンドが短期的なリターンを追求する傾向にあるのとは異なります 10。日本の商社が行う事業投資は、長期的な視点での事業の「持続可能な成長」を目的とし、投資先企業に経営人材を派遣するなど、深く経営に参画する「経営参画型投資」が主流となっています 2。この長期的なコミットメントと、多様な事業と地域に分散投資することでリスクを管理する能力こそが 11、幾度となく試練を乗り越え、日本の商社を世界に類を見ないユニークな存在たらしめている核心なのです。



第2章: 現代商社が描く戦略と直面する課題


2.1. 「事業投資」を軸とした収益モデルの深耕


現代の総合商社の収益構造は、従来の貿易手数料(コミッション)に加えて、投資先企業から得られる多様な収益が中心となっています 7。この事業投資は、単なる資金提供にとどまらず、商社が持つ多角的なネットワークや経営ノウハウを注入することで、事業そのものの価値を向上させることを目指しています。


具体的な成功事例として、コンビニエンスストア事業への投資が挙げられます。伊藤忠商事はファミリーマートを、三菱商事はローソンを経営しており 2、もはや単なる投資先ではなく、商社グループの主要な事業基盤となっています。特に三菱商事は、KDDIと共同でローソンを経営し、「リアル×デジタル×グリーン」を組み合わせた新たな生活者価値の創出を目指しています 12。これは、企業間の垣根を越えたエコシステムを構築し、従来の産業の枠組みを超えた新たな価値創造に挑戦する、現代商社の姿を象徴しています。


また、伊藤忠商事はファミリーマートと連携し、異例の速さでプロテイン飲料『タンパクチャージ』を開発・販売しました 14。これは、商社が持つ調達・物流ネットワークに、小売店という顧客接点を組み合わせることで、既存のビジネスを組み合わせて新規事業を生み出す、商社ならではの強みを示しています。



2.2. DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の進化


現代の商社にとって、DXは単なる業務効率化ツールではなく、競争力を維持し、新たなビジネスを創出するための不可欠な経営戦略です 11


各社の中期経営計画においても、DXへの積極的な投資方針が示されています。三菱商事は、食品ロスや二酸化炭素排出量の削減といった社会課題の解決にDXを活用しています 16。これは、サプライチェーン全体のデータ活用を通じて、より持続可能なビジネスモデルを構築しようとする取り組みです。住友商事も、約900社のグループ会社全体で利用できるDX推進基盤「SCデジタル基盤」を整備し、グループ全体の業務効率化とコスト削減を図っています 16


伊藤忠商事は、企業理念である「三方よし」をDX戦略にも応用し、「三方よしのDX」を掲げています 17。具体的な取り組みとして、消費者データと味覚データを掛け合わせて商品開発を支援する「FOODATA」サービスを実用化するなど、データ活用を起点とした顧客ニーズの掘り起こしに注力しています 17。また、丸紅はチリのウニ工場にAI画像認識システムを導入したり、穀物生産・輸送データを統合するプロジェクトを進めたりするなど、現場の課題解決に直接関わるDXを推進しています 20


三井物産も、サプライチェーンの効率化やスマート農業といった新規事業創出にDXを活用する方針を掲げています 21。これらの事例は、商社のDX戦略が、単に社内業務の自動化にとどまらず、既存事業の収益性を高めると同時に、新たなビジネスモデルを創造するという、「両利きの経営」を実践していることを示しています。



2.3. EX(エネルギートランスフォーメーション)と持続可能な成長


カーボンニュートラル社会の実現は、商社にとっての喫緊の課題であると同時に、新たな成長機会でもあります 22。各社は、エネルギー・資源の安定供給と社会全体の低・脱炭素化を両立させるEX戦略を推進しており、中期経営計画において多額の投資計画を公表しています。例えば、三菱商事は2030年までにEX関連分野へ約2兆円規模の投資を計画しています 23


この戦略の具体的な方向性は多岐にわたります。三井物産や丸紅は、洋上風力発電への投資に注力しています 22。伊藤忠商事や丸紅は、水素や燃料アンモニアの供給網構築を推進しています 25。三菱商事はオランダで再生可能エネルギーを活用したグリーン水素の製造・販売事業を設立するなど、次世代エネルギーサプライチェーンの構築に力を入れています 23。豊田通商も、国内最大級の風力発電設備の竣工や、車載用電池工場への追加投資などを実行し、脱炭素社会に向けた事業を強化しています 26


これらの取り組みは、単なる環境貢献活動ではなく、経営戦略の中心に位置づけられています。既存の化石燃料関連事業の収益を、再生可能エネルギーや次世代エネルギーといった成長分野に再投資し、収益ポートフォリオを多様化させることで、資源価格の変動リスクを緩和し、持続可能な収益基盤を確立することが狙いです 11



2.4. 現代商社の主要課題


商社が現代において直面する主要な課題は以下の通りです。


資源価格の変動リスク

鉄鉱石や石炭、石油といった資源関連事業は、業績に大きな影響を与えます 25。資源価格の高騰は収益増をもたらしますが、その変動は予測が難しく、大きな収益の波を生みます。このリスクに対処するため、商社各社は非資源分野への投資を加速させ、バランスの取れた収益構造の構築を最重要課題としています 11


地政学的リスクと国際競争激化

国際的な紛争や景気後退の懸念など、不確実性の高まりは、投資案件のリスクを増大させます 29。特に、近年の中国経済の減速や地政学的リスクの高まりは、資源価格の下落を招き、各社の業績に影響を与えています 25。海外市場では現地企業や他国競合との競争が激化しており、現地に密着した柔軟な戦略が不可欠です 6


デジタル化による新たな競合の台頭

インターネットが情報の流通を容易にしたように、デジタル化の進展は新たな競争者を生み出しています 6。メーカーが独自のデジタルプラットフォームを構築することで、商社の仲介機能が再び問われる可能性もあります。これに対処するため、商社はDXを通じてビジネスモデルそのものを変革する必要に迫られているのです 11



第3章: 地域に根差した商社の事例分析:名古屋(愛知県)に強い商社


3.1. グローバルとローカルを結ぶ「豊田通商」


名古屋(愛知県)に本社を置く豊田通商は、日本の総合商社の中でも特にユニークな存在です。トヨタグループの一員としての創業の原点を大切にしながらも、商社としての挑戦を重ねてきた歴史を持っています 27。トヨタグループのグローバル化に伴い、海外拠点を設立し、完成車の輸出や現地生産を支援するなど、特定の顧客との強固な信頼関係を基盤に成長を遂げてきました。


豊田通商の強みは、メタル、モビリティ、グリーンインフラなど多岐にわたる事業ポートフォリオに加え、自動車産業のバリューチェーン全体に深く関与している点にあります。特に、循環型静脈事業への取り組みは1970年からと歴史が古く、使用済み自動車のリサイクル率99%以上を実現するなど、環境課題解決に貢献する事業競争優位性を築いています 27。また、車載エレクトロニクス分野においても、ネクスティ エレクトロニクス社を中心に強固なパートナー基盤を有しています 27。豊田通商は、特定の顧客との関係を基盤としつつ、そのニーズ(例:電動化)に合わせて自らの事業を再構築するモデルを確立しています。これは、他の総合商社が追求する「多角性」とは異なる、「特定の分野における圧倒的な深さ」を追求するビジネスモデルであり、愛知県という地域特有の産業構造から生まれた独自の強みです。



3.2. 愛知県の専門商社群:自動車産業を支える存在


愛知県には、豊田通商のような総合商社だけでなく、特定の分野に特化した数多くの専門商社が拠点を置き、地域産業を支えています 31。これらの企業は、自動車産業をはじめとする地元メーカーのサプライチェーンに不可欠な存在です。


岡谷鋼機株式会社

1669年創業の老舗総合商社であり、鉄鋼、情報・電機、産業資材、生活産業の4つの軸でグローバルに事業を展開しています 31。特に鉄鋼分野が売上の約4割を占めており、加工・物流機能を通じて国内外のものづくりを支えています 31


株式会社細野商会

自動車部品・用品の総合商社であり、名古屋市に本社を置いています。愛知県内に複数の営業所を構え、自動車部品の販売を通じて地域のものづくりを支えています 33


名古屋テック

創業50年の制御機器の技術商社であり、自動車業界を中心に安定した取引基盤を築いています 34。トヨタグループの株式会社ジェイテクトの指定代理店として、長年にわたりトップの売上を維持しており、単なる製品販売にとどまらず、顧客の課題解決を担うソリューション提供者としての役割を果たしています 34


興和株式会社

1894年創業の老舗で、「健康と環境」をテーマに、繊維、機械、化成品、生活関連物資など幅広い分野で事業を展開しています。近年は、医薬品や光学機器のメーカー機能も併せ持つ点が強みです 31


株式会社トーカン

名古屋市に本社を置く食品卸売業のリーディングカンパニーで、全国に44箇所の物流センターを持ち、地域の食を支える効率的な食品流通体制を構築しています 31


これらの専門商社は、特定の産業や製品に対する深い専門知識と、長年の取引で培われた強固なネットワークを武器に、大手総合商社とは異なる形で価値を提供しています。これは、日本の産業が持つ多層的な構造と、地域産業の強さが、商社というビジネスモデルを多様化させていることを示しています。



3.3. 地域密着型ビジネスモデルの特質


愛知県の専門商社群は、地元産業との強い結びつきと、ニッチ市場における高い専門性を持つという点で共通しています。例えば、名古屋テックの事例は、特定の顧客のニーズに合わせてカスタマイズされた製品を提供することで、他社の参入が難しい強固な関係を築いています 34。これらの企業は、単なる製品の仲介にとどまらず、顧客の課題を深く理解し、解決策を提案する「ソリューションプロバイダー」としての役割を担っているのです。これは、グローバルな多角化を追求する大手総合商社とは異なる、地域密着型の商社ビジネスモデルの特質であり、日本の産業を多方面から支える重要な要素となっています。



第4章: 映像制作会社の戦略的活用:新たな企業価値の創造


商社は、自社が関わる商材としての映像コンテンツ製作(例:映画製作への投資)とは別に、IR、採用、企業ブランディングといった非収益目的で映像制作会社を戦略的に活用しています。これは、従来の「モノとカネ」を中心としたビジネスから、ブランドや人材といった無形資産の価値向上に経営資源を配分する現代の潮流を反映しています。


4.1. コーポレートブランディングと企業文化の発信


伊藤忠商事は、企業理念である「三方よし」をよりグローバルに発信することを目指し、Bloomberg社とタイアップした企業理念紹介動画を制作しています 35。この動画には日本語と中国語の字幕が付されており、海外の視聴者にも企業理念を浸透させる狙いがあります 35

これは、企業の顔となる「企業理念」を、伝統的なテキストではなく、視覚的・聴覚的に訴える動画で発信するという、現代的な手法です。これにより、商社が単なる「モノ」のビジネスから、「理念と価値観」を重視するビジネスへと転換していることが示唆されます。



4.2. IR(投資家向け広報)と採用活動における活用


映像は、投資家や求職者といった重要なステークホルダーとのコミュニケーションを円滑化するツールとしても活用されています。


三井物産は、個人投資家向けオンライン会社説明会を動画で配信し、経営戦略や財務状況を分かりやすく伝えています 36。IR動画は、複雑な情報をシンプルに伝えることに長けており、情報開示の透明性を高め、機関投資家だけでなく、個人投資家との対話を強化しようとする姿勢の表れです。


アシックス商事のような専門商社は、商品企画から製造・販売まで一貫して手掛ける現場の社員が登場するリクルート動画を制作しています 38。社員が日々のチャレンジや成長ストーリーを語ることで、社風やチームワークといった企業文化をリアルに伝え、求職者とのミスマッチを防ぐことを狙っています。これは、企業が単に「事業規模」や「収益性」だけでなく、社員の働く姿や企業文化といった「非財務情報」を伝えることで、優秀な人材を獲得しようとしていることを示しています。



4.3. 顧客コミュニケーションと付加価値提供


映像は、顧客への付加価値提供にも利用されています。製品やサービスの複雑な情報を分かりやすく解説するために動画が活用されているのです。例えば、株式会社光響は、自社が取り扱うレーザー製品の用途や特長を解説する動画をYouTubeで公開しています 39。また、関西ペイントは、塗料の製品特徴だけでなく、実際の施工工程について解説する動画を公開しており、ユーザーにとって非常に有用な情報を提供しています 39


これらの事例は、商社が自社が関わる商材の価値を可視化するために映像を利用していることを示しています。これは、製品を仲介するだけでなく、その製品の「使い方」や「価値」までをも顧客に提供しようとする新たな付加価値創造の試みです。



結論


日本の商社は、その長い歴史の中で、幾度となく外部環境の変化と「不要論」という試練に直面してきました。しかし、その度に、ビジネスモデルを絶えず進化させることで、自らの存在意義を再定義してきたのです。


現代において、商社のビジネスモデルは、従来の貿易手数料から、事業投資を収益の核とするモデルへと移行しています。この「事業創造者」としての役割は、DXやEXといった社会変革を捉えることでさらに強化されています。DXは、サプライチェーンの最適化や新たなビジネスモデルの創出につながり、EXは、変動リスクの大きい資源分野から、持続可能な成長が見込める次世代エネルギー分野へのポートフォリオ転換を可能にしています。


また、商社の多様性は、東京に本社を置く大手総合商社と、地域に深く根差し、特定の産業で高い専門性を持つ専門商社群の共存によっても示されています。特に名古屋(愛知県)の商社群は、自動車産業という強力な産業基盤に支えられ、ニッチな分野で独自の競争優位性を確立しています。


さらに、商社が非収益目的の映像コンテンツを戦略的に活用している事実は、今後の商社経営の方向性を示唆しています。それは、モノとカネを動かすことだけでなく、企業理念を伝え、優秀な人材を獲得し、投資家との信頼関係を築くといった、無形資産の価値を最大化することに注力する姿勢です。


日本の商社は単なる企業間の「橋渡し役」ではなく、社会課題を解決し、新たな産業を創造する「プレーヤー」としての役割をさらに強化していくとみられます。その変革は、多角的な事業投資、デジタル技術の徹底活用、そして企業理念や非財務的価値を訴求するための多層的なコミュニケーション戦略によって実現されるでしょう。


【この記事について】

本記事は、製造品出荷額日本一を誇る東海圏・名古屋に拠点を置く株式会社SynAppsが執筆しました。私たちは「名古屋映像制作研究室」を主宰し、各業界の知見を収集・分析しながら、企業が抱える課題を映像制作の力で支援することを目指しています。BtoB領域における映像には、産業ごとの深い理解が不可欠であり、その知識と経験をもとに制作に取り組んでいます。


【執筆者プロフィール】

株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。

株式会社SynApps 会社概要はこちら → [当社について] [当社の特徴]



引用文献

  1. 坂本龍馬から始まった?就活に役立つ総合商社の歴史を解説 - Unistyle, 9月 10, 2025にアクセス、 https://unistyleinc.com/techniques/1390

  2. 総合商社のビジネスモデル。彼らは何をやっているのか。歴史的な背景と現在のビジネスモデルを紹介。 - プルーヴ株式会社, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.provej.jp/column/bm/trading_company/

  3. 総合商社の歴史|商社の教科書 - note, 9月 10, 2025にアクセス、 https://note.com/shosha_kyokasho/n/n0060e78db76d

  4. なぜ日本だけ?総合商社が誕生した秘密に迫る - KOTORA JOURNAL, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/59654/

  5. 総合商社の未来を占う? 歴史から紐解く大合併の背景 - KOTORA JOURNAL, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/60422/

  6. 商社って何?初心者でもわかる役割と魅力を大解剖 - KOTORA JOURNAL, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/59982/

  7. 未来を切り拓け!商社が仕掛ける事業投資の魅力 - KOTORA JOURNAL - コトラ, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/60066/

  8. 商社のビジネスモデル | 一般社団法人日本貿易会(Japan Foreign Trade Council, Inc.), 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.jftc.or.jp/shosha/businessmodel.html

  9. 総合商社のビジネスモデル|転職サービスのムービン, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.movin.co.jp/special/syosya/model.html

  10. 総合商社の投資部門から学ぶPEファンドへの転職術 - KOTORA JOURNAL - コトラ, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/60936/

  11. 日本が誇る総合商社の秘密!グローバル経済を支えるその強さとは - KOTORA JOURNAL, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/59847/

  12. KDDIがローソンと挑む「ソーシャル・インパクト」は、株主の期待に応えられるか?|アナリストの眼, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.nam.co.jp/market/column/analyst/2024/241118.html

  13. 三菱商事・KDDI・ローソン、資本業務提携契約を締結 | ニュースリリース - Mitsubishi Corporation, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/news/release/2024/0000052862.html

  14. 伊藤忠、スタートアップ企業と協業、事業創出狙う | 流通・小売業界で働く人の情報サイト, 9月 10, 2025にアクセス、 https://diamond-rm.net/flash_news/1538/

  15. 「新規事業を量産できるプラットフォームに」伊藤忠商事が取り組む『社内兼業制度』, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.zaikai.jp/articles/detail/5461

  16. バックオフィス業務が多い商社にこそDXが必要な理由とは? | CAM UP - キャムマックス, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.cammacs.jp/contents/camup92/

  17. 商社が取り組むDX - 日本貿易会, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.jftc.jp/monthly/archives/001/202503/fb6fffcaba3198d4be2c489cd90112a9a7dc59aa6de92123c4b73c3a2e314520.pdf

  18. 住友商事が描く未来:DXで切り開くデジタルソリューション時代 - KOTORA JOURNAL - コトラ, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/99976-2/

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  20. 事例紹介 | journal_category | 丸紅デジタルイノベーション - Marubeni, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.marubeni.com/jp/digital-innovation/journal_category/case-study

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  25. 【業界マップ2025】総合商社業界を図解でわかりやすく解説 - MindMeister(マインドマイスター), 9月 10, 2025にアクセス、 https://mindmeister.jp/posts/gyokai-sogosyosha

  26. Integrated Report 2024 - 豊田通商, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.toyota-tsusho.com/ir/library/integrated-report/pdf/ar2024_all.pdf

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  28. 総合商社の実態!7大商社の強みと未来への戦略を展望 - KOTORA ..., 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.kotora.jp/c/60618/

  29. IR資料から読み解く総合商社の今後投資すべき分野について - Unistyle, 9月 10, 2025にアクセス、 https://unistyleinc.com/columns/38

  30. PwC Japanグループ、「企業の地政学リスク対応実態調査2024」の結果速報を発表, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/2024/geopolitics2408.html

  31. 愛知県で商社に転職!地元企業のおすすめ10選 | 地方特化の転職 ..., 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.hurex.jp/column/company/6032/

  32. 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)周辺の商社・貿易一覧 - Mapion, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.mapion.co.jp/phonebook/M26016/23100/ST25077/

  33. 会社情報 : 株式会社 細野商会: 自動車部品・用品の総合商社, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.hosono-net.co.jp/company

  34. 会社を知る - 名古屋テック, 9月 10, 2025にアクセス、 http://nagoya-tec.co.jp/rec_aboutus/

  35. 企業紹介映像|広告ライブラリー|伊藤忠商事株式会社, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.itochu.co.jp/ja/about/media_center/company/index.html

  36. 三井物産株式会社 個人投資家向けオンライン会社説明会, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.irwebcasting.com/20200908/1/7a4e1a5116/mov/main/index.html

  37. Market Breakthrough第264回 三井物産株式会社 - YouTube, 9月 10, 2025にアクセス、 https://www.youtube.com/watch?v=10AwullYHdw

  38. 会社紹介動画の事例40選!魅力的でかっこいい映像制作のポイントも解説【2025年最新】, 9月 10, 2025にアクセス、 https://emeao.jp/ikkatsu-column/company-introduction-video-examples/

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