マルチデバイス
視聴する機器が変われば、画面サイズ、縦横比、通信速度、再生できるファイル形式なども異なるため、ひとつの動画データだけでは最適に再生できないことがあります。「マルチデバイス」とは、スマートフォン・タブレット・PC・テレビなど、複数の異なるデジタル機器で同一のサービスやコンテンツを途切れなく利用できるように設計された環境や仕組みのことです。
なぜ必要になるのか
視聴環境の多様化により、動画制作はスマホ視聴から4Kスクリーン上映まで、幅広い利用環境に応じたデータ制作が求められるようになりました。
その際に「スマホでは重くて再生できない」「会場スクリーンでは画質が粗い」「社内PCで再生できない」などの問題を防ぐため、最適化された複数の映像データを用意する必要があります。
つまり、マルチデバイス対応とは「動画を制作する」だけでなく、「どの環境でも正しく届ける」ための設計思想とも言えます。
どのように対応するのか
映像制作会社では一般的に、視聴されるデバイスや配信方法に応じて、以下のような最適化を行います。
ファイル形式の最適化(例:MP4〈H.264/H.265〉、WebMなど)
解像度のバリエーション制作(4K版/フルHD版/スマホ向け軽量版)
ビットレート調整(展示会向け高画質/Webサイト用標準/SNS向け軽量データなど)
縦型・正方形バージョンの制作(SNS・スマホ向け)
主要デバイスでの再生検証(PC/スマホ/タブレット/社内端末)
ストリーミング配信方式への変換(HLS、MPEG-DASHなど ※必要に応じて)
これにより、デバイスごとの視聴環境の差による品質のばらつきを防ぎ、ブランドイメージやメッセージを損なわずに伝えることが可能になります。
執筆者・神野富三
株式会社SynApps 代表取締役プロデューサー
大学時代のラジオ番組の構成演出に始まり、映像ディレクター・プロデューサーとして、40年以上の業界経験を基に映像業界に関する知見を発信しています。
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関連用語など
1. レスポンシブ
視聴デバイスの画面サイズや解像度に応じて、映像の表示形式を自動的に最適化する仕組みです。スマートフォン、タブレット、PCなど、様々な画面サイズに対応した映像フォーマットを用意し、視聴環境に合わせて適切な形式を配信します。特にWeb配信では重要な概念となり、タイトルやテロップの可読性を確保しながら、それぞれのデバイスで最適な視聴体験を提供することが求められます。
2. スマートビュー
縦横比の異なる画面に対して、重要な映像要素が常に表示されるよう自動調整する技術です。16:9で制作された映像を縦長のスマートフォン画面で視聴する場合など、映像の中心部分を優先的に表示しつつ、デバイスの特性に合わせて表示エリアを最適化します。撮影時から編集時まで、各デバイスでの見え方を考慮した制作が必要となります。
3. アダプティブ
視聴デバイスの性能やネットワーク環境に応じて、配信品質を自動的に調整するシステムです。解像度、ビットレート、フレームレートなど、複数の品質パラメータを用意し、視聴環境に応じて最適な組み合わせを選択します。途切れのない安定した視聴体験を提供するため、動画配信プラットフォームで標準的に採用されています。
4. マルチオーディオ
異なる音声環境に対応するための音声処理技術です。ステレオ、5.1ch、モノラルなど、デバイスの音声出力能力に応じた最適な音声フォーマットを提供します。また、モバイル視聴向けのヘッドホン最適化や、スピーカー視聴向けの音圧調整など、視聴環境に応じた音声処理も含まれます。
5. キャッシュ制御
各デバイスでの視聴データを一時保存し、効率的な再生を実現する技術です。デバイスの記憶容量やネットワーク環境に応じて、適切なキャッシュサイズや保存期間を設定します。特にモバイル環境での視聴では、データ通信量の削減と安定した再生のバランスを取るために重要な要素となっています。

