DXが進まない企業への映像制作会社からの提案
- Tomizo Jinno

- 10月10日
- 読了時間: 18分
更新日:10月11日
1.はじめに
1.1 DX「変革」の実現に向けた最大の壁—理解と意欲の低迷
2018年に経済産業省が「2025年の崖」というインパクトの大きな警鐘を鳴らしてから時間が経過しましたが、日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進は未だ道半ばにあります 。レガシーシステムの維持やIT人材不足といった技術的・構造的な課題に加え、日本企業におけるDXの成果達成率は米国が約70%であるのに対し、日本は20%台に留まるという国際的な遅れが指摘されています。
この遅延の根本的な原因は、技術的な負債や構造的な人材不足だけではなく、DXに対する経営層および従業員の「真の理解」と、それに基づく「推進意欲」の欠如にあると分析されています。多くの企業が、DXを単なる既存業務のデジタル化や効率化(デジタイゼーション)として捉え、本来の目的である「ビジネスモデルの変革(Transformation)」に至っていない状況が、経済損失のリスクを長引かせています。
日本のDXの現状と構造的な課題を概観した上で、特に日本経済の基盤を支える中小企業(SME※)が抱える固有の課題に焦点を当てます。その上で、メッセージの浸透力、記憶定着性、感情的な訴求力を持つ映像メディアが、組織全体の「真の理解」と「推進意欲」を高めるチェンジマネジメントにおいて、いかに戦略的に貢献できるかを詳述します。
※SME は:Small and Medium Enterprisesの略で「中小企業」を意味する言葉です。
目次

1.2 経済産業省DXレポート群から読み解く危機感の推移
経済産業省は、DXの推進を目的として指針となるDXレポート群を継続的に発表しており、その焦点は時間とともに変化しています。
初版(2018年)のレポートは、メインフレームなどの古い「レガシーシステム」がDXの足かせとなり、2025年以降に大きな経済リスクをもたらす「2025年の崖」に警鐘を鳴らしました。この時点で、企業のITシステム刷新の必要性が強く認識されました。
その後、コロナ禍での「はんこ出社」問題など、デジタル化の遅れが顕在化する中で 、DXレポート2.2(2022年)では、焦点が単なるシステム刷新という技術論から、より本質的な「文化・経営変革」へと移行しました。
最新版では、企業に対し、効率化中心の投資から脱却し、デジタルを「収益向上にこそ活用すべき」と強く求めています。さらに、経営者はビジョンや戦略だけでなく、現場に浸透させるための具体的な「行動指針」を示すこと、そして自らの「価値観」を外部へ発信して変革を推進する同志を集める「デジタル産業宣言」を掲げています 。これは、DXの本質がシステムではなく、経営全体の改革であることを明確に示しています。
2. 日本のDXの「現在地」と「真の変革」の定義
2.1 DX成熟度:取り組みの広がりと成果のギャップ
日本企業はDXへの着手自体は進んでおり、調査によると97%の企業が何らかのDXに着手している状況が確認されています。しかし、そのレベルは発展途上です。DX推進の成熟度において、「一部での散発的実施」や「一部での戦略的実施」といった低いレベルに留まる企業が計47%と、半数近くを占めています。これは、多くの企業が「全社戦略に基づく部門横断的推進」(レベル3)に至る手前で停滞していることを示唆します。
多くの企業が取り組みを始めても国際的な成果に結びついていない背景には、真のDXの本質である「変革(Transformation)」を誤解している点にあります。既存のシステムを単にクラウドに移行したり、従来のプロセスをそのままデジタル化したりする行為は、変革を意図するDXの「X」の意図にはそぐいません。
企業は、紙ベースの業務を自動化したり、リモートワークを導入したりといった「効率化」や「コスト削減」を目的とするデジタライゼーション/デジタイゼーションに留まりがちです。こうした効率化中心の投資は「部分最適」に終わりやすく、真の収益向上や競合優位性の確立といったDXの目標達成に至らないため、投資対効果が低いと見なされ、結果的に経営層や従業員の次のステップへの意欲を低下させています。経済産業省が最新のレポートで「収益向上にこそ活用すべき」と強く指示しているのは、このような「効率化の罠」を克服する必要があるためです。
日本におけるDXレポートの変遷と焦点の変化
レポート名 | 公開時期 | 主要な警鐘/当初の焦点 | 変革の要請(最新版の強調点) |
DXレポート | 2018年9月 | 2025年の崖、レガシーシステムのリスク | システム刷新と経営改革の必要性 |
DXレポート2 | 2020年12月 | DX=レガシー企業文化からの脱却 | 企業文化・意識の変革 |
2022年7月 | デジタル産業への変革、効率化投資への警鐘 | 収益向上へのシフト、行動指針、価値観の外部発信 |
2.2 デジタル化(Digitalization)とDX(Transformation)の峻別
DXとデジタル化は、その目的において決定的な違いがあります。デジタル化の主な目的は業務の効率化やコスト削減であるのに対し、DXの本質的な目的は、デジタル技術を用いて顧客体験の向上を図り、最終的に競合優位性を確立する、ビジネスモデルそのものの変革にあります。
DXとは、AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術を活用し、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出を実現するだけでなく、レガシーシステムからの脱却や企業風土の変革までも実現させることを意味します 。真のDXを実現するためには、単に既存のプロセスをデジタルツールに置き換えるだけでなく、「物理的な制約からの脱却」や「グローバル市場への展開の容易さ」など、デジタル化によって得られる根本的なメリットを活かして、顧客に提供する「価値」と「その価値を生み出すビジネスモデル」そのものを変える必要があります。
2.3 経営者に求められる行動変革
DXは、単なるIT部門の課題ではなく、経営全体の改革であり、システム刷新だけに目を向けて表面的な改善を試みても、グローバル市場における「ゲームチェンジャー」にはなり得ません。
したがって、経営者は自らがデジタル技術の基本を理解し(デジタルリテラシーの向上)、効率化から収益向上へ投資の軸足をシフトさせることが求められます。また、経営トップがDXを理解していなければ、組織全体の取り組みは停滞します 。経営層は、抽象的なビジョンや戦略を示すだけでなく、現場が何をすべきかを示す具体的な「行動指針」を提示し、組織の壁を越えた全社横断的な推進体制を構築する必要があります 。DXの核心は、データを収集・分析し、意思決定に活かす能力にあるため、技術導入と並行してデータ活用の文化と基盤を整備することが不可欠です 。
3. DX推進を阻害する構造的課題の深層分析
3.1 技術的・文化的負債:日本企業に共通する壁
レガシーシステム依存と技術者内製化の遅れ:多くの日本企業が20年以上前に導入された古いシステムを現役で使用しており、これらは最新技術との連携が難しく、修理や保守にかかる費用がかさむことで、企業の競争力低下に直結しています。さらに、こうした古いシステムの維持に熟練技術者が割かれることで、最新のデジタル技術を扱える人材の育成や採用が進みにくくなり、組織全体の変革が遅れる状況を生んでいます。
IT人材不足とベンダー企業への構造的偏重:企業がDX推進にあたって直面する最大の阻害要因は、「DX推進人材不足」であり、調査対象企業の40%がこの壁に直面していると認識しています。特に日本は、IT技術者がユーザー企業側よりもベンダー企業に偏重している構造的な特徴があり、これがシステムのブラックボックス化を引き起こし、DX推進における大きな障壁となっています。
欧米各国ではユーザー企業側に技術体制が確保されノウハウが蓄積される傾向にあるのに対し、日本の外部依存構造は、企業が競争力の源泉となる分野(顧客接点など)で技術を内製化する能力を奪っています。この状況は深刻であり、レガシーシステムの保守・運用に依存していた多くのベンダー企業側でさえ、DXを推進できるIT人材が不足しているというジレンマが発生しています。
レガシーシステムからの脱却、すなわち「崖からの脱出」はゴールではなく、新たなスタートラインでしかありません。技術的な移行が完了したとしても、継続的なシステム最適化と人材強化が伴わなければ、投資対効果が薄いまま停滞するリスクがあります。
外部依存構造が継続すると、企業は常に変化する環境に適応し続けることができず、いずれ再び競争力を失うことになります。DXを真の成長エンジンに育てるためには、ベンダーに任せるだけでなく、自社内でノウハウを蓄積し、競争力に直結する分野では内製化できる組織能力を身につけるための行動変容を促すことが不可欠です。
3.2 中小企業(SME)の課題:日本経済の基盤における固有の壁
日本経済の大部分は中小企業によって構成されているため、中小企業のDXの遅れは、国全体の生産性向上にとって極めて重大な課題です。
DXへの取り組み状況には企業規模間で圧倒的な格差が存在し、大企業の4割強がDXに取り組んでいるのに対し、中小企業では1割強に留まっています。また、地域的な格差も大きく、東京23区に本社がある企業の約4割がDXを実施しているのに対し、政令指定都市、中核市、その他市町村と規模が小さくなるにつれて、その割合は低下する傾向にあります。
中小企業のDX推進を阻む課題は、企業規模によって構造が異なる多重構造を呈しています。
最小規模企業(従業員20人以下)の「予算の壁」
従業員20人以下の最小規模企業では、「予算の確保が難しい」ことが最大の課題として挙げられており、DXが「コスト」として認識され、初期投資の心理的な障壁が非常に高いことが分かります。
中堅・中小企業(従業員21人以上)の「文化・人材の壁」
一方、従業員21人以上の中堅・中小企業では、人材や企業文化・風土に関する課題が最も高く、1位から3位までを占めています。この層は、ある程度のリソースは確保できるものの、DX推進担当者の不在や兼任体制、および長年の企業文化が、取り組みを全社的にスケールアップすることを阻害しています。
企業規模別に見たDX推進の主要な阻害要因
課題カテゴリー | 大企業(傾向) | 中堅・中小企業(傾向) | 最小規模企業(~20人) |
技術面 | レガシーシステムの維持/複雑性 | レガシー脱却と新規導入のギャップ | 外部ベンダーへの過度な依存 |
人材面 | DX推進人材の不足、社内ノウハウ蓄積の遅延 | 人材不足、兼任体制の多さ(最上位) | IT・DX担当者不在、育成リソース不足 |
経営・予算面 | 効率化中心の投資マインド | 企業文化・風土、変革意欲の欠如 | 予算確保の難しさ(最上位) |
中小企業は予算の制約が厳しいため、DXを推進する際、真のビジネスモデルの変革を深く考察するリソースや時間を確保できず、短期的な効果を求め、安易に効率化に留まりがちです。これにより、真のDX(収益向上)が達成されず、経営層が次のDX投資に懐疑的になり、推進意欲がさらに低下するという悪循環に陥ります。したがって、SME向けのDX啓発は、抽象的な技術論ではなく、「わずかな投資で競争優位性を得るための成功の物語」に焦点を当て、経営層の投資意欲とビジョンを刺激する必要があります。
4. DX推進意欲を醸成するチェンジマネジメント戦略
4.1 変革に必要な「マインドセット」の定義:当事者意識と顧客志向
DXの成功は、単なるテクノロジーの導入ではなく、データの収集・分析と、それに基づく意思決定への活用能力、すなわち「データ活用の文化」に依存します。これは、技術導入以前に、顧客との接点を見直し、デジタルによって何が改善できるかを検討する「顧客視点のデジタル化」を最優先する、社員一人ひとりの意識改革が必須であることを意味します 10。
4.2 組織変革を実現するインナーブランディングの役割
DXは全社的な変革であり、組織の壁を越えた推進体制の構築が必須です。この際、抽象的な経営方針を具体的に従業員に浸透させるインナーブランディングが重要な役割を果たします。
企業の理念やビジョン、社会的責任について社員が深く理解することで、自社への貢献意欲(愛社精神)が高まります。このブランド意識の向上は、結果的に接客の質の向上や、顧客視点の徹底(顧客志向の向上)にも直結し、DXの目的である「顧客体験の向上」に貢献します。インナーブランディングは、変革に対する抵抗感を減らし、全社員を当事者意識を持った「変革の担い手」へと変えるための重要なプロセスです。
4.3 トップ主導の「価値観」と「行動指針」の浸透
DXレポート2.2が強調するように、経営者は自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同志を集め、互いに変革を推進する新たな関係を構築する必要があります。トップがDXを真に理解し、リーダーシップを発揮することが、組織全体の取り組みを停滞させない鍵となります。
さらに、経営者が戦略だけでなく、具体的な「行動指針」を示すことで、現場レベルでの行動変革が促進されます。この行動指針を浸透させる際、人々は単なる事実やデータではなく、物語や他者の成功体験を通じて、最も強い「意欲」と「理解」を高めるという事実に着目すべきです。
実際、ある製造業の企業が組織的なマネジメントの変革(TOC導入)を実現した際、そのきっかけとなったのは、他社の成功事例を収めたビデオを見て、「業態や企業が違っていても、本質的な課題は同じである」と共感し、「ボトルネックに注力して対策を打つ」という新しい発想を得たことでした。組織のモチベーションが低下している状況下では、抽象的な戦略文書よりも、感情に訴えかける具体的で成功した「物語」が、固定観念を打ち破り、変革への意欲を触発する強力な触媒として機能します。
5. 映像制作会社によるDX推進への戦略的貢献:知覚と行動の変革
5.1 映像メディアの持つ本質的な優位性:情報の定着と感情的訴求力
映像メディアは、DX推進を実現する上での文化的・心理的な障壁を乗り越えるために極めて有効なツールです。映像は、視聴者の記憶に残りやすく、場所や時間を問わず視聴できるため、全社的な情報共有と組織変革の促進に貢献します。
特に、複雑で抽象的になりがちなDXの本質(ビジネスモデルの変革)や、無形のサービス/技術を可視化する能力において、映像は他の媒体に優位性を持っています。映像制作会社は、単なるクリエイティブパートナーではなく、組織の「理解の欠如」と「意欲の低さ」という最大の文化的障壁を取り除くための戦略的コミュニケーションパートナー(DXエバンジェリスト)として機能することが期待されます。
DX推進における映像コンテンツの戦略的活用フレームワーク
フェーズ | 目的 | 主な対象 | 推奨コンテンツ形式 | 期待される主要効果 |
啓発・認識 | 真の理解促進(DXの本質) | 経営層、全社員 | アニメーション、成功事例ドキュメンタリー(TOC事例など) | DX=変革であることの定義付け、危機意識の醸成、ROI明確化 |
実行・浸透 | 推進意欲の向上と文化定着 | 全社員、管理者 | 経営トップメッセージ、インナーブランディング映像、社員インタビュー | 愛社精神・当事者意識の向上、行動変革の触発、顧客志向の強化 |
能力開発 | リテラシー・スキルアップ | DX推進担当者、IT部門 | ワークショップ動画、e-ラーニング、体系的解説コンテンツ | 技術的知識の体系的習得、組織能力の向上、ブラックボックス化の解消 |
SME特化 | 予算・地域課題の克服 | 中小企業経営層、従業員 | コスト効率の高いアニメーション、地域特化型成功事例集 | 投資への初期障壁の低下、地域内での共創関係構築 |
5.2 戦略的役割1:変革の必要性と成功事例の可視化(啓発フェーズ)
5.2.1 危機意識の共有と「崖」の現実味の可視化
DX推進の第一歩は、現状維持のリスクを具体的に認識させることです。単なる「2025年の崖」というスローガンではなく、レガシーシステム維持にかかる具体的なコストの増大や、セキュリティリスク、そして競合他社がDXを進める中で自社が取り残される様子を、抽象論ではなく現場の従業員にも理解できるレベルで具体的に視覚化する必要があります。
高額な実写ではなく、グラフやメタファーを用いたアニメーション「インフォグラフィック動画」は、レガシーシステムの技術的負債や、生成AI、ロボティクスといった最新技術への対応遅れが企業の生命線を脅かすシミュレーションを、コスト効率良く、かつ分かりやすく伝えることができます。
5.2.2 真のDX事例のストーリーテリングによる「X」の具体化
DXが「ビジネスモデルの変革」であり、「収益向上」につながることを、具体的な成功事例のストーリーテリングを通じて示す必要があります。単なる業務効率化ではなく、デジタル技術によって物理的な制約を乗り越えたり、グローバル市場展開を実現したりといった「変革」の事例に焦点を当てます。
ドキュメンタリー形式の映像は、製造業におけるIoT化や、組織マネジメントの劇的な改革を達成した他業種の成功事例(前述のTOC導入事例など )を、変革前後の課題、成果、そして変革を主導したリーダーの決断の過程を交えてドラマチックに描くことで、視聴者に強い共感を促します。これにより、DXが単なるITプロジェクトではなく、経営陣の意志に基づく生存戦略であることを深く理解させることができます。また、デジタライゼーションとDXの違いを明確にするため、具体的な業種別事例を用いた解説動画を多用することも有効です。
5.3 戦略的役割2:組織文化と行動指針の浸透(実行フェーズ)
5.3.1 経営トップ層の「価値観」と「行動指針」の徹底的なインナー発信
DXレポート2.2で求められる「行動指針」と「価値観」の発信は、映像メディアの得意とする分野です。経営トップがビジョンや戦略だけでなく、「何をしないか」「何を優先するか」といった具体的な行動指針を、高頻度で、格式を保ちつつも感情的なメッセージを込めて語りかけるトップメッセージ動画を配信すべきです。
また、企業の理念とDX戦略を結びつけたインナーブランディング映像を制作し、社員満足度や愛社精神を高めることで、全社員がDXを自分事として捉え、顧客志向の向上につながるよう働きかけます。
5.3.2 リテラシー向上と組織能力強化のための教育コンテンツ開発
DX推進の最大の阻害要因である人材不足 2 に対応するためには、全社員のデジタルリテラシーの底上げと、特定部門のスキルアップを体系的に支援する必要があります。
映像制作会社は、デジタル技術の基本理解(AI、データ活用、クラウドサービスなど)を分かりやすく解説する体系的なe-ラーニング動画を開発することで、社員のIT知識習得を支援します。さらに、部門横断的な推進体制構築 を目指し、チェンジマネジメントやデジタルリテラシーに関するワークショップの事前学習・補強教材として、インタラクティブなワークショップコンテンツを提供することも、組織能力の向上に貢献します。
5.4 中小企業向け特化型ソリューション:地域の課題解決への貢献
中小企業は「予算の壁」と「人材・文化の壁」という二重の課題を抱えています。映像制作会社は、この課題を突破するための費用対効果の高いコンテンツを提供することで、地域経済の活性化に貢献できます。
具体的には、高額な実写制作を避け、費用対効果が高く無形サービスを可視化しやすいアニメーションを積極的に活用し、コスト効率の高いパッケージをSME向けに提供します。
最も重要なのは、地域の課題解決に特化したコンテンツ制作です。和歌山県など一部の地域では、県レベルで中堅・中小企業のDX先進事例集が作成され、成果を得た事例が共有されています。映像制作会社は、こうした地域の中小企業の成功事例(小規模なシステム導入で業務改革や競争力強化を実現した例)を収集し、地域企業向けに低コストで共有することで、「本質的な課題は自社と同じであり、自社でも実現可能だ」という共感を生み出し、投資への初期障壁を低下させることができます。
地方自治体や産業振興財団(例:和歌山県のDXチャレンジサポートプログラム)と連携し、県レベルで実施される啓発活動に映像を提供することで、地域の中小企業における機運醸成を加速させることが、日本のDX格差是正に直結します。
6. 結論と提言:日本のDX加速に向けた映像制作会社のロードマップ
日本のDX推進の現状は、技術的な移行段階から、組織文化と経営マインドの変革を要求される実行フェーズへと移行しています。最大の障壁は、技術的な問題ではなく、DXの本質に対する「真の理解の欠如」と、それに基づく「推進意欲の低さ」です。
映像制作会社は、この文化的障壁を取り除くための戦略的コミュニケーションパートナー(DXエバンジェリスト)としての役割を担うべきです。その活動の最終目標は「美しい映像」ではなく、視聴者の「行動変容」と「ビジョンの共感」であることを徹底する必要があります。
6.1 継続的改善と戦略的連携の提言
コンサルタント・ベンダーとの連携強化
映像制作会社は、DXコンサルタントやITベンダーとの連携を深め、制作するコンテンツが技術的な正しさと変革戦略の整合性を確保する必要があります。これにより、提供するメッセージが抽象論に留まらず、具体的な戦略に基づいたものとなります。
データに基づいたコンテンツの最適化
映像コンテンツの配信後、その「視聴データ」を収集・分析し、どのメッセージや形式が最も意欲向上や行動変容に貢献したかを評価する能力(PDCAサイクル)を強化する必要があります。これにより、継続的なコンテンツ最適化を提案し、クライアント企業におけるDXの成果評価プロセスを支援します。
地域経済への貢献
特に中小企業が多い地域において、自治体や産業振興財団と協働し、地域内の成功事例の「可視化」と「共有」を加速させるためのロードマップを実行することで、地域全体のDX機運醸成に貢献すべきです。
映像メディアの持つ強力な訴求力と浸透力を活用することで、企業はレガシー企業文化からの脱却を果たし、真の「変革(X)」を実現する推進力を獲得することが可能となります。
DXをテーマとした映像コンテンツの企画制作は、名古屋の映像制作会社SynAppsにご相談ください。
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【この記事について】
本記事は、名古屋の映像制作会社・株式会社SynAppsが執筆しました。私たちは「名古屋映像制作研究室」を主宰し、各業界の知見を収集・分析しながら、企業が抱える課題を映像制作の力で支援することを目指しています。BtoB領域における映像には、産業ごとの深い理解が不可欠であり、その知識と経験をもとに制作に取り組んでいます。
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。




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