パン
映像制作用語辞典 | 株式会社SynApps
「パン(ニング)」とは、撮影しながらカメラを縦・横・斜め方向に振ることです。 つまりフレーミングAからフレーミングBにレンズを向けることです。
最近では縦方向にカメラを振ることを「Tilt(チルト)」と言う人もいますが、日本のムービー界では、上下の動きは「縦パン」と言い、上に振ると「パンアップ」、下に下げると「パンダウン」と言ってきました。原則的には三脚に乗せて行いますが、ハンディでパンニングすることもあります。
panはpanoramaのpanだから、水平方向の広がりのことであるとの説明もありますが、panoramaとは全天周的な概念ですので、むしろすべての方向性を示しています。もし「パンは水平に動かすこと」「チルトは上下に動かすこと」とするならば、斜めの動きを指す言葉がありません。
高解像度のアスペクト比16:9があたりまえになった今、小さな被写体が粗くてわからないとか、画角に収まらないことが少なく、パンニングを必要とする場面も少なくなったことと、パンニングが前時代的な雰囲気を醸し出すと思う人もいることが、パンニングへの関心低下を招いているのかも知れません。
パンニングはその動き自体が映像のモーションを生むものです。始めの「止め」、過不足のないスピード、決めの「止め」は、編集ソフトの機能で言えば「イーズイン・イーズアウト」。ムービーカメラマンの腕の見せ所です。
ワンマンプロダクション(カメラマン兼ディレクター兼エディターとか)現場や、全員カメラマン現場が増えたので、昔のようにディレクターとカメラマンとが「じゃあパンしようか!」とか、「ここはパンダウンでいいかな?」とか、カメラワークについて会話することもないのかなと思います。
目的
視野を広げる
被写体を追う
シーンの広がりを表現する
画角に収まらない、離れた位置にある物相互の位置関係を示す
フィックスではエスタブリッシュショットのフレーミングが不可能な時の苦肉の策
パンの注意点
カメラワーク自体(動き)が映像の重要な要素になります。パンニングやズーミングなど、カメラワークが生む動き自体が演出要素になるショットでは、ディレクターは編集時に、動き出しや止めのタイミングをナレーションのキーワードとリンクさせるかも知れません。したがってカメラワーク前後の「止め」は5~10秒保持すべきです。またカメラワークのing時間(スピード)もディレクターとよく相談しましょう。場合によっては、被写体の動きに同期させることもあります。その場合はディレクターのキューをもらいましょう。
速度と止め
パンの速度と「止め」で、途中を含め、映る被写体の視認性を調整します。
スムーズさ
動きがカクカクしないように、スムーズにパンを行うことが重要です。
三脚の精度
ある程度の重みと、雲台の滑らかさも重要です。
オーディオミキサーにおける「パン」
一般的な機能として「パンポット」と呼ばれ、ミキサー(音響調整卓)の各チャンネルソース每に調整つまみがあり、2Chステレオその音源(ソース)を左右のどちらに振り分けるか、あるいは左右のどの位置に定位させるかを調整できます。

【関連情報】
1. フィックス(Fixed)
パンニングの反対の概念となる、カメラを固定して撮影する基本的な手法です。人物の対話シーンやインタビュー、商品撮影などで使用されます。安定した構図を維持して、視聴者に安定感のある映像を提供します。三脚やペデスタル(カメラ台)を使用して行われ、微細な振動も防ぐことが重要となります。高解像度化が進む現代では、わずかなブレも目立ちやすくなっているため、より厳密なフィックス技術が求められます。
2. トラッキング(Tracking)
被写体と並行して横方向に移動しながら撮影する技法です。パンニングが固定位置からの回転運動であるのに対し、トラッキングはカメラ自体が移動します。ドリーやレールを使用して行われ、人物の歩きや走りのシーン、車両の走行シーンなどで多用されます。滑らかな移動ショットを実現するために、レールの設置や動線の確保が重要な準備作業となります。
3. スイッシュパン(Swish Pan)
「ホイップパン」とも呼ばれ、意図的に高速なパンニングを行い、画面をブラーさせる技法です。場面転換やテンポの変化を表現する際に使用されます。特にMVやCM、ドラマの演出で重宝されます。デジタル編集でも似た効果を出せますが、撮影時の実際の動きの方が自然な印象を与えられるため、依然として重要な撮影技術として認識されています。
4. ズームパン(Zoom Pan)
ズーム操作とパンニングを組み合わせた技法です。被写体のサイズを変えながらパンニングします。広いロケーション撮影やスポーツ中継で使用され、空間の広がりを見せながら視点を誘導するのに効果的です。当然、フォーカスもずれていきますから、親指と人差し指でズームリング、中指か薬指でフォーカスリングを同時に調整しながら、さらにもう片方の手でパン棒を押す。あるいは、パン棒は使わず、片手で(電動)ズームボタン、別の手でフォーカスリング、パンニングはズームボタンを押している側の腕でカメラを抱えて回す、という技術です。