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映画のプレビュー

第五章:絵コンテの作成とカット割り

シーンの目的と流れの明確化

 

映像制作におけるカット割りの具体的な実践段階として、絵コンテの作成は重要です。絵コンテは、撮影前に各カットの構図、カメラアングル、被写体の動き、そしてカットの繋がりを視覚的に表現するものであり、監督やスタッフ間の共通認識を形成し、効率的な撮影を実現するための設計図となります。絵コンテを作成する際には、まず、シーンの目的と流れを明確に理解することが出発点となります。そのシーンで何を伝えたいのか、どのような情報を提示する必要があるのか、登場人物はどのように動き、どのような感情を表現するのか、といった要素を整理します。

 

カットへの落とし込みと構図の検討

 

次に、これらの要素を具体的なカットに落とし込んでいきます。各カットにおいて、どのような被写体を、どのようなサイズとアングルで捉えるのかを決定します。例えば、登場人物の会話シーンであれば、それぞれの表情を捉えるクローズアップ、二人の位置関係を示すミディアムショット、そして背景となる状況を示すロングショットなどを検討します。カットの構図を考える際には、画面の構成要素を意識することが重要です。主要な被写体の配置、背景の要素、光の当たり方などを考慮し、視覚的に効果的な画面を作り出すことを目指します。構図の基本原則を参考にしながら、物語の内容や表現したい感情に合わせて、最適な構図を選択します。

カメラワークの指示と視覚効果の意図

 

また、カメラの動きも絵コンテに含める必要があります。パン、チルト、ドリートラックズームといったカメラワークをどのように活用するのかを具体的に指示することで、撮影時の混乱を防ぎ、意図した映像表現を実現することができます。矢印などを用いて、カメラの動きや被写体の動きを分かりやすく図示することが大切です。

カットの長さ(尺)の予測

 

さらに、カットの長さ(尺)も絵コンテの段階で検討しておくと、編集時の作業がスムーズになります。各カットに必要な時間的な長さを予測し、絵コンテに書き込んでおくことで、撮影時に必要な素材の量を把握することができます。ただし、撮影時には予期せぬ状況が発生することもあるため、ある程度の余裕を持たせておくことも重要です。

カットとカットの繋がりと視線誘導

 

絵コンテは、単にカットの構図を描くだけでなく、カットとカットの繋がりを考慮することも非常に重要です。前のカットの終わりと次のカットの始まりがどのように関連し、観客の視線がどのように誘導されるのかを意識しながら、スムーズで自然な流れを作り出すことを目指します。視線のルールや動きのルールといった映像文法を適切に活用することが求められます。

デジタルツールの活用

 

最近では、手描きの絵コンテだけでなく、デジタルツールを活用して絵コンテを作成することも一般的になっています。デジタルツールを使用することで、より詳細な情報(レンズの種類、ライティング、音声など)を記録したり、動画形式でプレビジュアライゼーションを作成したりすることも可能です。

他セクションとの連携ツールとしての絵コンテ

 

絵コンテの作成は、監督や撮影監督だけでなく、照明、美術、衣装など、他のセクションのスタッフとのコミュニケーションするためのツールでもあります。絵コンテを共有することで、各セクションは監督の意図を正確に理解し、それぞれの準備を進めることができます。

ライオンの絵コンテ.005
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