top of page

名古屋の映像制作者が知っておくべき物流業界 - その2「日本の物流の課題」

名古屋の映像制作者が知っておくべき物流業界 - その2「日本の物流の課題」

6. 共通課題と対応策

7. 政策的取り組みと制度改革

8. 将来展望と課題

9. 結論



1. 日本の物流業界全体の概況


1.1 物流業界の基本構造


日本の物流業界は、国内総生産(GDP)に占める割合が約5%、全サービス産業の約10%を占める重要な産業分野である。主要な交通手段として、トラック運送、鉄道貨物輸送、海上輸送、航空輸送が存在し、それぞれが異なる特性と役割を担っている。

物流業界は、製造業から小売業まで、あらゆる産業の基盤を支える役割を果たしており、経済活動の血液とも称される。特に日本は、島国という地理的特性や、製造業が経済の中核を担う産業構造により、効率的な物流システムの構築が経済競争力に直結している。


1.2 現在の市場環境


2025年現在、日本の物流業界は複数の深刻な課題に直面している。最も顕著なのは慢性的な人手不足であり、特にトラック運転手の不足は深刻化している。全日本トラック協会の調査によると、運転手の平均年齢は50歳を超えており、高齢化が進行している。

また、EC(電子商取引)市場の急速な拡大により、宅配需要が急増している一方で、配送効率の低下や再配達問題などが顕在化している。新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインショッピングの利用が一般化し、物流に対する需要は構造的に変化している。



2. トラック運送業の現状と課題


2.1 業界の規模と構造


トラック運送業は、日本の物流業界において最も重要な地位を占めている。国内の貨物輸送量の約90%がトラック運送によって担われており、その経済的影響は計り知れない。業界には約62,000の事業者が存在し、その大部分が中小企業で構成されている。

事業者の規模別構造を見ると、保有車両数10台以下の小規模事業者が全体の約60%を占めており、業界の零細性が顕著である。これは、規制緩和により参入障壁が低下した結果、多数の小規模事業者が参入したことに起因している。


2.2 2024年問題の具体的影響


2024年4月から施行された働き方改革関連法により、トラック運転手の時間外労働時間の上限が年間960時間に制限された。この規制により、従来の長時間労働に依存していた運送モデルが維持困難になり、業界全体に深刻な影響を与えている。

具体的な影響として、運転手の収入減少により離職率が上昇し、既に深刻だった人手不足がさらに悪化している。国土交通省の試算では、対策を講じない場合、2024年度に輸送能力が14%不足し、2030年度には34%の不足が予測されている。


2.3 労働環境と人材確保の課題


トラック運送業の労働環境は、他の産業と比較して厳しい状況にある。平均年収は全産業平均を下回り、労働時間は長時間に及ぶことが常態化している。また、荷待ち時間や荷役作業などの付帯業務により、実際の運転時間以外の拘束時間が長いことも問題となっている。

人材確保においては、若年層の入職率の低さが深刻な問題となっている。運転手の高齢化が進み、定年退職による離職者数が新規入職者数を大幅に上回る状況が続いている。また、大型免許取得のハードルの高さや、女性運転手の就業率の低さも、人材確保を困難にしている要因である。


2.4 運送コストと価格転嫁の問題


燃料費の高騰、人件費の上昇、車両維持費の増加により、運送コストは継続的に上昇している。しかし、荷主企業との価格交渉力が弱い中小事業者が多いため、コスト上昇分の価格転嫁が困難な状況にある。

この問題は、業界の収益性悪化を招き、設備投資や労働条件改善への資金確保を困難にしている。政府は「トラックGメン」による監視強化や、適正な運賃収受のための取り組みを推進しているが、根本的な解決には時間を要すると予想される。



3. 鉄道貨物輸送の現状と課題


3.1 鉄道貨物輸送の特性と役割


鉄道貨物輸送は、大量の貨物を長距離にわたって効率的に輸送できる特性を持ち、環境負荷の低い輸送手段として注目されている。特に、CO2排出量がトラック運送の約1/8と環境優位性が高く、モーダルシフトの中核を担う輸送手段として期待されている。

日本の鉄道貨物輸送は、JR貨物が全国ネットワークを運営し、主要な産業拠点間を結ぶ幹線輸送を担っている。コンテナ輸送が主力であり、製造業の部品輸送や、石油・化学製品などの危険物輸送において重要な役割を果たしている。


3.2 輸送量と市場シェア


鉄道貨物輸送の国内貨物輸送に占めるシェアは、トン数ベースで約4%、トンキロベースで約22%となっている。シェア自体は限定的だが、長距離大量輸送における重要性は高い。特に、本州と北海道、九州を結ぶ長距離輸送では、鉄道が重要な役割を担っている。

近年、環境意識の高まりとトラック運送業の人手不足を背景に、鉄道貨物輸送への関心が高まっている。大口荷主企業を中心に、モーダルシフトの検討が進められており、輸送量の増加傾向が見られる。


3.3 インフラと設備の課題


鉄道貨物輸送の課題として、インフラの老朽化と設備投資の不足が挙げられる。特に、貨物駅の設備更新や拡張工事が必要な箇所が多数存在するが、投資資金の確保が困難な状況にある。

また、旅客輸送との線路共用により、輸送ダイヤの制約が大きく、柔軟な輸送サービスの提供が困難な面がある。新幹線ネットワークの拡充により、在来線での貨物輸送経路が制限される場合もあり、ネットワーク維持が課題となっている。


3.4 競争力強化への取り組み


鉄道貨物輸送の競争力強化に向けて、輸送効率の改善と多様なサービスの提供が進められている。具体的には、長編成列車の運行や、高速貨物列車の増設による輸送時間短縮が図られている。

また、荷主企業のニーズに応じた専用列車の設定や、定時性の向上、トラックとの連携強化による複合一貫輸送の充実が進められている。デジタル技術を活用した運行管理システムの導入により、輸送品質の向上も図られている。


4. 海上輸送の現状と課題


4.1 海上輸送の重要性


海上輸送は、日本の対外貿易において極めて重要な役割を担っている。島国である日本の特性上、輸出入貨物の99%以上が海上輸送により処理されており、経済活動の根幹を支える輸送手段である。

国内輸送においても、本土と離島間の輸送や、大型貨物・大量貨物の輸送において重要な役割を果たしている。特に、石油・LNG・石炭などのエネルギー資源の輸送や、自動車・鉄鋼などの産業製品の輸送において、海上輸送は不可欠な存在である。


4.2 港湾インフラの現状


日本の港湾インフラは、高度経済成長期に整備された施設が多く、老朽化が進行している。主要港湾においては、大型コンテナ船への対応や、効率的な荷役システムの導入が進められているが、投資規模の制約により整備が遅れている港湾も存在する。

また、国際競争の激化により、アジア主要港との競争力格差が拡大している。特に、釜山港やシンガポール港などの競合港湾と比較して、コスト競争力や利便性の面で劣勢に立たされている港湾が多い。


4.3 海運業界の構造変化


海運業界は、船舶の大型化とアライアンス(企業連合)の進展により、構造的な変化を遂げている。コンテナ船の大型化が進む一方で、寄港地の集約化により、地方港湾の取扱量減少が問題となっている。

国内海運においても、内航海運業者の経営統合や協業が進んでおり、業界再編が加速している。特に、船員の高齢化と新規参入の減少により、持続可能な事業運営が課題となっている。


4.4 環境規制への対応


国際海事機関(IMO)による環境規制の強化により、海運業界は大きな変革期を迎えている。硫黄酸化物(SOx)排出規制の強化や、温室効果ガス削減目標の設定により、船舶の環境性能向上が急務となっている。

これらの規制対応には多額の投資が必要であり、特に中小海運事業者にとっては大きな負担となっている。一方で、環境性能の向上は、長期的な競争力強化につながると期待されている。

めには、短期的な対症療法ではなく、長期的な視点に立った戦略的な取り組みが必要である。


5. 航空貨物輸送の現状と課題


5.1 航空貨物輸送の特性


航空貨物輸送は、高速性と信頼性を特徴とする輸送手段であり、高付加価値品や緊急輸送において重要な役割を果たしている。電子部品、医薬品、生鮮食品などの時間的制約の厳しい貨物や、軽量で高価な製品の輸送において、不可欠な存在となっている。

日本の航空貨物輸送は、旅客便の貨物室を利用した混載輸送と、専用の貨物機による輸送に大別される。国際輸送が中心であり、国内輸送のシェアは限定的である。


5.2 市場規模と動向


日本の航空貨物取扱量は、リーマンショック後に大幅に減少したが、近年は回復傾向にある。特に、アジア域内での部品調達や製品供給の増加により、アジア路線の貨物需要が拡大している。

COVID-19の影響により、旅客便の減便が相次いだ結果、航空貨物の輸送能力が大幅に制約され、運賃の高騰が発生した。この経験により、航空貨物輸送の重要性が再認識され、専用貨物機の需要が高まっている。


5.3 空港インフラの課題


日本の航空貨物ハブ機能は、成田国際空港と関西国際空港が中心となっているが、アジア主要空港との競争が激化している。特に、仁川国際空港や香港国際空港などと比較して、深夜早朝の運航制限や、貨物処理能力の制約が競争力の阻害要因となっている。

また、地方空港における貨物取扱施設の整備が遅れており、地域間格差が拡大している。物流効率化の観点から、空港アクセスの改善や、陸送との連携強化も重要な課題となっている。


5.4 技術革新への対応


航空貨物輸送分野では、IoT技術やAI技術を活用した物流効率化が進められている。貨物の追跡システムの高度化や、需要予測の精度向上により、サービス品質の向上が図られている。

また、ドローンを活用した配送サービスの実証実験が各地で実施されており、ラストワンマイル配送の新たな手段として期待されている。しかし、航空法等の規制対応や、技術的課題の解決が必要である。


【弊社制作事例】


四日港コンテナヤード
四日港コンテナヤード

Commentaires


bottom of page