top of page

名古屋の映像制作会社が知っておくべき医療関係の広告規制

更新日:3 日前

現在の日本における病院・医療・薬事に関する広告宣伝は、国民の生命や健康に関わる重要な情報であるため、医療法および医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)に基づき、厳しく規制されています。

弊社は名古屋の医療機関や世界的な薬品メーカーの映像制作をお手伝いしていますが、実際に関連する法律や規制だけでなく、クライアント内部での厳しいコンプライアンス規定をクリアするために、何度もチェックを受けながら制作しています。


弊社・名古屋映像制作研究室の調査によれば、現在、主に以下の点が規制されており、その状況は「医療広告ガイドライン」や「医薬品等適正広告基準」などで詳細に定められ、随時改訂されています。

※上記リンクが切れていたら、自身で検索してください。

女性医師


病院・医療に関する広告宣伝の規制(主に医療法に基づく)


医療に関する広告は、患者が適切な医療を選択できるよう、客観的で正確な情報提供に努めることが求められています。



1. 規制の対象となる広告の定義

以下の2つの要件を満たすものが広告と見なされます。


誘引性

患者の受診等を誘引する意図があること。


特定性

医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること。 ウェブサイトも医療法の広告規制の対象となっています。




2. 禁止されている広告事項


以下の内容は原則として禁止されています。


虚偽広告

事実と異なる内容や、あたかも効果があるかのように加工・修正した術前術後の写真など。例えば、「絶対安全な手術」など、医学的にあり得ない表現。


比較優良広告

他の病院や医療機関と比較して「日本一」「最高の治療」など、優良である旨を強調する表現。たとえ事実であっても、他院を批判したり優劣を明示する内容は認められません。


誇大広告

事実を不当に誇張したり、人を誤認させるおそれのある表現。例えば、「必ず治る」「画期的な治療法」といった断定的な表現や、科学的根拠が乏しい情報で受診を誘導するもの。


公序良俗に反する内容の広告

わいせつ、残虐な図画や映像、差別を助長する表現など、品位を損ねるもの。


患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告

患者の感想や口コミは、個人の主観であり客観性が担保されないため、原則禁止です。ただし、医療機関からの依頼に基づかないSNS投稿などは、医療機関の広告とはみなされない場合があります。


治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告(ビフォーアフター写真)

リスクや費用などの詳細情報を併記しない限り、原則禁止です。特に、リスクや副作用の情報を抜いたままの掲載はガイドライン違反となります。




3. 広告可能な事項(限定解除要件)


原則として広告が禁止されている事項であっても、以下の要件を全て満たす場合には、例外的に広告が認められる場合があります(限定解除要件)。


  • 治療等の内容、費用、主なリスク・副作用などを詳しく記載すること。

  • 自由診療については、未承認医薬品等である旨や、入手経路、国内の承認医薬品等の有無などを明記すること。

  • 医療機関のウェブサイトなど、患者が自ら求める情報を表示する媒体であること。

  • 問い合わせ先を明記すること。




4. その他の注意点


著名人の来院を強調する表現

誤解を招く可能性があるため、避けましょう。


スタッフの主観的な意見

広告として掲載することはできません。


提供する医療と直接関係ない誘引事項

「当院で自費のメニューをおこなった方には、次回の割引券を贈呈します」など、医療行為と直接関係のない事項の記載は禁止されています。


専門医資格の表記

「〇〇学会認定 〇〇専門医」のように、正式名称かつ団体名を明記する必要があります。「〇〇学会認定 専門医」のような省略はNGです。


専門外来の表記

クリニック名の上部に「〇〇専門外来」と表記することはNGですが、診療内容に「新型コロナウイルス感染症 後遺症外来」などと記載することは規制の対象外です。


キャンペーンや割引の強調

患者を不当に誘引し品位を損ねる可能性があるため、「期間限定」などの特別感を強調する表現や、目を引くような見せ方は禁止されています。




薬事に関する広告宣伝の規制(主に薬機法に基づく)


医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品(これらを「医薬品等」と総称します)の広告は、その品質、有効性、安全性に関わるため、厳しく規制されています。


1. 規制の対象者


医薬品等に関する広告を行う「何人も」(つまり全ての人)が薬機法の規制対象となります。これには、メーカー、販売業者だけでなく、広告代理店、ライター、アフィリエイター、インフルエンサーなども含まれます。



2. 主な規制事項


虚偽・誇大広告の禁止(薬機法第66条)

医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関して、虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、または流布してはなりません。例えば、「このクリームで即効美白!」といった短期間で劇的な効果を謳う表現や、科学的根拠のない主張は禁止です。

医師等が保証したと誤解を与えるおそれのある記事の広告・記述・流布も禁止です。

堕胎を暗示したり、わいせつにわたる文書や図画の使用も禁止されています。


特定疾病用医薬品等の広告の制限(薬機法第67条)

がん、肉腫、白血病など、使用に高度な専門性が要求される特定疾病用の医薬品等については、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告が制限されています。


承認前の医薬品等の広告の禁止(薬機法第68条)

医薬品、医療機器、再生医療等製品として承認(または認証)を受けていない製品について、その名称、製造方法、効能、効果、または性能に関する広告は禁止されています。例えば、健康食品が医薬品のような効果効能を標榜することはできません。


医薬関係者等の推薦の禁止

医師、薬剤師、その他医薬関係者、またはこれらに類似する者が特定の医薬品等を推薦する表現は原則禁止です。


他社製品の誹謗広告の制限

特定の他社製品を誹謗中傷するような広告は禁止されています。


品位の保持

医療機器については、その特殊性に鑑み、品位のある広告が求められます。ふざけたもの、嫌悪感を与えるもの、性的表現などで医療機器の信用を損なうような広告は行ってはなりません。過度な値引き広告も不必要な購入を促す可能性があるため制限されます。



3. 違反時の罰則


薬機法に違反した場合、措置命令や課徴金納付命令の他、2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金、または併科といった罰則が科せられる可能性があります。




現況と最新の動向(2024年〜2025年時点)


医療広告ガイドラインの継続的な改訂

厚生労働省は、医療広告に関するガイドラインを継続的に改訂しており、2024年3月にも事例解説集が更新されています。特に、オンライン診療における表現や、患者・利用者のSNS投稿を引用した体験談・口コミの扱いなど、新たな注意喚起がなされています。


ウェブサイト規制の強化

2018年6月の医療法改正により、医療機関のウェブサイトも広告規制の対象となり、これに対する監視が強化されています。


SNS等への対応

近年、SNSやインフルエンサーによる情報発信が増加しており、これらも広告規制の対象となり得るため、適切な情報発信が求められています。患者のSNS投稿であっても、医療機関が有利なものを意図的に転載・利用するなど、医療機関の広告とみなされる場合は規制対象となります。


薬機法の厳格化

健康食品や化粧品など、医薬品ではない製品が医薬品と誤認されるような広告を出すことへの取り締まりが強化されています。未承認医薬品の広告や、虚偽・誇大広告に対する監視は依然として厳しく行われています。


医療機器の適正広告ガイド

医療機器についても、2024年2月に改訂された「医療機器適正広告ガイド」などにより、広告の品位保持や過量消費の助長防止などが求められています。

これらの規制は、患者や消費者が医療や医薬品等に関して正確な情報を得て、不当な誘引によって不利益を被ることを防ぐために設けられています。広告を出す側には、法令遵守と倫理的な情報提供が強く求められています。




映像化する上での注意点


映像コンテンツであっても、媒体や視聴環境、コンテンツの性質によっては、一般的な広告宣伝の規制の対象外となる事項や、規制の適用が緩和されるケースが存在します。ただし、その判断は非常にデリケートであり、安易に「対象外だから何でも言っていい」と考えるのは非常に危険です。

主なポイントは以下の通りです。



1. 「広告」の定義に当てはまらないもの


医療法や薬機法における「広告」は、主に以下の2つの要件を満たす場合に該当します。


誘引性

患者や消費者の受診・購買を誘引する意図があること。


特定性

医療機関の名称や、製品の名称が特定可能であること。

映像コンテンツであっても、この「広告」の定義に当てはまらないと判断される場合は、規制の対象外となることがあります。



具体的な例と注意点


学術的な内容の映像

対象外となる可能性

医療従事者向けの学会発表、研究発表、専門家向けの研修ビデオなど、学術的な情報提供が主目的で、特定の医療機関や製品の営利目的の誘引性がないと判断される場合。


注意点

しかし、これらの映像が一般消費者にも容易にアクセスできる形で公開され、結果的に受診や購買を誘引する目的がある(または誘引効果が高い)と判断されれば、規制の対象となる可能性があります。特にウェブサイトやYouTubeなどで公開する際は注意が必要です。



報道・教育目的の映像

対象外となる可能性

新聞やテレビのニュース番組、ドキュメンタリー、公共機関が制作する啓発ビデオなど、報道や公共的な教育が主目的である場合。


注意点

ただし、医療機関や企業が費用を負担したり、不当な意図をもって制作を依頼したりした「記事風広告」「報道風広告」は、実質的に広告とみなされ、規制の対象となります。



医療機関内の掲示物や院内動画

対象外となる可能性

医療機関の待合室で流す、その医療機関の診療方針や設備を紹介する動画、院内でのみ配布するパンフレットの内容を映像化したものなど。これらは「院内掲示」や「院内で配布するパンフレット等」と同様に、不特定多数への誘引性が限定的であるため、規制の対象外とされています。


注意点

ただし、これらのコンテンツも、内容が虚偽・誇大であったり、公序良俗に反したりする場合は、別途、景品表示法や健康増進法などの規制を受ける可能性があります。また、これらの動画がインターネット上にアップロードされ、広く一般に視聴されるようになった場合は、広告規制の対象となる可能性が高まります。



患者による自発的なSNS投稿・動画コンテンツ

対象外となる可能性

患者が自らの意思で、自身の治療体験をSNSに投稿したり、YouTubeに動画をアップロードしたりする場合。これらは、医療機関や企業が関与していないため、広告には該当しません。


注意点

医療機関や企業が、患者に依頼して体験談を投稿させたり、金銭や物品を提供して投稿を促したりした場合は、そのコンテンツは実質的に医療機関や企業の広告とみなされ、規制の対象となります。また、医療機関が患者の投稿を自身のウェブサイトやSNSで引用・転載し、有利な体験談を強調するような編集を行った場合も、広告規制の対象となります。




  1. 媒体の特性による規制の適用緩和(実際には限定的)


かつては、規制の緩かったインターネット広告に対し、テレビCMや新聞広告は厳しく規制されていましたが、2018年の医療法改正以降、ウェブサイトを含むインターネット上の医療情報も「広告」として医療法の規制対象となりました。そのため、映像コンテンツの媒体の違いによる規制の対象外事項は、以前に比べて非常に少なくなっています。



「限定解除要件」の適用

医療法においては、ウェブサイトなど、患者が「自ら求める情報」を提供する媒体であれば、禁止事項(体験談、ビフォーアフター写真など)であっても、適切な情報(費用、リスク、副作用など)を併記することで広告が認められる「限定解除要件」があります。映像コンテンツも、この要件を満たせば、表現の幅が広がります。


注意点

視聴者が意図せず目に触れるようなプッシュ型広告(例:YouTubeのスキップ不可の広告)では、限定解除要件を満たしても、表示できない情報が多いため、適用は難しいと考えられます。



  1. 映像コンテンツで特に注意すべき表現



ビフォーアフター写真・動画

加工・修正は厳禁です。

限定解除要件を満たし、費用、リスク、副作用、治療内容、経過期間などをテロップナレーションで分かりやすく、十分な時間表示する必要があります。


体験談・インタビュー動画

原則禁止です。

医療機関のウェブサイトやSNSで、患者に依頼したインタビュー動画を掲載することは、医療広告ガイドライン違反となる可能性が極めて高いです。


医師・専門家による解説動画

科学的根拠に基づいた正確な情報提供が求められます。

特定の製品や治療法を過度に宣伝したり、不確かな効果を断定的に述べたりすることは、薬機法や医療法に違反します。

「専門医」などの資格表記は、正式名称で正確に行う必要があります。



まとめ


映像コンテンツは、基本的には医療法や薬機法などの広告規制が適用されます。媒体や視聴環境によって「広告」に該当しないケースもありますが、それは「誘引性」や「特定性」が極めて低い場合に限られます。

現在の日本の法規制は、「国民の生命・健康の保護」を最優先しており、情報の受け手が誤認したり、不当に誘引されたりすることのないよう、非常に厳しく運用されています。

広告宣伝を行う際は、形式的な解釈だけでなく、「そのコンテンツが、受け手にどのような印象を与え、どのような行動を促すか」という実質的な影響を考慮し、常に法令遵守を心がけることが不可欠です。不安な場合は、必ず専門家(弁護士、広告審査機関など)に相談するようにしてください。


これから病院、クリニック、薬剤など、医療関係の映像を企画制作する時は、必ず法律や規制に関する最新の情報をご自身で入手、検討してください。現在進行中の裁判等で新たな判例が出るかもしれません。このページに書かれている情報に沿って制作した映像で不利益があった場合にも、弊社は責任を持ちません。



【弊社制作事例】

Коментарі


bottom of page