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映像制作見積書の要点4「作画」

更新日:3 日前

「線画」の変遷:企業映像制作の現場から見る表現の進化


映像制作の現場で「作画」という言葉を耳にすると、少し古めかしい響きを感じる人もいるかもしれません。映像がまだフィルムによって作られていた時代には、この分野は「線画」と呼ばれ、実際に絵を描くクリエイターは「線画屋さん」と呼ばれていました。大手映画会社の中には「線画部」という専門部署を自社で抱え、そこで多くの線画屋さんが活躍していたのです。



昔ながらの「フリップ」と手描きアニメーション


かつては「フリップ」と呼ばれるB4横サイズくらいの厚紙が線画屋さんの主要なキャンバスでした。ディレクターからの大まかなラフ画を受け取り、線画屋さんはそれを手作業で精緻なイラストへと仕上げていきました。もし静止画として使用するならば、そのフリップ1枚をムービーカメラで撮影するだけで済みました。ちなみに、映画や映像作品に登場する字幕(テロップカード)の作成も、実は線画屋さんの大切な仕事の一つでした。

アニメーションを制作する場合には、その厚紙の上に薄い透明な透明アクリルを何枚も重ね、それぞれのアクリルに少しずつ動きの異なる絵を描き込んでいきました。撮影は、これらの絵を1枚1枚丁寧にコマ撮りし、最終的に編集段階でそれらの画像を連続させることで、絵が動いているかのようなアニメーションとして完成させていたのです。



イラストとアニメーションの現代的な関係


現在の映像制作プロダクションにおいて、イラストの制作は、フリーランスのイラストレーターに外部委託することが一般的です。完成したイラストは画像データとして受け取ります。現代のイラスト業界は、その雇用環境が非常に厳しいことで知られており、時には信じられないような低価格で発注が行われることも少なくありません。

一方で、世間に広く名を知られたイラストレーターや漫画家にオリジナルの絵を依頼するとなれば、その費用は相当な高額になることは容易にご想像いただけるでしょう。しかし、すでに多くの人々に認知されている絵のタッチや画風を持つイラストは、視聴者への訴求力という点で非常に大きな力を秘めているのも事実です。


イラストの外注費は、映像制作の総予算を押し上げる要因となります。特にBtoB(企業間取引)向けのPR映像のような堅い内容の仕事では、イラストというよりも、ブロック図やフロー図といった、より幾何学的な図形が求められることがよくあります。このような図形であれば、ある程度の技量があれば、ディレクターやエディターがパソコンのソフトウェアを使って自ら描くことも可能ですし、実際に私自身もそのような図は自分で描いています。



静止画を動かす方法


静止画のイラストを動画として表現する方法は、現代では非常に多岐にわたります。昔のように少しずつ絵を動かしてコマ撮りする方法は、イラストの点数が膨大になり、それに伴う編集工数も非常に多くなるため、よほどの潤沢な予算がない限り、BtoBの仕事で採用されることは稀です。多くの場合、コンピューター上で描かれたイラストを、コンピューターのソフトウェア内で動かし、動画として出力(動画化)します。これを可能にするソフトウェアは多種多様に存在し、それぞれにできることや、制作にかかる手間が大きく異なります。そして、アニメーションとしてのクオリティが高くなるほど、やはりそれに伴う費用も高額になる傾向があります。

平面に描かれたイラストは、当然ながら二次元の絵であるため、こうした手法で作られたアニメーションは「二次元(2D)アニメーション」と呼ばれます。近年よく耳にする「インフォグラフィックス」と呼ばれる表現も、この二次元アニメーションの範疇に含まれると言えるでしょう。



CGとアニメーションの進化:3D表現の広がり


CG(Computer Graphics)という言葉を聞くと、なんとなく「3D」で、金属的で硬質なイメージを抱く方も少なくないでしょう。CGという言葉の使われ方や解釈は人によって様々ですが、前述の「(二次元)イラスト」も、現代においてはコンピュータで描かれているわけですから、二次元であろうと三次元であろうと、「Computer Graphics」であることに変わりはありません。しかし、一般的に制作会社の人間が「CGで作画します」と発言した場合、それはコンピュータソフトウェアの中でも「(三次元)CGツール」を使って作画を行い、それを動かすことを指していると考えるのが妥当でしょう。


社内にCG部門を保有している映像制作会社も存在しますが、多くの制作会社では、このCG制作の部分も外部の専門業者やフリーランスのクリエイターに委託することがほとんどです。CG映像の品質は、まさにそのクリエイターの技術とセンスに大きく左右されます。そのため、高度な技術と優れたセンスで魅力的なCGの世界観を創り出すCGクリエイターは非常に引く手あまたであり、その報酬も高額になる傾向があります。しかし、実際の作業量は膨大であり、日当に換算すれば決して法外な金額というわけではありません。


一方で、安価でどんな仕事でも気軽に引き受けてくれるクリエイターもいますが、そうしたクリエイターの場合、作画のセンスがいまいちで、いざ動かしてみるとさらに洗練されていない印象を与えることも少なくないため、依頼する際には注意が必要です。


映像制作における「線画」、そして「作画」は、時代とともにその技術や表現方法を大きく変化させてきました。これからも新たな技術の登場とともに、その進化は続いていくことでしょう。

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