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映像制作を発注する企業担当者のための言葉の解説です。
大ロング
エスタブリッシュショットとしての「引きの絵」を超越した、極めて遠方と周辺の風景を含めた、広角なフレーミングで捉えた映像です。英語圏での、一般的なショットサイズ分類で言うところの「エクストリームロングショット (Extreme Long Shot / ELS)」や「ベリーロングショット (Very Long Shot / VLS)」に相当する、あるいはそれらをさらに強調した呼び方です。
「大ロング」は単に遠くから撮るだけでなく、そのショットが持つ情報量や感情的なメッセージを強調するために意図的に使われるショットサイズ用語、フレーミング用語です。
ロケハン時に、ディレクターとカメラマンの間で交わされる会話ならば「ここからの展望は、この街の成り立ちをぜんぶ見渡せるねえ」「うん、ここで、大ロングが欲しいところだよね!」という感じです。
「大ロング」が使われる意図や効果
規模感の表現
広大な自然、巨大な建造物、あるいは多くの人々が密集している様子など、その場の圧倒的な規模感を表現するのに効果的です。
人物の相対的な小ささ
画面の中に人物が写っていたとしても、その人物が風景の中でいかに小さい存在であるかを示すことで、孤独感、無力感、あるいは広大な世界の一部であるという感覚を強調できます。
場所の提示
登場人物がこれから足を踏み入れる場所、あるいは物語の舞台となる場所を、全体像として提示する役割(エスタブリッシュショット)を最大限に果たします。
叙情的な表現
美しい風景や、時間の流れ、季節の移ろいなどを叙情的に描く際にも用いられます。

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。
映像制作会社としての視点
山岳番組や映画のクライマックスで、山頂に立つ登山者を上空から遠く引きのアングルで捉えた映像を見たことはありませんか?あの圧倒的なスケール感を生む構図こそ、映像制作の世界で「大ロング」と呼ばれるショットです。
1. 「大ロング」という視点
「大ロング」は、英語では「エクストリーム・ロングショット」と呼ばれます。被写体である人物が画面の中で「点」や「米粒」のように見えるほど、遠くから広範囲を映し出す構図のことです。ここでは、特定の誰かが主役というよりも、その人が置かれている「場所」や「大自然」そのものが主役になります。
2. なぜ「引きの画」が感動を呼ぶのか
山岳番組の登頂シーンを例に考えてみましょう。それまでは、苦しそうな表情や険しい足元の「アップ」が続き、視聴者も一緒に息を切らして登っているような感覚になります。
そこで一気にカメラが引き、大空からの「大ロング」に切り替わると、以下のような効果が生まれます。
達成感の可視化
「あんなに険しい道を、こんなに高い所まで登ってきたんだ」という事実を、周囲の山脈や雲海を含めた全体像で見せることで、言葉以上に雄弁に語ります。
開放感(カタルシス)
狭い視界から一気に視界が開けることで、視聴者は登頂の喜びを疑似体験し、大きな爽快感を与えます。
3. 自然の大きさと人間の対比
大ロングのもう一つの魔法は、「スケール感の対比」です。巨大な山塊という圧倒的な自然の中に、ポツンと小さな人間が映ることで、自然の厳かさと、それに挑む人間の力強さが際立ちます。あえて「小さく映す」ことで、逆にその存在感を大きく見せているのです。
最近ではドローンの普及により、こうしたダイナミックな映像がより身近になりました。次にテレビや映画を見る際は、この「大ロング」が出てきた瞬間に注目してみてください。制作陣が「今、この場所の凄さを伝えたい!」と情熱を込めた、渾身のカットであるはずです。
