top of page
映画のプレビュー

第七章:編集におけるカットの選択と構成

物語に必要なカットの厳選

 

撮影された膨大な素材の中から、物語を効果的に語るために本当に必要なカットを選び抜く作業です。単に映像的な品質が良いだけでなく、シーンの意図や登場人物の感情、物語の進行に貢献するカットを見極める必要があります。不要なカットを排除することで、映像はより引き締まり、観客の集中力を維持することができます。

カットの順番

 

選ばれたカットをどのような順番で繋ぎ合わせるか、そしてそれぞれのカットの長さをどのように調整するかによって、物語の意味は大きく違ってきます。単純な時間順の問題だけでなく、あるカットの後に別のカットを繋ぐことで、出来事の因果関係を明確にしたり、逆に曖昧にしたりすることも可能です。意図的に順序を入れ替えることで、観客の推理を惑わせ、サスペンスを高めることもできます。

 
トランジションの選択とその効果

 

トランジション(カットとカットの切り替え効果)の選択も、編集における重要な要素の一つです。カットとカットを自然に繋ぐためのディゾルブフェードアウト、場面転換を明確に示すためのワイプなど、トランジションの種類によって、観客に与える印象や物語の解釈が大きく変わります。例えば、時間の経過や場所の移動を緩やかに示したい場合にはディゾルブが、シーンの終わりや始まりを強調したい場合にはフェードイン・フェードアウトが用いられます。意図的に特殊なトランジションを使用することで、特定の視覚効果や感情的な強調を生み出すことも可能です。

リズムとテンポのコントロール

 

編集は、映像のリズムとテンポを決定づける重要なプロセスです。カットの長さや繋ぎの間(ま)を調整することで、映像全体のスピード感や緊張感をコントロールすることができます。短いカットを連続させることで、スピーディーで緊迫感のあるシーンを作り出し、長いカットを用いることで、ゆったりとした雰囲気や登場人物の感情をじっくりと見せる効果を生み出すことができます。音楽や効果音との組み合わせによって、さらにリズムとテンポは強調されます。

視線の流れと情報の提示

 

編集者は、カットを繋ぎ合わせることで、観客の視線を意図した方向に誘導し、必要な情報を効果的に提示することができます。視線のルールや動きのルールを意識しながらカットを繋ぐことで、観客は自然に物語の流れを追い、登場人物の感情や状況を理解することができます。また、重要な情報を強調するために、特定の被写体をクローズアップで捉えたり、印象的な瞬間をスローモーションで再生したりするなどのテクニックも用いられます。

物語の再構築と新たな意味の創出

 

編集は、単に撮影された素材を順番に並べるだけでなく、カットとカットの組み合わせによって、撮影時には意図されていなかった新たな意味や解釈を生み出す可能性を秘めています。例えば、ある人物の笑顔のカットの後に、悲劇的な出来事を暗示するカットを繋ぐことで、観客に深い感情的なインパクトを与えることができます。このように、編集者の創造的な視点と技術によって、映像作品はより豊かで多層的なものへと進化します。

編集者と監督の連携

 

編集作業は、通常、監督編集者が密に連携を取りながら進められます。監督の意図を正確に理解し、それを映像として具現化するために、編集者は自身の技術と感性を駆使します。試写を重ねながら、カットの選択、構成、リズム、テンポなどを微調整し、作品の完成度を高めていきます。

ライオンの絵コンテ.007
bottom of page