動画・映像制作用語
【ホイップパン(カット)】
whip pan
「ホイップパン(Whip pan)」とは、ビデオカメラを非常に素早く、勢いよく回転させるパンニング法です。
意図的に高速なパンニングを行い、画面をブラーさせる技法です。あまりにも速いため、パンニングの途中の映像はブレてしまい、被写体がはっきりと識別できない残像のような効果が生まれます。このブレは意図されたものであり、視覚的な移行や時間の圧縮を表現する上で重要な要素となります。
一般的に、このカメラワークではパンニング後のフィックス(止め)は使いません。つまり編集によって、動きの途中でカットされます。
ホイップカット
このカメラワークによって撮影された映像は、次につながるカットへのトランジションの効果を持っているため、「ホイップカット」とも呼ばれます。映像編集におけるトランジション効果としては、瞬間的なブレやノイズを伴う「グリッチ」に近い視覚的な印象を与えることがあります。
目的
場面転換の強調
時間や場所が急激に変化したことを、視覚的に強く印象づけたい場合に用いられます。
状況の急変や混乱の表現
突発的な出来事や、登場人物が混乱しているような状況を表現する際に、視聴者の視覚を揺さぶることで、その感情や状況を共有させる効果があります。
視線の誘導と期待感の醸成
意図的にブレた映像を見せることで、視聴者の注意を一瞬で引きつけ、次に何が映し出されるのかという期待感を高めることができます。ブレの先に重要な情報や衝撃的な場面を配置することで、より効果的です。
時間の圧縮
比較的短い時間で、ある程度の時間の経過や、移動の様子を表現したい場合に、簡潔に状況を伝える手段として用いられます。

【関連用語】
1. クイックパン
カメラを素早く一気に振り切る撮影技法です。被写体の動きを追う際や、ある場所から別の場所に急いで視線を誘導したい時に使われます。パンニングの途中はブレて見えるため、映像としては認識されませんが、その素早い動きによって、状況の急激な変化や、遠く離れた二つの要素の関係性を瞬間的に示す効果があります。特にニュース報道などで、短い時間で多くの情報を伝える必要のある場面で多用されます。
2. 報道パン
「報道パン」とは、報道取材のカメラワークで使われる「素早いパンニング」のことです。
カメラワーク用語で正しく言うと「クイックパン」です。
このパンニング法で撮った画は、一般的なPRビデオの撮影では、すわ「事件か!?」という印象を与えるため使いようがありません。昔、報道(ビデオ)カメラマンがブライダルビデオ撮影のアルバイトをすると、この「報道パン」をして叱られている姿をよく目にしました。幾分、揶揄する意味で、一部の地域、一部の業界で使われていた用語です。
3. 縦パン
カメラを垂直方向にパンニングすることを、「縦パン」と言い、上にパンニングすることを「パンアップ」、下にパンニングすることは「パンダウン」と言います。
4. チルト
カメラを垂直方向にパンニングする、つまり上下に動かすカメラワークを、近年「チルト」とも呼びます。
縦パンと同義で使われます。デジタル一眼カメラ撮影や、アクションカメラ(GpProやドローン、ジンバルカメラなど)のカメラワークに関する記述が拡散・拡大解釈され、インターネットと生成AIのエコーチェンバーによって定着した用語です。
5. パン
カメラワークのひとつで、その場でフレーミングAからフレーミングBにカメラを向けることです。カメラを向ける方向は、縦横斜めすべてです。しかし、近年では「カメラを固定した状態で、レンズを水平方向(左右)に動かす基本的なカメラワークです。」という解釈が主流になりつつあります。