「造船日本」復活の為の映像制作提案
- Tomizo Jinno

- 8 時間前
- 読了時間: 9分
静かに進む造船競争の再燃
2020年代、世界の主要国が一斉に造船業の強化に乗り出しています。米国、日本、韓国、そして既に世界シェアの約半分を握る中国。一見地味に見える造船業が、なぜいま各国の戦略的な焦点となっているのでしょうか。

海上輸送という生命線
まず理解すべきは、世界貿易の約90%が海上輸送に依存しているという事実です。私たちが日常的に使うスマートフォン、衣類、食料品の多くは、遠く離れた国から船で運ばれてきます。この海上輸送網を支える船舶を自国で建造できる能力は、産業政策としてだけではなく、経済安全保障の根幹に関わる問題なのです。
特にコロナ禍でのサプライチェーン混乱や、ウクライナ情勢による物流の不安定化を経験した各国は、「有事の際に自国の物流を確保できるか」という問いに直面しました。造船能力を他国に依存することは、この問いに対する答えを他国に委ねることを意味します。
軍事バランスの変化と造船力
造船業のもう一つの重要な側面は、軍事力との直結性です。商船を建造する技術基盤は、そのまま軍艦や潜水艦の建造能力につながります。
中国は過去20年間で急速に海軍力を増強し、空母や最新鋭の駆逐艦を次々と就役させています。この背景にあるのが、圧倒的な造船能力です。米国がこれに危機感を抱くのは当然のことでしょう。日本や韓国も、地域の安全保障環境の変化に対応するため、造船基盤の維持・強化を重視しています。
産業基盤という見えない資産
造船業の重要性は、その産業構造にもあります。一隻の船を建造するには、鉄鋼、機械、電子機器、塗料、配管など、膨大な数の部品と技術が必要です。造船業を失うことは、これらの関連産業の技術力や雇用も失うことを意味します。
さらに重要なのは、「作る能力」そのものです。設計図があっても、実際に巨大な構造物を組み立てる技術、熟練工の技能、サプライチェーンの調整能力などは、一度失われると簡単には取り戻せません。これは有事の際の産業動員能力にも直結します。
脱炭素化という新たな商機
造船業が注目される理由は、防衛や安全保障だけではありません。脱炭素化という世界的な潮流が、新たな巨大市場を生み出しているのです。
LNG(液化天然ガス)運搬船、水素・アンモニア運搬船、洋上風力発電の設置船など、環境対応型の特殊船舶の需要が急増しています。また、自動運航技術やデジタル化による次世代船舶の開発競争も始まっています。
これらの新市場で主導権を握ることは、今後数十年の経済競争力を左右します。各国が造船業に投資するのは、この未来の市場を見据えているからです。
中国依存へのリスクと各国の対応
現在、中国は世界の造船市場の約半分を占めています。韓国と中国を合わせると、世界シェアの約80%に達します。この極端な集中は、他の国々に大きな懸念を生んでいます。
もし地政学的な緊張が高まり、中国からの船舶供給が途絶えたら、世界の海上輸送はどうなるのか。この問いが、各国に造船能力の維持・回復を促しているのです。
造船業への注目は、単なる産業政策ではありません。それは経済安全保障、軍事バランス、産業基盤、環境技術、そして地政学的リスクが複雑に絡み合った、21世紀の戦略的課題なのです。静かに、しかし確実に進む世界の造船競争。その行方は、私たちの生活や安全保障に、これまで以上に大きな影響を与えることになるでしょう。
造船産業を支援する映像企画提案書
産業構造の再構築という視点
これまで「製造業の中部(東海地方・名古屋)」「自動車城下町」と言われてきたこの地方ですが、モビリティのあり方が大変革を迎えている今、産業構造を再構築する意義もあるのではないでしょうか。
自動車産業の電動化・自動運転化という転換期において、東海地方が持つ「モノづくりの力」を、次の成長分野へとつなぐ戦略が求められています。その一つが、世界が注目する「造船・海事産業」です。
名古屋港は日本最大の貿易港であり、愛知・三重には造船所や重工業の集積があります。さらに、自動車産業で培われた精密加工技術、電子制御技術、サプライチェーンマネジメントは、次世代船舶の開発に直結します。
本提案では、東海地方の産業再構築というストーリーを軸に、造船・海事産業の可能性を発信する映像コンテンツをご提案します。
企画1:
ドキュメンタリーシリーズ「東海から世界の海へ」(全6話・各15分)
コンセプト
東海地方の造船・海事産業の現在と未来を、人と技術に焦点を当てて描く連続ドキュメンタリー。
各話構成案
第1話「巨大な船が生まれる場所」
名古屋港周辺の造船所での船舶建造プロセス
自動車工場とは異なる、造船の「一品生産」の世界
ベテラン職人と若手エンジニアの対話
第2話「世界の物流を支える技術」
LNG運搬船、コンテナ船など特殊船舶の技術解説
名古屋港の貿易実績と海上輸送の重要性
物流の「見えない血管」としての船舶の役割
第3話「自動車技術が船を変える」
自動運航技術への自動車産業の技術転用
EV技術と電動船舶の開発
トヨタ系サプライヤーの海事産業参入事例
第4話「脱炭素の海へ」
水素・アンモニア燃料船の開発最前線
洋上風力発電と関連船舶
環境技術で世界をリードする東海地方の企業
第5話「次世代を育てる」
名古屋大学、豊橋技科大などの海事研究
工業高校・高専での人材育成
自動車から海事へのキャリアチェンジ事例
第6話「2050年の東海地方」
産業構造の多角化がもたらす未来
造船・自動車・航空宇宙の技術融合
若い世代が描く「新しいモノづくり」のビジョン
展開・活用
地域テレビ局での放送
YouTube・企業サイトでの配信
産業誘致・人材採用プロモーションへの活用
教育機関での教材利用
企画2:
プロモーション映像「TOKAI MARITIME INNOVATION」(8分・多言語版)
コンセプト
東海地方の造船・海事産業クラスターを、海外投資家・海外企業向けにアピールする高品質プロモーション映像。
映像構成
オープニング(1分)
名古屋港の空撮、巨大なコンテナ船の入港
「世界第3位の経済大国・日本の、最大貿易港」というナレーション
東海地方の地理的優位性の提示
第1章:技術の集積(2分)
自動車、航空宇宙、工作機械、電子部品の企業群
精密加工から巨大構造物まで対応できる技術レンジ
世界トップクラスのサプライチェーン密度
第2章:次世代船舶の開発拠点(2分)
自動運航船のテスト航行シーン
水素燃料船の開発施設
デジタルツイン技術による設計・シミュレーション
実際の造船現場での先端技術の実装
第3章:人材とイノベーション(1.5分)
世界レベルの研究機関と大学
製造業で培われた「改善文化」
グローバル企業との協働事例
外国人エンジニアのインタビュー
エンディング(1.5分)
「モビリティの未来は、陸から海へ」というメッセージ
東海地方の産業ポートフォリオの進化
投資・協業の呼びかけ
制作仕様
活用シーン
海外の展示会・カンファレンス
投資誘致プレゼンテーション
自治体・経済団体のウェブサイト
LinkedInなどBtoB SNS
制作体制と地域連携
名古屋拠点の強み
撮影現場への近接性(移動コスト削減、継続取材が可能)
企業・自治体との信頼関係構築
製造業の文化・専門用語への理解
地元メディア・大学との連携体制
想定される協力機関
愛知県、名古屋市、四日市市などの自治体
名古屋港管理組合、四日市港管理組合
地域の造船会社、重工業メーカー
中部経済連合会
名古屋大学、豊橋技術科学大学
地域テレビ局、新聞社
期待される効果
短期的効果
造船・海事産業の認知度向上
求職者・学生の関心喚起
地域企業のブランディング支援
中長期的効果
産業構造の多角化促進
若手人材の地域定着
海外からの投資・協業の増加
「モビリティ産業=自動車」という固定観念の転換
地域全体への波及効果
「東海=製造業の未来を創る地域」というブランド再構築
産官学連携の深化
次世代産業への投資機運の醸成
まとめ
東海地方は今、歴史的な転換点に立っています。自動車産業で培われた技術と人材を、次の成長分野へとつなぐ「橋渡し」が必要です。
造船・海事産業は、その最有力候補の一つです。そして、この産業転換のストーリーを可視化し、広く伝えることこそが、私たち映像制作会社の役割だと考えます。
名古屋という地の利を活かし、長期的な視点で地域産業を記録・発信していく。それは単なる映像制作ではなく、地域の未来を共に創る営みです。
ぜひ、このプロジェクトを一緒に実現させていただければと思います。
【当社プロデューサー制作実績】
・ポートセールス映像
名古屋港管理組合・名古屋港埠頭公社・中部国際空港・四日市港管理組合
・採用/PR
ONE TEAM 〜 今を支え未来を創る 四日市海運グループの仕事(非公開)
【造船業他社事例】
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【この記事について】
本記事は、名古屋の映像制作会社・株式会社SynAppsが執筆しました。私たちは「名古屋映像制作研究室」を主宰し、さまざまな業界の知見を収集・分析しながら、企業や団体が抱える課題を映像制作の力で支援することを目指しています。BtoB領域における映像には、その産業分野ごとの深い理解が不可欠であり、その知識と経験をもとに制作に取り組んでいます。
【執筆者プロフィール】
株式会社SynApps 代表取締役/プロデューサー。名古屋を中心に、地域企業や団体のBtoB分野の映像制作を専門とする。プロデューサー/シナリオライターとして35年、ディレクター/エディターとして20年の実績を持つ。




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