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映像制作を発注する企業担当者のための言葉の解説です。
センターカット
横長のアスペクト比の映像(例:シネマスコープの2.39:1や一般的な16:9)を、アスペクト比が縦長のディスプレイ(例:4:3)で画面いっぱいに表示するために、映像の左右を固定的に切り取る処理を指します。
2.39:1(シネマスコープ)などの映画用アスペクト比から放送用の比率に変換する際によく使用されます。常に映像の中央部分だけを切り出します。
かつてワイドスクリーンの映画を4:3のテレビで放送する際によく用いられました。映像全体を画面に収める「レターボックス」とは異なり、画面の余白をなくすことを優先します。しかし、この方法では、映像の左右に配置された重要な情報や、監督が意図した構図が切り取られて失われてしまうという大きな欠点があります。
そのため、制作者の意図を尊重する現代の映像制作や配信では、極力避けられるべき手法とされています。撮影時からセンターカットセーフを考慮した構図取りが必要になることもあります。
センターカットは、サイドカット(Pan & Scan) の簡略的な運用形態のひとつで、切り出し位置を中央に固定したものです。

執筆者・神野富三
名古屋の映像制作会社 株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
シナリオ・演出・編集まで一貫して手がける映像プロデューサー・ディレクターとして、JR東海・トヨタ自動車など200社以上の映像制作に携わる。
映像制作会社としての視点
縦長動画の普及がもたらした、カットされた映像の“違和感耐性”の変化
縦長動画が日常的な視聴フォーマットになったことで、視聴者は「画面の一部しか使われていない映像」や「フレームから意図的に情報が落とされている映像」に慣れてきました。
TikTok や Instagram の縦長動画では、もともと横長で撮られた素材を縦に切り出す編集が珍しくありません。そのため、
・画面の左右が大胆に捨てられている
・人物がフレームの中央だけに収まっている
といった画づくりに対する心理的抵抗は、確実に下がっています。これは、視聴者の「画面は全面に情報があるべきだ」という前提が崩れ、「必要な情報だけ見えればよい」という受容の仕方に寄ってきた、という構造変化です。
ただし「違和感がない」と「問題がない」は別
違和感を覚えにくくなったことと、構図が破壊されてもよい、という話はまったく別です。縦長動画向けの切り出しは、最初から
・スマホ視聴
・縦フレーム
・中心情報設計
を前提に再構成されたものです。一方、センターカットは、横長フレーム前提で設計された構図を、後処理で機械的に切り落とす変換です。視聴者側の耐性が上がった結果、「なんとなく見られてしまう」状況が増えた、というのが実態に近く、構図破壊の問題そのものが解消されたわけではありません。
制作者側に起きている変化
縦長動画の一般化によって、制作側も「どうせ縦に切られる」「中心に寄せておけば安全」
という前提で画面設計をする場面が増えています。これは
・センターカットセーフな構図
・中央集中型のフレーミング
を常態化させる方向に働きます。
結果として、
横長フレームならではの
・左右に意味を持たせる構図
・空間の広がりを使った演出
が、設計段階から減っていく、という副作用が生じるかもしれません。
