動画・映像制作用語辞典 | 名古屋映像制作研究室
主観
ビデオ撮影・映像制作における「主観」とは、登場人物ないしは、物語を語る人の視点から見た映像を指します。カメラがその人物の目線の位置に配置され、その人物が実際に見ているであろう景色や状況を視聴者に見せる撮影手法です。
視聴者はその人物と同じ体験をしているような感覚を得られるため、感情移入が深まります。
主観撮影とは対照的に客観撮影は、第三者の視点から登場人物や状況を捉える手法です。多くの映画やドラマでは、主観と客観の撮影を組み合わせて物語を構成しています。
映像が「主観」であることを定義する要素
これらの要素が組み合わさることで、視聴者が登場人物の体験を共有できる主観映像が成立します。
1. カメラアングル・視点
カメラが登場人物の目線の高さ・角度に配置される
その人物の物理的な視点位置と一致する映像
2. 視線の動き
登場人物の頭や目の動きに合わせてカメラが動く
見回す、振り返る、見上げる・見下ろすなどの自然な視線移動
3. フレーミング
人間の視野角に近い画角(通常の人の視界を模倣)
鼻や頬の一部がフレーム端に見えることがある
4. カメラワーク
歩行時の上下動やブレ
走る時の激しい揺れ
驚いた時の急激なカメラ移動
5. 対象との距離感
会話相手との実際の距離感を反映
手を伸ばす動作では手が大きく映る
6. 身体的制約の反映
まばたきによる一瞬の暗転
疲労時のふらつき
酔った状態での不安定な映像
7. 感情・状態の表現
恐怖時の震え
混乱時の焦点の定まらない映像
意識朦朧時のぼやけた画面

【関連用語】
視点
ただそこにあるものを映しているわけではない
私たちは普段、テレビや映画を観ていて、映像はカメラがそこにあるものをただ記録しているだけだと感じがちです。まるで窓から外の景色を眺めるように、客観的な事実が映し出されていると思い込んでいるかもしれません。しかし、実はあらゆる映像には、作り手の意図や、物語の中の「誰か」の視点が込められています。
視聴者の気づかない「視点」の存在
なぜ、視聴者は映像に「視点」があることを意識しにくいのでしょうか?それは、映像が非常に自然に、私たちの日常的な「見る」という行為に近い形で情報を提供しているからです。私たちは普段、自分の目を通して世界を見ていますが、それが「自分の視点」であると改めて意識することはありません。映像も同じように、自然に提示されるため、そこに隠された「視点」に気づきにくいのです。
映像必ず「視点」が存在する
誰の「目」を通して見せるか
映像は、必ず「誰かの目」を通して世界を映し出しています。それはカメラを構える撮影者の目であることもあれば、物語の登場人物の目であることもあります。例えば、ホラー映画で暗闇の中を探索する映像が、まるで自分が歩いているかのように感じられるのは、カメラが主人公の目線に設定されているからです。もし、これが部屋の隅に置かれた固定カメラからの映像だったら、同じ恐怖は感じないでしょう。
何に「注目」させるか
映像の作り手は、何に光を当て、何から目をそらすかを常に選んでいます。ある人物の顔にズームしたり、特定の場所に焦点を合わせたり、あるいは画面の端に何かをちらりと映したり。これらはすべて、「ここに注目してほしい」という作り手の意図、つまり「視点」の表れです。ただ風景を広く映すだけでも、「この壮大な景色を見てほしい」という視点があります。
感情や意図を「伝える」ため
映像は、単なる情報を伝えるだけでなく、感情や状況を伝えるためのものです。ある人物が不安を感じている場面で、手元が小刻みに震える映像は、その人物の「不安な視点」を私たちに共有させます。カメラの動き、映すもの、映さないもの、すべてが作り手の「視点」を通して、物語の感情やテーマを深く伝えているのです。
映像の「視点」がもたらすもの
このように、映像は単に現実をコピーしているのではなく、作り手の「視点」を通して現実を再構築し、私たちに提示しています。この「視点」があるからこそ、私たちは映像に対して様々な感情を抱き、物語に深く引き込まれ、ただ情報を受け取るだけではない体験を得られるのです。
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